第４４章　紅希VS木の人形

紅希は、人形に対して効率の良い攻め方をしている。

「ん？いつの間にか、紅希が・・・・・」

空の戦闘に集中している間に紅希は、優勢に立っていた。

「おっと！」

人形の拳を避け、人形が拳を引くタイミングに切り裂いている。

（驚いたな。もう、ファーストの力を理解してやがる）

紅希の戦闘能力に心底驚かされる淳だった。

「・・・・・・」

刃で人形を吹き飛ばすと、紅希は休むことなく風を集めた。

「っは！！」

良祐と違って紅希は短時間で鎌鼬を放った。それも、良祐が放った鎌鼬より強いものを。

（セカンド・アイより威力は弱いけど、これならいける・・・・）

鎌鼬を放つと感触的に大丈夫だと確信した。

吹き飛ばされている最中に鎌鼬を喰らった人形は、勢いよく壁に叩きつけられた。

地面に崩れ落ちると、数秒動かなかったが、人形は何事も無く立ち上がった。

立ち上がると人形は右手を前に出した。

「何だ？」

注意深く見ていると、人形の前に穴が開いて、その中から等身大の刀が現れた。

「っツ！？」

等身大の長さがある、刀を手に取ると人形は紅希の視界から消えた。

「！？」

次の瞬間、後ろに振りかぶった体勢で人形が現れた。

「くっ・・・・・！！」

後ろを振り向くと、刃が迫っていた。

「・・・・・・」

防御する暇も無く紅希は切り裂かれた。

が、人形が切り裂いたのは氷の像だった。

「氷身・・・・・」

氷身で斬撃を避けると、紅希はすぐに人形の後ろを取った。

相手が振り向く前に紅希の刃は相手の胴体を一閃した。

紅希の戦いを見ていた淳は、口笛を吹いた。

「やるな～紅希」

だが、紅希にその言葉は聞こえていない。それに紅希はずっと切り裂かれた人形を見据えている。

（さっき、空が戦っているのを見てたら、復活するらしいからね・・・・・）

紅希は空の戦いを戦闘、中横目で見ていたので人形が復活する事も分かっている。

案の定、人形の斬られた場所から新しく生えてきた。

「まったく・・・・・」

ため息を付いて構えを直した。

「あれ・・？」

真っ二つにした人形が、いつのまにか二人になっている。

「なっ？」

よく見ると、まだ傷が治っていないのに気づいて、よく見てみると二つとも胴体が切れていた。

（まさか、真っ二つにした体から下半身からは上半身が直って、上半身から下半身が直ったって言うのか？）

笑みを浮かべて淳は見ていたが、すぐに良祐に視線を移した。

傷が治った人形二人はそれぞれ手に、等身大の刀を持っている。

「はぁ～」

つい、ため息をこぼしてしまった紅希に二体の人形が、襲い掛かってきた。

（これなら、人形(ドール)相手にしている方が楽だな）

現実逃避をしてしまったが、すぐに現実に目を向けると、紅希は二体に斬りかかった。

片一方に斬りかかると、もう片方が紅希を後ろから切り裂いてきた。

後ろに顔を向け、それを確認すると刃が当たる瞬間、高速でその場から移動した。

その場から紅希は、移動していなくなったが人形の刃は止まらなく、一方の人形を切り裂いた。

移動した紅希は残った人形の後ろに現れ、左手で相手の背中に手を当てた。

「ん、何する気だ？」

紅希の変な動きが視界の隅に映ったので紅希に視線を向けた。

「はっ！！」

左手に力を入れると触れている部分から凍り始めた。

「なっ！？」

淳は目を疑った。

「おいおい、ファーストで新技って、ありえねぇだろ」

淳の言うとおり、大抵ファーストでいるときは技が使えなくなる事はあっても、新しい技が出せるはずが無い。

「あいつは、戦いの天才か・・・・！！」

完全に凍りつくと紅希は手を離して淳に向いた。

「終わりましたよ」

何事も無かったかのように声を出した。

「ははは・・・・」

紅希は気付いていないが淳は理解している、とてつもなくすごい事をしたという事に。

「なら、二人が終わるまで休憩していろ」

「は～い」

気楽に返事を返した。