第162話 ユリアーノには秘密がある
私の名前はユリアーノ・ウィート。ウィート子爵家令嬢よ。
私は栄えある王都の貴族学校で成績上位者のクラスにいるわ。
このクラスに入るには高等な教育を受けた者がほとんど。高等な教育を受けるには人脈とお金が必須。
普通は子爵の令嬢に受けさせられるものではない。
上位クラスには高位貴族がほとんどよ。
子爵の令嬢である私がこのクラスに入れたことは、いい意味で相当に目立つでしょう。
これで夢のイケメン玉の輿計画に近づける!
そんな私はルンルン気分で入学式に向かうと、銀髪のネコミミ少女を見かけた。
どこかで見たことあるわね。
でも、出会った記憶なんて無いんだけど……。
そう思って記憶を引っ張り出したことで気がついた。
あの子、もしかして乙女物語の悪役令嬢の取り巻き?
そう、私には前世の記憶というものがあるの。
幼少の頃、自分には前世の記憶があるって気づいたのよ。
いわゆる転生者ってやつね。
前世の記憶はおぼろげだけど、ちゃんとある。多分、私は学生だったと思う。
ちなみに前世の記憶があるなんて言おうものなら頭のおかしい子扱いで修道院送りになりかねないと思ったので、誰にも明かしてないし明かすつもりもない。
意識がはっきりしてない小さい頃の私、よく黙ってたわ。グッジョブよ。
そんなわけで私は前世の記憶と経験のおかげでとても優秀と言われていたわ。いくら前世は勉強が苦手といっても小学生程度なら余裕だもの。
だから貴族学校の上位クラスに入れると分かったときは当然と思いつつも、とても嬉しかったわ。
夢のイケメン玉の輿計画の始まりよ!
そんな中、あのネコミミ少女が目の前に現れた時、嬉しさを吹き飛ばす存在であると理解した。
なぜなら彼女の存在は、この世界が前世ではまりにはまった乙女ゲー【乙女物語 ~アナスタシアと王子様~】の世界だということを示すから。
と同時に、また理解したことがある。
私は乙女ゲーの中では名前すら出てこないモブであることに。
ちょっと待って!
こういうのって普通ヒロインに転生するんじゃないの!?
それどころか悪役にすらなってないわよ?
なんで名前も出てこないモブなのよ。いやまあ確かに可もなく不可もない容姿だし、印象薄いのは小さい頃から思ってたけどさ!?
一瞬混乱しかかったけど、悪役令嬢の取り巻きであるネコミミ少女、フランシェスカが視界からいなくなって我に返った。
うん。
ヒロインにはなれなかったけど悪役じゃなくて良かったわ。
だって悪役の彼女たちは破滅フラグ満載だし。
って、ちょっと待って。
落ち着いて考えたら、もしかしなくても大好きな乙女ゲーの舞台と言うことは彼らがいる?
俺様王子なハロルド様、クールな貴公子のマイケル様、頼れるお兄ちゃんのマッシュ様のイケメン三人がいる!?
っしゃあああぁぁーーー!!!
来たわ!
来たわ!!
来たわ!!!
……
ふぅ、ほとばしる想いが口からでなくて良かった。子爵とは言え貴族の教育を受けていてホントに良かったわね。ギリギリセーフ。
入学式前から変な令嬢認定されたらイケメン玉の輿計画は終わりだもの。
それにしても、正直に言うと何がなんでもお近づきになりたい!
そして大好きな彼らと結婚したい!
でも私はモブ。
いくら彼らの攻略方法が分かったとしても、そもそも子爵令嬢である私とは家格が釣り合わない。
マッシュ様は伯爵家の次男だから家督的には何とかなりそうな気もするけど、彼は殿下の側近なわけなので同等以上の爵位のある令嬢じゃないと非常に厳しい。
更に言うなら悔しいけどヒロインにはいろんな意味で絶対勝てない。あの子、めっちゃ可愛いし潜在能力ヤバいし。
そんなわけで、入学式は上の空。
寮の自室に帰ってから一晩いろいろ考えた結果、
望み薄ならせめてリアルになった彼らを間近から観察しよう……。
そう結論付けた。
翌日、朝から観察してると悪役令嬢たちが王子たちと親しげに挨拶をしてた。
あのネコミミ娘のフランシェスカは可愛らしい外見を使って近づき、小悪魔的な所業をするキャラ。
その被害対象はもちろんヒロインであり、これが小悪魔的と言ってもやることが中々にエグイ。もちろん猫を被るので周りにはばれない。
ピンク頭の幼女アイリーンも侮れない。
ヒロインがなにか言う前に、先んじてあること無いこと吹聴して何も言えない状況を作り出す。しかも周りを囃し立ててヒロインが孤立していくよう仕向ける。
最後に悪役令嬢ことエリザベスは取り巻き二人を使い、ヒロインを追い詰める主犯。
金髪ドリルを左右にみょんみょんぶら下げてるし、心なしかいかにも悪役って感じの雰囲気がするし。あの髪の毛がどうなってるのかすごく気になるけど。
こんな分かりやすい悪役な訳だから、私の大好きな王子たちと接点があることに正直気に入らないわ。
思わず舌打ちするくらいに。
エリザベスは私よりずっと爵位が上の令嬢だから、目をつけられたら非常に危険。
たまったものじゃないわ。
彼女たちがどうなろうが知ったことじゃないけど、せめて巻き込まれないようにしなきゃ。




