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ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい  作者: 星川 咲季
■第1章 異世界の日常編(3歳)
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第13話 お母さんの職場は冒険者ギルド

ようやく冒険者ギルドに到着です。

 お母さんはようやく落ち着いた私を抱き上げる。


 「フラン、もう大丈夫?」


 「すんすん……うん」


 少し鼻をすすりながら返事をする。


 「フランは本当に良い子ね。私には勿体ないくらい。夕方家に帰ったらお父さんにも言ってあげてね。とっても喜ぶと思うわ」


 「うん、言う。絶対に言うね」


 「じゃあ、そろそろ行くわね。ちゃんと掴まってるのよ」


 そう言うと、冒険者ギルドへ再び歩き出した。




 抱きかかえられながら先ほどのことを思い返す。

 なんか思わず感情が爆発してしまった。

 まさか感謝の言葉を伝えることで泣くとは思わなかった。


 今の私はとても晴れやかな気分だ。朝日の輝きが祝福してくれているように感じる。いつも楽しく眺めていた街並みが今まで以上に楽しく感じる。

 神様がいるとしたら……いや、私がこうして第二の人生を体験している以上、きっといる。

 よく読んでたWeb小説のように転生の際に神様と出会うことはなかったけれど、私は感謝してもしきれない。

 ありがとう。


 さて、感謝はすれども、やはり私の目標は変わらず楽しく気ままに生き、世界旅行をすることだ。

 第二の人生は始まったばかりで、これから先に何があるか分からないけれど、この目標は私のアイデンティティ。

 今のところ変えるつもりは微塵もない。


 今はこの日常を送るだけでも心満たされる毎日だけど、一生このままということもないだろう。

 楽しく気ままに生きるということは、まだ見ぬ感動とほんの少しの刺激が必要なのだ。


 しかし、今の私は3歳児。

 できることはあんまりない。


 第一は健やかに育つこと。

 これは皆まで言うこともないだろう。

 両親のためでもあり、もちろん私自身のためでもある。


 第二は魔物が跋扈するこの世界を楽しく気ままに生きるには、どんな力が必要なのかを知ること。

 それが分かれば、普通に生活するだけでなく、将来、世界旅行をする時にも役立つはずだ。

 例え、旅行中に魔物に襲われても、幸い私は獣人なので何とか逃げるだけはできるだろう。


 え?

 せっかくだから獣人としての高い身体能力を生かし、魔物討伐はしないのかって?


 何言ってるの。そんなの怖くて無理無理。

 前世は平和国家の日本で生きてきた私が、多少強くなった程度で命のやり取りをするような行為ができるわけないじゃん。

 きっと恐怖で足がすくんで動けなくならないようにするのが精一杯だって。

 そもそも、最初はスライムですら怖がって泣き喚いたくらいだし。自我が戻る前の私が。

 私は勇者でもチートがあるわけでも何でもない。

 ちょっと珍しいらしいけど、ただの猫獣人なはずだ。


 前世は全くケンカしたことがなければ、格闘技の番組を見ても「すごいなー」「痛そうだなー」とは思っても特に何か感じることはなかった。

 にもかかわらず、この世界の獣人として生まれた私に本能的に強いことが美徳だと感じる意識がある。

 これはきっと獣人としての血だろう。お母さんが強いお父さんに惚れたというのも、少しなら理解できる。

 だから無条件で私は逃げ出すなんて言えば、他の獣人はきっとバカにするかもしれない。

 けど、いいんだよそんなの。

 五体満足で生き残ったもの勝ちだ。




 そんなこんなをつらつら考えていたが、気づくとお母さんの職場である冒険者ギルドに到着した。


 王都にある冒険者ギルドは大きいし歴史がありそうな風体をしている。

 基本は木製でできているが、壁はレンガで補強されてたり、モルタルっぽい何かでしっかりと綺麗に塗り固められており清潔なイメージだ。

 そしていかにも冒険者ギルドって感じがしていい。


 看板には前世では見たことのない文字が書いてある。

 この世界の共通文字なのか、この国独自の文字なのかは分からない。

 きっと、王都冒険者ギルドとか書いてあるんじゃないかな。

 そんな私みたいに文字が読めない人は王都ですらそれなりにいるらしく、冒険者ギルドを示す「剣と杖を交差させその後ろに盾」のイラストが描かれた看板もしっかりとある。

 もちろん、道中にあるお店の看板も文字が無くても必ずイラストは描かれてあった。

 中世ヨーロッパっぽい時代だし、この世界はまだまだ識字率が低いんだろう。


 言っておくけど、この前自我が戻った私に文字を学ぶような時間は無い。

 だいたい、多少話せるようになった程度の子どもが急に本を読みたいから文字を教えてとか言い出したら気味が悪いと思う。

 だから読めなくても問題ないのだ。


 とはいっても、この世界で生きていく力を学ぶには、文字が読める方が遥かに効率的なはずだ。

 何とかして不自然でないよう文字を学ぶ理由を考えておこう。

 まあ暇だからという理由も大きいけど。



 ギルドの正面には西部劇に出てくるような両開きのドア――確かスイングドアとか言うやつ――があるけど、冒険者ギルドの職員はそのドアからは入らず裏側にある職員用の普通のドアから入る。



 1の鐘(6時頃)が王都中に鳴り響いた。

 私のせいで遅くなったのかと心配したけど大体いつも通りで一安心だ。


 ギルドには1の鐘(6時頃)が鳴るころに来ればいいが、別に体感で30分程度遅れてきても問題ない。

 誰も文句を言わず怒りもしない。

 3時間おきに鳴る鐘以外は正確な時間が分からないため、時間の感覚がとてもアバウトな文化なのだろう。

 前世のように時間にシビアではないのだ。


 「私は制服に着替えてくるから、フランはミーティング室でおとなしくしてるのよ」


 お母さんは私を下ろし、更衣室に向かっていった。

 私は言われた通り、というかいつも通りにミーティング室に向かっていく。

 ミーティング室にはドアは無く、職員や関係者であればだれでも自由に入れるのだ。



 「フランちゃん、おはよう。今日もいい天気ね」


 ミーティング室にはいつも私を可愛がってくれる受付嬢のお姉さんがいた。



母親は職員なので、当然裏側から入っていきます。

職員なので異世界もののテンプレには遭遇しません(笑)


次回更新は10/8 22:00の予定です。

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