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【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第3話 《選択 ヒーローとして進むべき道 》 〜大口怪獣トカゲラ、海藻巨人怪獣ベルント、鎌鋏バガーブ、 スーデリア星人ピーピー登場〜
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#17 頭頂部にチョップ

「ハハハッ!ハーハハハハハ!! ケッサク」

 

 ユウタの意識が戻った時、照明のついた部屋の中、椅子に座った()()が大爆笑していた。


「ヒーヒヒッ! まさか、まさか、あんな簡単なイタズラに、見事に引っかかってくれるなんて。イヤイヤこれは笑えるいやマジで! アーハッハッハ!!!」


  机の上には、ついさっきまで少年が被っていた髑髏のマスクが置かれている。


  そのあまりにも本物そっくりのクオリティに騙されて、ユウタは危うく幽体離脱するところだったのだ。


 そんな下手したら命の危機を迎えていたかもしれないのに、部屋の主人は腹をよじらせ笑っている。


「笑い事じゃないよ」


 ユウタに窘められても少年の馬鹿笑いは止まらない。まるで笑いキノコを食べたように。


「あの魂抜けたような顔。いや駄目だ思い出しただけで、笑いが、イヒヒ、笑いがこみ上げ……イヒヒヒヒ――痛!」


  このままだと、笑い死にそうな少年の笑いが止まる。


 正確には止められた。


 いつのまにかサヤトが後ろに回り、少年の頭頂部にチョップを振り下ろしたのだ。


「イッテー。何するんだよサヤ……ト」


  頭を抑えた少年は、文句を言おうとしてサヤトの方を振り向き止まる。


 まるで『ゴゴゴ』と擬音が聞こえそうなほどの勢いで炎が燃え盛っている……ように見えた。


  少年の笑いが突然止むと同時に、部屋が熱くなったような気がした。


 ユウタが見ると、少年はサヤトの方を見て固まっている。


 何があったのかと、サヤトの方を見ると、いつも通り刀のような鋭い雰囲気を纏っていた。


「悪かったよ」


 と、少年が謝ると、


「私じゃなくてユウタ君に謝りなさい」


 サヤトの声音は、首筋に刃を突きつけられたような冷酷さを秘めている。


 が、ユウタは全く気づいていなかった。


  少年がユウタの方に身体を向けて畏まる。


「……悪かった」


「誠意が見えません」


  サヤトに窘められた少年は改めて謝罪。


「驚かして悪かったよ。反省してます」


  見ると少年の後ろに立つサヤトが、ユウタの方に視線を送っていた。


 まるで「これでいいかしら?」と言いたげ。


「僕は怒ってません」


「そうか、驚かして悪かったな」


  少年は椅子から降りる。


「改めて。オレさまは博学(ハクガク)士郎(シロウ)ハカセって呼んでくれ」


「僕はホシゾラユウタ。よろしくハカセ」


 立ち上がったユウタは僅かに目線を下げて挨拶。


  目の前にいるのは、小学生くらいの男の子である。


  全く手入れしていないボサボサの白髪を無造作に後ろに結わえ、


  伸びた前髪が、意図したものか偶然か完全に目元を隠していた。


  ハカセという名前のイメージ通り白衣を着ている。


 それも大きなサイズで、着ているというよりも着させられているという表現がぴったりである。


「むっ、なんでそんな勝ち誇った笑み浮かべてるんだ?」


  ハカセが首を傾げた。


「そんな笑み浮かべてないよ」


「……自分の方が身長高いと思ってるだろう」


「そ、そんな事ないよ〜」


  下手な口笛吹くユウタ。


「テメェ。絶対オレさまが小さいと思ってるんだろう!」


「いいえー思ってませんよ」


  犬のように吠えるハカセと、猿のように躱していくユウタであった。




 落ち着いたハカセは、足を組み態度大きく椅子に座っている。


  明かりのついた事で、部屋の詳細が分かるようになった。


  ユウタが気になったのは、左側のガラクタだ。

 

  コスプレに使うには、いささか物騒な武器の数々。


  見た目以上に重そうで、長剣の刃は触れただけで切れそうだし、


 両手でも持ち上がりそうにないガトリングからは、本当に弾丸が発射されそうな物々しさを感じる。


「あのガラクタの山は失敗作な」


 その山をベッドに、手を合わせて眠るオレンジ色のOF-60が目に入った。


「あのヒューマノイドも失敗作?」


「ん? ああ、起きろアシタ」


  ハカセが指を鳴らす。


 するとガラクタの山で眠っていたオレンジボディのヒューマノイド頭部のディスプレイに火が灯る。


「ふわぁ〜おはようございます。ハカセ」


  ヒューマノイドは、まるで人間のように欠伸する仕草をしてから伸びをした。


「十二時間眠らせてもらったので、私は元気いっぱいです」


 まるでアニメのヒロインのような可愛らしい声と仕草。


  とてもヒューマノイドには見えない。まるで女性が中に入っているようだ。


「ハカセ。こちらの方は? ああ、お友達ですね。やりましたねハカセ。初めての地球でのお友達……」


「友達じゃねえ。こいつはユウタ。今日来るって言ってたガーディマンの正体だよ」


「えっ? ガーディマンって、この前街を救ったあのガーディマンですか」


  アシタが両手でユウタの両手を握ってくる。


「この前の活躍見させてもらいました。とってもかっこよかったですぅ!」


  まるでアイドルに褒められているようでちょっと嬉しいユウタ。


「あ、ありがとうございます」


  ユウタもアシタも、サヤトの目つきが鋭くなっていることには気づかなかった。


  アシタは一歩離れて胸に手を当ててお辞儀。


「自己紹介が遅れました。私はハカセのアシスタントを務めます。アシダッ! アシタといいますぅぅ」


  自己紹介で舌を噛むヒューマノイドであった。

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