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転生理系のマジレス異世界無双  作者: 修論仮面
実験②「魔法を動力源とした現代マシンの開発」
8/10

俺を王宮まで飛ばすことはできないのか?

 邪龍討伐後、計助は「そういう世界観か」などと吐き捨て、ロクに魔法を理解しようとしていなかった。明らかに論理的に説明できる事象ではなかったため、理系男は思考を放棄していたのである。

しかし結果として、今回はそれが災いを生んでいた。


「この世界の人間は大半が飛行魔法を使える、だと……?」


 再び地に足をつけた四人と共に佇む、夜間の集落。ウランたちの懸命な説明により、ここに来て計助はようやく魔法に関する最低限の知識を得ていた。


 この世界には『基礎魔法』と呼ばれる、大半の人間が使える魔法が存在する。その基礎魔法の一つが飛行魔法であり、異世界の人間は大抵誰もが空を飛ぶことができる──そんな重大事実を、今更知ったのであった。


「え!? 計助さんって飛べないんですか!? 一人で邪龍倒せるのに!?」


 また、ウランたちはウランたちで大変びっくらこいていた。彼女らは『人間は飛行魔法を使える』というのが常識であるため、まさか実力者である(と思われている)計助が飛べないとは思っていなかったのである。


「なるほど。あの女神が言っていた『魔法に依存している』とは、こういう意味だったのか……」


 飛ぶのが普通な異世界人と、飛べるはずのない転生者。ようやく互いの認識のズレを解消すると、計助は納得したように呟いた。


 そう。この異世界は、常軌を逸した魔法至上主義。


 移動手段は飛行魔法。調理手段は火炎魔法。家屋は全て創造魔法によって建設され、入浴時は水魔法と火炎魔法の合わせ技で湯を沸かす。何もかもを魔法で解決し、逆に魔法以外は知らないと言っても過言ではない──そういう世界だ。


 全人類が最低限の魔法を扱えるため、『魔法が無い世界』を想像できる者など一人も居ない。なので、誰もが当たり前のように「計助は空を飛べる」と思い込んでしまったわけである。


「しかし、困ったな。王都までの距離は徒歩で二日ほど、だったか? バカ正直に歩くわけにもいかんし、何かしら移動手段が欲しいところではあるが……」


 慣れたように〝解析〟を発動させつつ、周囲を見回す計助。どうやら馬車などの乗り物を探しているようである。


「……貴様ら、本当に飛行魔法以外で移動する術を知らないようだな」


 しかし悲しきかな、集落には乗り物はおろか電灯すらもなく、少し開けた場所にキャンプファイヤークオリティの焚火が燃え盛っているだけなのが現状だった。無論、着火手段はラドンの火炎魔法である。


 薄暗い集落の周囲にあるのは、青々と生い茂っている数多の大木のみ。いよいよ、徒歩移動が現実味を帯びてきた。


「おい、ウラン。確か貴様、テレポートが使えるとか言っていたな。それで俺を王宮まで飛ばすことはできないのか?」

「うーん、できなくはないですよ? でも、チョット難しいかもです。転送魔法で飛ばす距離が大きければ大きいほど、私の消費魔力も大きくなるので。仮に計助さんを王宮まで飛ばしたら私の魔力はスッカラカン。精力ごと吸われてシワだらけのババアみたいになっちゃいます」

「くっ、なるほど……移動距離に制限があるのか……」


 最後の望みを絶たれ、ガックリとうなだれる計助。


 実はこの男、ステータスが知力に片寄りまくっているため、絶望的に体力が無いのである。二日も歩くくらいなら死んだ方がマシだと、割と本気で思っている。


「まだだ……まだ何か可能性があるはずだ……考えろ……考えろ……」


 そしてこの男、こういう時の往生際の悪さだけはピカイチであった。自分が楽をするためならば、遺憾なくその思考力を発揮する。なんとも諦めの悪い男だ。


 歩かずに王宮へ行く──たったそれだけのために、この瞬間、計助は邪龍を倒した時ばりに頭を高速回転させ始めていた。


「周囲に存在する大量の樹木……木々の性質はラバーウッドに近い、か……」


 まずは、〝解析〟で樹木の成分を鑑定。目に見える物の情報を、脳内に取り込む。


「そして、貴様らが使える魔法は……」


 続いて、記憶の整理。視覚情報に加え、異世界人たちから耳で得た情報を、改めて振り返る。


【お望みとあらば、私たちにできることなら何でもさせていただきます!!】


 ──自分に感謝してやまない、異世界の住人たち。


【ナーハッハ! どうだい計助殿! これがオレの爆裂(バーニング)火炎(フレイム)だ!!】


 ──火炎魔法使い、ラドン。


【消えろ、純水(エミット)放出(ウォーター)


 ──水魔法使い、スズ。


物体転送(テレポート)魔力障壁(シールド)物体創造(クリエイト)、なんでもござれ。補助系の魔法なら大体使えます!!】


 ──補助魔法使い、ウラン。


 脳内に検索をかけ、彼らの言葉から有益な情報を絞り込んでいく。


「ラバーウッド、火炎魔法、水魔法、そして十分な人員……おい、ウラン。貴様の物体創造(クリエイト)とやら、語感から察するに物を作る魔法なのだろうが、作れないものはあるか?」

「いや、材料が揃ってれば、大体の物は作れちゃいますよ? ふっふん。私、天才ですので!」

「フッ、そうか。ならば──条件はクリアだ」


 そして最後、相変わらず耳とシッポをピョコピョコ揺らすウランに確認を取ると、確信めいたように、計助は呟いた。


 どうやらこの男、『歩かずに王宮へ行く』という課題を勝手に設定し、勝手に解決してしまったようだ。


 木材、火炎魔法、水魔法、創造魔法。四要素を掛け合わせた計算式を組み立て、理系男は強引に答えを導き出してしまったのである。


 すなわち。男がセルフQ&Aの末に出した結論は、以下の通りである。


 Q.現在の状況において、王宮へ向かう最適手段を導き出せ。


「よし、異世界人ども。魔法で動くクルマを作るぞ。ちょうどいい機会だ。骨の髄まで魔法に浸されている貴様らに、科学技術の素晴らしさをレクチャーしてやる」


 ──A.木材×火炎魔法×水魔法×創造魔法=水燃料自動車。


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