第184話 ストライキなフランと台本
私は抗議した。
必ず、かの邪智暴虐の台本を除かなければならぬと決意した。
私には魔法少女の良さはあんまり分からぬ。
私は、王都の平民である。
冒険をしたり、友達と遊んで暮して来た。
けれども中二病に対しては、人一倍に敏感であった。
台本があまりの内容だったので、走る人が出てくる小説の出だしを考えてしまった。
だって、わざわざセリフをトゲトゲな吹き出しにしてまで書いてあるんだよ?
いやまあ前世の私も小さい頃はああいうのは好きだったけどさ、でもそれをリアルでやるのは、ましてやミュージカルでやるのは絶対無理!
普通に前の台本のセリフで良いじゃん!
そんなわけで私はホールの壁柱の上に登り、台本の撤回を求めて抗議してる。
「おい銀の、いい加減降りてこい。お前がいないとリハーサルができんではないか」
「つーん」
撤回してくれるまで動かないんだからね。
「くっ、長年かけて計画してきたネコミミ魔法少女計画が……。まだだ、まだ終わらんのよっ」
「柱の上で丸まりながらツンとした態度も可愛らしいですわ」
「ですよね。猫みたいに丸まってそっぽを向くフラン、可愛いですよね」
エリーにシア、そんなこと言ってもダメだからね。
あとアイリ、早く諦めて。
「フランさん、こういうときはダンスでストレス発散しませんか?」
「つーん、台本戻してくれなきゃ嫌だもんっ」
誤魔化されないんだからね、キャロちゃん。
「フランよ、その様なところに登っては下着が見えてしまう。降りてくるのじゃ」
「え? って、今はスカートじゃなくてステージ衣装だから大丈夫だもんっ」
「まあフランがいいならそれでいいがの」
すっぽんぽんでも動じないリンが言っても説得力ないもん。
……でも、とりあえず服のしっぽの切れ込みとかショートパンツの隙間とか見えないようにしとこう。
「なんかどこかで見たことあるような気がするセリフだけど、せっかく主役の一人なんだから文句言わずにやればいいのに」
「別にセリフがかっこよくなって服が変わるだけだろ? 何をそんなに嫌がってるんだよ」
「恥ずかしいセリフ禁止だもんっ」
ユリアーノ様の言う通りだけどさ。
あとウルフェン様は絶対分かってない。
いくら見た目が年相応でも中身が大人だから魔法少女は恥ずかしいし!
「仕方ない。セリフの件は戻そう。すまんな、チェルシー。せっかく素晴らしい台本を作ってくれたのに」
「いえいえ、元々あの部分はだいぶアレンジしたものですから構いませんよ。ただ、エリザベス様とアイリーン様が考えてくださったセリフをフランちゃんが言ってくれたら最高に萌えるのに、それが見られないのが残念ですけどね」
ふぅ、ようやく王子様が折れてくれた。
これでひと安心だよ。
エリーとアイリはせっかく考えてくれたのは嬉しいけど、ダメなものはダメ。
あとごめんね、台本制作者兼監督のエルフっ子ちゃん。
こればかりはダメなの。諦めてね。
「銀の、そういうわけだ。台本は元に戻すから早く降りてこい」
「ホント? 約束だよ?」
「ああ。だから降りてこい」
「むぁー、仕方ないなぁ。約束だもんね。降りるよ」
ストライキは無事成功した。
私は3、4メートルほどありそうな高さのある柱の上からぴょんと飛び降り、しなやかに着地する。
前世だったら怪我で済めばいい高さだけど、今の私ならこれくらいは大したことない。猫獣人すごい。
そしてリハーサルは進む。
「さて、少々トラブルはあったが何とかここまで順調にきた。銀の、次はお前の見せ場のところだが、問題ないな?」
「うん、あの恥ずかしいセリフじゃなければ大丈夫だよ!」
「お、そりゃ頼もしいな。楽しみにしてるぜ」
「フラン、素敵な姿を見せてるのですわ」
「任せて!」
「まあいつも通りやれば良い」
剣士な王子様、聖騎士なウルフェン様、巫女なエリーがピンチの所に颯爽と駆けつけ助け出すシチュエーション。
燃えるしね!
あ、ちなみに闇の魔術士はリンだったりする。
貴族が悪役をやるとイメージが悪くなるのでやりたがる人がいなかったため、リンが買って出た。
なんでも「こういう役割は何度か見ておるしのう。どれ、妾が手本を見せてやろう」とか何とかで決まった。
そんなわけで、いよいよ私の見せ場だ。
少し短いですがキリがよかったので切りました。




