第240話 呪縛の波動
キリのいいところまで!
と思ってたら遅くなりました。
そして思ったよりも進まない不思議!
「はああぁぁーー!」
鉄と鉄が激しくぶつかるような鈍い音が響き、牽制の一撃は悪魔のガントレットにより防がれる。
でも、私は構わず次々と技を繰り出していく。
私は魔物との戦い方だけではなく、対人戦の訓練も積んでいる。むしろ対人戦の方が得意なくらい。
戦うこと自体は今でもそんなに好きじゃないけど、お母さんからの運動と称したハードな訓練や、王子様たちからの勝負に付き合った結果だ。
っ!
私が悪魔から距離を取るのと同時に石の槍が着弾する。
「見事な腕前に連携である。実に壊しがいがあるのである」
邪悪な顔つきにゾッとする。
「フラン、耐えられまして?」
「なんとか。まだまだいけるよ!」
私は再接近して攻撃を繰り返していると、アイリが突然変なことを言い出した。
「うーん……なんかアイツ、キレイ過ぎない?」
「照れるのである」
「え!? アイリ悪趣味過ぎでしょ!?」
アイリの謎の性癖(?)が!
「違わい! そしてそこの悪魔! オマエは反応すんなし!!」
悪魔の攻撃をいなしてる間もアイリの言葉が聞こえてくる。
「いや、石の槍が直撃したのに無傷過ぎるって言ってるのよ。フラン、攻撃は当てられてる?」
「何度かは確実に当ててるよ! それどころか急所を斬った手応えすらあるんだけ、ど!」
牽制で作った決定的な隙を突いて攻撃してる。
今も風の爪を発動し、首を斬ったと思ったのにダメージが入ってる様子がない。
意味がわかんない。
「良く分からぬ攻撃をしてくるようであるが、この程度の攻撃では無力である」
「……フラン後退! 魔術師隊! 攻撃を!」
蹴りを入れて飛び退くと同時に矢や槍系の魔術が降り注ぐ。
「無駄無駄無駄無駄ぁ!」
「フラン、魔力感知に集中ですわ」
「了解!」
エリーからの指示で私もピンときた。
集中しないと分からないくらいに魔法で何かをしてるんだろう。
「そう、全集中よ! 隙を見つけ出して『猫の呼吸 壱の型 風爪一閃』を使うのよ!」
「アイリうっさい!」
「さーせん」
分かりそうで良く分からないから!
紛らわしいから変な指示出さないで!
呼吸を整え、集中する。
……
魔術が次々と降り注ぐ衝撃により砂埃が舞い、悪魔を中心に視界は悪い。
…………
一応防御はしているようだけど、独特な魔力反応をしてるのでサーモグラフィのように姿形は、悪魔の場所はよく分かる。
………………
分かった!
でも、なにこれ!
「ダメージを与えた瞬間に再生してる。それに、瘴気をもとにした魔力を使ってる? エリー、多分魔法だと思うよ。瘴気で魔力を練ってるっぽい!」
「なるほど。瘴気や悪魔の魔力は減っていまして?」
体内の保有魔素量は分からないけど、ほとんど瘴気や魔力の塊みたいなやつだからこれも分かる!
「……減ってる! ほんの少しずつだけど、確かにダメージと共に両方減ってる!」
「不死身の正体を見破ったり、ですわ。さあ、勝ち筋が見えましたわ! 増援が来るまで防御を優先しつつ削るのですわ!」
「「「「「了解!」」」」」
さすがエリー!
カッコいい!
みんな魔物の大群暴走で消耗してるから永遠と魔術を放つことはできない。
だから私が魔術の合間を縫ってヒットアンドアウェイで釘付けにし、絶え間なく攻める。
「笑止!」
!?
防御を捨てた?
いや、これは……ヤバい!
「破ァッ!」
悪魔の衝撃波によって魔術が吹き飛ばされる。
間一髪、私達はアイリの石の壁で防ぐ。
とっさに背後の様子を見れば、先に張っていた防御の魔術や騎士様たちの盾で防いだ。
これくらいなら大丈夫とは分かってても心配なものは心配。
なんともなくて良かった。
「ふうむ、無駄な抵抗をいつまで続けるのであるか」
「無駄ではございませんわ。少しづつですが、あなたを追い詰めておりますとも」
「確かに我輩の魔力や辺りの瘴気は減っているのであるが……それでもやはり無駄である」
「強がりですわ」
「強がりなどではないのである。この膨大な瘴気が尽きるまで戦い続けることなど、人間には不可能である」
「…………」
「欲望、怨嗟、理不尽、悪意……人間が存在し続ける限り、これら瘴気の基は尽きず常に補充されるのである」
そ、そんな。
それじゃ実質不死身と同じだよ!
そんな不安と焦りはエリーの声によってかき消された。
「おーっほっほっほっ!」
ビシッと手を添え、背筋を伸ばして高笑いをするエリー。
「焦っておりますわね。無敵の存在などありえないのですわ。それは悪魔とて例外ではない。ほら、与えたダメージが大きければ大きいほど、あなたを構成する魔力は揺らいでおりますし、さっきまで目に見えるほど濃かった瘴気がかなり薄らいでおりますもの」
「……看破したとは大したものである。しかし、それもここまで。遊びは終わりである」
「あら、今までのことはお遊びでしたのね。お優しいですこと。まあそのおかげでこの勝負、私たちの勝ちですもの。チェックメイト、ですわ」
「クックックッ……! 無ぅ理ぃ! 無駄ぁ! 無謀ぉう! それは我輩のセリフである!」
「っ! アイリ! フラン! 防御の魔法ですわ!」
「遅い! 呪縛の波動!!」
直感が危険を知らせてくれる。
だけど、ヤバい、間に合わない!
悪魔から凄まじい速度で放たれた何かが通過していく。
……
あれ?
ダメージは、無い?
「エリー、アイリ、だいじょ…………」
突然視界が傾き、どしゃりと自分が地面に倒れる音がした。
え、なに、これ?
全身の力が抜けたような……いや、麻痺したような感じでまともに動けない?
視界の隅に見えるアイリやエリーも倒れ伏している。
「ふむ、やはり我輩以外が地を這いずるこの光景は、心地良いのである。そして、啖呵を切った者には、相応の礼をせねばならないのである」
悪魔の声にハッとする。
今、この状況は、まずい!
「まずは……そやつにするのである。我輩が綺麗だと褒めた褒美を贈らねばならんのであるからなあ」
「それは……遠慮したい、わね……」
悪魔はニタニタとしながらエリーに話しかけ、アイリの前に立ちはだかる。
「姫よ、そこで守るべきものたちの死にゆく様を眺めているがいい!」
ダメ!
このままじゃアイリが!
体が動かないなんて言ってられない!
何でもいい!
力を振り絞るんだ!
「では、さらばだ、レディ!」
「むあぁぁーー!」
魔法を使って自分を体ごと吹き飛ばし、拳を振り下ろそうとする悪魔に体当たりした。
不意を打てたからか悪魔は吹き飛び、私もまたアイリの前に倒れ込む。
「くっ、邪魔をしおって……!」
体はまともに動かない。
だったら多少は回復したものの、残り少ない魔力を振り絞ってでも、魔法で無理やり体を動かせばいい。
私は自身を人形のごとく操り、ガクガクヨロヨロしながらも無理矢理起き上がる。
「いったいどうやって動いているのか。……まあ良いのである。その様子ではまともに動けまい。それほど順番を待てないのであれば……猫よ、まずは貴様から先に送ってやるのである」
「フラン……アタシはいい……から……逃げな……さい……!」
「イヤ……だっ!」
無様でも何でもいいから足掻いて足掻いて、足掻きまくってやる!
「死ねえぇぇーーーいっ!!」
振り抜かれた拳が目前に迫る。
大丈夫、全ての力を防御に回せば簡単には死なない!
「……死ぬのは、貴方……太陽の熱線……!!」




