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転生理系のマジレス異世界無双  作者: 修論仮面
実験②「魔法を動力源とした現代マシンの開発」
9/10

移動手段無いなら車作ればいいんじゃね?

 薬師寺計助、享年二十一歳。所属、旧帝大学ケミカルマテリアル研究室。

 男は生前、学生研究員であった。


「フッ、大学で自動車会社と共同研究に取り組んでいたのが功を奏したな。その経験が無ければ、こんなアイデアは浮かばなかったかもしれない」


 また、研究者として高く評価されていた計助は、大学と一般企業の共同プロジェクトにも参加していた。計助の『ハイブリッドカー用新素材開発』という研究内容が自動車メーカーから注目を受け、実際に製品開発に関わっていたのである。


 その実績から出た発想が、「移動手段無いなら車作ればいいんじゃね?」だった。


「えー、コホン。ただいまより『魔法を動力源とした水燃料自動車』の作成を行う。魔法しか知らん貴様らが科学技術の結晶とも言える自動車づくりに参加できるのだ。光栄に思うがいい」


 そして現在、白衣の男は数百人の異世界人たちを全校集会のごとく整列させ、やたらと偉そうに、そんな宣言を出していた。

 この男、今いる人間たちを全員コキ使って車を作らせるつもりである。


「はいはい、計助さん! ひとつ質問よろしいでしょうか!!」


 最前列中央にピシッと起立しているウランが、ブンブンとシッポを振りながら計助に問いかける。


「む、どうしたケモノ女」

「まず、そのミズネンリョージドーシャ? とは一体なんなのでしょうか! 素人でも分かるように教えていただきたいです!」

「なるほど、良い素人質問だ。まあ、一言で表すとアレだな。水燃料自動車とは、その名の通り『水を燃やして動く自動車』だ。ちなみに、自動車というのは人間を乗せて走る箱だとでも思ってくれればいい」

「へぇー、なるほど! なんとなくしか分かんないですけど、なんかすごそうですね!!」

「ああ、そうだ。すごいぞ」


 自分の得意分野ということもあり、過去イチのテンションでウランに語る計助。


 しかし実際のところ、現代日本では『水だけで走る自動車』という夢のようなクルマは存在しない。果たして男は一体、どのようにして実現するつもりなのだろうか。


「さあ、異世界人ども。ギブアンドテイクといこうじゃないか。先ほどは俺が邪龍を倒して、困っている貴様らを助けたのだ。今度は貴様らに俺の実験を手伝ってもらうとしよう」


 恩着せがましく村を救った事実を主張し、強引に異世界の人間を巻き込もうとする理系男。


 しかしその無理矢理さ加減が、好奇心旺盛な異世界人たちと奇跡的に噛み合ったらしく。「なんかおもしろそう! やるやる!」「僕も手伝うよ、お兄ちゃん!!」などと、住民たちの方も割と乗り気である。


 かくして。魔法と科学技術が交錯する、前代未聞の自動車づくりが始まったのであった。

 かつてないほどノリノリな計助の指示のもと、異世界人たちがせっせと働く。そんな異様とも言える光景の中、クルマづくりは意外にも順調に進んでいった。


「よし、最初はタイヤを作るとしよう。まずはひたすら木をガリガリ削って樹液の回収だ」


 第一工程、タイヤ作成。異能で周辺にある木々の成分解析を行い、品種がラバーウッドであると見抜いた計助は、手始めに樹液を集めるように指示を出した。


 実はこのラバーウッド、別名を『ゴムの木』と言い、タイヤ用ゴムの材料となる樹液を回収できるのである。ウランの転送魔法で村の中心部に数本の木々を移動させ、ひたすら村民たちがナイフでガリガリと樹液を削りとった。


「じゃあ、このドロドロの液が丸く固まるように──物体創造(クリエイト)! どうです? こんな感じですか?」

「いや、もう少し綺麗な丸型にしてくれ。タイヤの形は最重要課題と言っても過言ではないからな。ガタついていたら乗り心地が悪くなる」

「うぅ、またやり直しですか……難しいです……」


 そして、最後は集めた材料に向けてウランの創造魔法を使用。計助のこだわりによって何度もやり直すハメになったウランではあるが、最後は無事タイヤの作成に成功した。


「次は車のドアやボンネット等のパーツ作成だ。集落周辺に金属材料が見当たらないので、今回は木製自動車を作ることにする。再びラバーウッドにお世話になるとしよう」


 第二工程、車の部品作成。本来なら鉄やアルミニウムなどの金属が材料になるところだが……なんと。この男、木材で車を作ると宣言した。


 一見すると、非現実的に思える計助の考え。しかし現代日本には、『木のクルマが走った』という実績が存在する。二〇二一年、十二月。トヨタ社は木で作った自動車『木製カローラ』にエンジンを搭載し、これの走行に成功。一部ネット上で話題を呼んでいたのだ。


 計助はその事実を知った上で、半分遊び心を含みつつ、木を材料として選んだのである。ラバーウッドは木の中でもかなり硬い部類に含まれるため、タイヤ以外にも使い道があると踏んでの判断であった。


「なぁ、計助殿? オレの火炎魔法で木を乾燥させんのか? まあ、木に直接火が当たんないようにあたためるってのは、できなくもないけどよ」

「ああ、頼む。木材は使用前に水分を多少飛ばして腐らないようにしておく必要があるからな。乾燥は必須だ」


 そうして火炎魔法で木材処理を行えば、車の材料調達は完了。


 あとは例のごとく、


「はぁ、はぁはぁ……物体創造(クリエイト)! 物体創造(クリエイト)! 物体創造(クリエイト)ぉ!」

「ドアは合格。ボンネットがやや大きい。ハンドルの形も歪だ。それら二つはやり直しだな」

「ちょっとコレ難しすぎませんかね!?」


 再び、集めた材料に向けてウランの創造魔法を発動。『見たこともない車のパーツを作りあげる』というタイヤ作成とは比にならない難易度の中、何度も物体創造(クリエイト)したウランがシワだらけのババアになりかけながらも、木製自動車のパーツを全て作り上げることに成功した。


 ここまでくれば、あとは出来上がった部品を車に詳しい計助が組み立てるのみ。その途中、「ドライバーなどの工具が必要だな。あと、エンジンやらホイールやら金属じゃないとダメな部分もある」と言いながら、計助がスズとラドンの鎧を強奪して金属材料にするという暴挙があったものの、どうにか四人乗りの木製自動車が完成するのであった。


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