第150話 世の中は案外狭い
その後、みんな一緒のクラスになっただとか話してると担任と思われる大人の男性が来た。
クラスのみんなはすぐに席につくと、間もなく2の鐘が鳴り響いた。
良かった。
すぐに先生がきて。
話すネタが無くなり始めると、いつもの流れで王子様が勝負の話をしだすんだよね。
さすがに朝から王子様から勝負を挑まれたくないので助かった。
なんだか誰かに舌打ちされたみたいだし、変に注目浴びたくないし。
「おはよう。みんな、よくこの学校に来てくれたね。早速だけど自己紹介をしよう。僕はヒューゴ・サンダース。このクラスの担任だ。細かいことは昨日校長が長話して聞き飽きているだろう? そんなわけでそこらへんは省略だ」
おお、先生は若そうなだけあって分かってらっしゃる。
それにしても一応貴族学校なのにこの軽さは大丈夫なのかな?
あと、先生の名前ってどこかで聞いたことあるような?
んー……まあいいや。
「それじゃあ早速だけど、この1年付き合っていく仲間たちに自己紹介をしてもらおうか。では男子の最優秀成績者であるマイケル君から行ってみようか」
突然振られたにもかかわらず、マイケル様は落ち着いて椅子から腰を上げると一礼してから自己紹介を始めた。
「僕はマイケル・フォード。フォード公爵家の次男です。公爵家と言っても学校では身分は同じ学生だから気軽に接してくれると嬉しいよ。好きなことは魔術の研究だよ」
マイケル様は相変わらずクールな感じなのに人当たりがよさそうな自己紹介だ。
今年で12歳になるはずだけど、幼さを残しつつも青年になってきており謎の色気を振りまいている。
マイケル様の自己紹介が拍手と共に終わると、次は王子様の番だ。
「俺様はハロルド・フォン・サンライト。この国の第三王子だ。俺様は強い者が好きだ。単純に腕力が強い者も好きだし、マイケルのように知識という面での強さも好きだ。例え他の者より自分が劣っていたとしても、自分が得意なことはこれだと自信を持って言えるような心の強い者も好きだ。家族のことが好きだと言えるような愛情の強い者も好きだ。そうした一人一人の強さがこの国にとって大事なことだと思う。俺様は学校でそうした様々な強さを学び知っていきたいと思う。以上だ」
王子様、自己紹介のはずが普通に演説っぽくなってる。
相変わらず俺様してるけど、出会った頃にあった傲慢さや見下すような感じは一切ない。
男の子の成長ってすごいなあ。
みんな盛大な拍手を送ってる。
続いてマッシュ様の番だ。
「俺はマッシュ・シャーウッド。シャーウッド伯爵家の次男だぜ! 俺は体を動かすことが好きだ! 中でも剣術が最高だな! 俺と一緒に最強を目指そうぜ!」
やんちゃ少年が屈託なく元気に笑ってるところがいいとか、やっぱりマッシュ様は脳筋っぽいとか思ったけど、そんなことよりもシャーウッドってまさか!?
「義兄さん! あ、学校ではヒューゴ先生だったな。うちの姉上がお世話になってます!」
「いやいや、気にしないでくれ。僕の方こそサンドラにお世話になってるよ」
うそーー!!
ちょっ、なにそれ!!
マッシュ様ってサラさんの弟だったの!?
良く考えたらマッシュ様のファミリーネーム知らなかったけど!
冒険者ギルドでマッシュ様がサラさんのことを「ねーちゃん」って言ってたり、お互い馴れ馴れしいとは思ってたけど、それはマッシュ様とサラさんのキャラだと思ってた。
マッシュ様は他の受付のお姉さんにも同じ感じでねーちゃんって言ってたから全然気づかなかったよ。
それに一昨年ついに電撃結婚したと思ったらすぐに寿退社したサラさんの旦那さんが担任の先生なの!?
うわ、なんか先生が一気に身近な人だよ。っていうか、世の中案外狭い。
サラさんには小さい頃から超お世話になったし、後で個人的にも挨拶しとかなきゃ!
そんなこんなで私は衝撃を受けてる間にあっという間にクラス全員の自己紹介が終わってしまった。
私の自己紹介は「平民だけど仲良くしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」的なことを確か言ったような気がしたけど良く覚えてない。
それくらい衝撃だったんだよ?
クラスメイトの顔と名前が全然一致しない。ヤバい。
むぁー、それにしてもマッシュ様との距離感どうしよ。
急に態度変えたらおかしいし。
と、とりあえずいつも通りでいいよね。マッシュ様は細かいこと気にしない性格だし。うん、そうしよう。
「フラン、ぼーっとしてどうしましたの? そろそろヒューゴ先生が戻ってきますわよ」
エリーの声にはっと我にかえった。
「え? あれ? 何で先生がいないんだっけ?」
「適性属性を調べる魔道具を取りに行っているのですわ」
「アンタにしては珍しく上の空だったわね。あ、さては先生のことが気になってたとか? いくら爽やかイケメンでも既婚者てサラさんの旦那様だからダメよ?」
「え!? フラン、人の旦那様に惚れちゃいかんよ!?」
アイリがからかい、シアが驚く。
「むぁー、惚れるとかないから。あり得ないから。世の中は案外狭いなあって思ってたとこだよ」
不倫、ダメ、絶対だよ。




