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第4話 イスラエル独立戦争、第一次中東戦争におけるT-34戦車の栄光

 もし、ユダヤ側、イスラエルが独立戦争、第一次中東戦争において、T-34戦車の大量確保に失敗していたら、そして、戦争を戦う羽目になったら、というのは、第一次中東戦争を語る際に、必ず取り上げられると言っても過言では無いイフ話になる。

 それくらい、T-34戦車はイスラエル独立を果たす際に大きな役割を果たした。


 何しろ、当時のアラブ側、エジプト、ヨルダン、シリア、イラク(他にサウジアラビア等も、部隊の派遣は行ってはいるが、実際にユダヤ側、イスラエルと交戦したといえるのは、先の4か国の部隊といっても過言では無く、それ以外は後方警備等にしか当たらず、ユダヤ側、イスラエルと直接の交戦は行わなかったと言っても、間違いとは言い難いのだ)の部隊には、T-34戦車と互角に戦える戦車が無かった、と言っても過言では無かった。


 当時のアラブ側が保有していた戦車で主力と言えたのが、第二次世界大戦勃発前に開発された仏のルノー35戦車やオチキス39戦車、また、英のクルセーダー戦車(前期型)だったからだ。

 勿論、流石にこのような戦車のままでは、最近の戦車の進歩について行けない、と第一次中東戦争前には、アラブ側の各国の軍首脳部では判断していた。

 そのために、英のクロムウェル戦車やルノー41戦車等の導入がアラブ側の各国では検討され、数両が実際に購入されていて、アラブ側の戦車として、第一次中東戦争に投入されたのだが、ある意味、ユダヤ側のT-34戦車の数の暴力の前に、無惨に戦場で散るという悲劇を迎えることになったのだ。


 更に言えば、ユダヤ側、イスラエルは、T-34戦車のカタログデータ上の優位に慢心せず、更なる性能向上等に励んでいたのだ。

 T-34戦車に無線機を搭載し、戦場でも有機的な戦闘連携が図れるようにしたり。

 少しでも照準器等を改良して、戦場での主砲等の命中率改善を図ったり。

 また、T-34戦車に搭乗する戦車兵についても、十二分な訓練を施した上で戦場に投入したのだ。


 こうしたことから、ユダヤ側とアラブ側の戦車の損害比率については。

 ユダヤ側1に対し、アラブ側に最も好意的とされる損害比率でさえ10、通説では20台、最も非好意的なものでは50とさえ評価される程、T-34戦車は戦場では戦果を挙げた。

 その具体的な内容を言えば。


 対エジプト戦においては、イスラエル戦車部隊はエジプトの戦車部隊を圧倒。

 シナイ半島は、ほぼ完全に一時はイスラエルの制圧下におかれ、これ以上のイスラエル軍の進撃は、スエズ運河の運行に支障が出る事態になることを懸念した英仏によるイスラエルへの恫喝により、イスラエル軍は止むを得ず、シナイ半島から撤退したのだ。

 だが、これはエジプト政府にしてみれば、屈辱以外の何物でもなかった。


 対シリア(イラク)戦でも、似たような事態が発生した。

 ゴラン高原は、T-34戦車を駆使するイスラエル軍の占領下に一時的に置かれ、イスラエル軍はダマスカスへの進撃までも果たすのではないか、という勢いを示したが。

 エルサレムをイスラエル軍が重視したことから、結果的に第一次中東戦争においては、ゴラン高原はシリアが何とか奪還して、停戦まで維持することが出来た。


 そして、対ヨルダン戦が、イスラエル軍のT-34戦車にしてみれば、最大の栄光となった。

 T-34戦車部隊を駆使したイスラエル軍は、エルサレムの旧市街完全占領に成功したのだ。

 これによって、イスラエルは、エルサレムが自国イスラエルの首都である、と内外に宣言した。

 これはアラブ側の大反発を引き起こしたが、最早、アラブ側にはエルサレム奪還の力は無く、結果的には負け犬の遠吠えという事態になったのだ。

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