表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第3話 《選択 ヒーローとして進むべき道 》 〜大口怪獣トカゲラ、海藻巨人怪獣ベルント、鎌鋏バガーブ、 スーデリア星人ピーピー登場〜
88/148

#13 「お疲れ様ですリィサ」

 昼食を済ませた二人は食器をカウンターに戻す。


 サヤトは、ユウタが片付けるのを待ってから「ついてきて」と一言だけ言ってから先に進む。


  サヤトは歩きながら、腕時計を操作していた。


「ユウタ君。これを渡しておくわ」


  腕時計の表面に滑らせるように、二本指を動かすと、ユウタのオーパスが振動する。


  どうやら腕時計型のオーパスだったようだ。


 取り出してみるとメッセージが届いている。


「ユグドラシルのセキュリティパス?」


「そう、仮のパスだけど、これでセキュリティに引っかかる事ないわ」


「ありがとうございます」


 サヤトは関係者以外立ち入り禁止と書かれた扉の前で立ち止まる。


 券売機と同じように、ドア横の機械に腕時計を翳すとロックが解除された音が鳴る。


「入って」


  ドアを内側に開けて入るように促した。


「いいんですか?」


 ユウタはもう一度、扉に書かれた関係者以外立ち入り禁止に目を遣る。


「さっき渡したパスがあるから大丈夫よ」


 先程パスが飛んできたオーパスを見る。見たところ変化はないが、サヤトが大丈夫と言ったので信用する。


「じゃあ失礼します」


  ユウタは関係者以外立ち入り禁止の場所へ足を踏み入れた。


 真っ白な廊下は、人が三人通れるほどの幅で高さは三メートルほどだろうか。


 天井には正方形の照明が等間隔に並び柔らかな光が、サヤトとユウタを照らし出している。


  よく見ると天井に継ぎ目のようなものが見えたが、ユウタにはそれが何だかよく分からなかった。


 大きい廊下だが、それにしては音が聞こえない。


(ここ、CEFの本部だよね?)


 地球を護る部隊の本拠地の筈なのに、人の姿はサヤトしかいない。


 先程からすれ違うものはいる。


「お疲れ様ですリィサ」


 けれど、それは人間ではなかった。


「お疲れ様ですリィサ」


 すれ違っているのはヒューマノイドOF-60だ。


 しかも一体ではない。


「お疲れ様ですリィサ」


「お疲れ様ですリィサ」


「お疲れ様ですリィサ」


 もう十体以上のOF-60とすれ違ったが、どれも例に漏れずにサヤトに対して会釈する。


 因みにユウタの事は見えてないのか、皆無反応だ。


 それより気になるのは、ヒューマノイド達のサヤトの呼び方だ。


「お疲れ様ですリィサ」


 十三体目が会釈して通り過ぎた時、ユウタはサヤトに尋ねてみる。


「あの〜サヤトさん」


「ヒューマノイドばかりで驚いたかしら? ここにはOF-60が三百体いて、調理に整備、警備まで兼任してるのの」


  それはそれですごい情報だが、サヤトに聞きたかったのはそれではない。


「サヤトさん。OF-60に違う名前で呼ばれてませんでした? 確か……リィサとか」


「ああ、それね。私のCEFでのコードネームよ。作戦遂行中に本名で呼ぶのは変でしょ?」


「確かに」


 慣れないとへんな感じしそうだなぁ。と思うユウタであった。


 サヤトについて、相変わらず人気のない廊下を歩く。


 案内しているサヤトは腕時計型のオーパスを顔の前に持ってくる。


  文字盤の上にホログラムスクリーンが表示されていた。


「隊長。彼を連れてきました。司令室へ通してよろしいですか?」


 どうやら誰かと会話しているようだ。


 ユウタは少し興味が湧いて、申し訳ないと思いつつサヤトの背中越しに覗いてみる。


 スクリーンに映っていたのは、短く切りそろえた灰色の髪と繋がる顎髭。


  右眼には縦一文字に走る傷跡。


 とても厳つい印象の男性だった。


 サヤトは「隊長」と言っているからCEFの隊長なのであろう。


( 今からこの人に会いに行くのかー)


  少し憂鬱な気分になってしまった。


「分かりました。彼を連れてそちらに向かいます」


  通信を終えたサヤトは、何かに気づいたのかユウタの方を振り向く。


「もう少しで着くから」


 ユウタの憂鬱な表情に気づいたようだが、その理由までは分からなかったようだ。


 サヤトが指差す。


 両開きの扉から、一見すると部屋への入り口のようだが、右脇のパネルからエレベーターのようだ。


「あれに乗って行きましょう」


  二つあるエレベーターのうち、片方のエレベーターが下の階から、今いる階へ上がってくる。


 サヤトがボタンを押す前に、エレベーターの扉が開いた。


  中から出てきたのは、OF-60ではなく、黒のスーツを着た人間の男性だった。


 身長は百七〇くらいで、ユウタより十歳年上だろうか。


「ジキョウくん」


 と呼ばれたのは、黒髪をきっちり七三に分けた男性だ。


  彼はエレベーターのパネルに手を伸ばし扉が閉まるのを阻止する。


「ああ、サヤトさん」


「格納庫にいたの?」


  ジキョウは知的な雰囲気だが、天才という言葉より努力という言葉が似合うような気がした。


「そうです。ヘビィトータスの整備をしてました」


「OF-60に任せればいいのに」


「彼らの腕を信頼してますが、やはり主砲の調整は自分でやらないと……おや?」


 ジキョウはサヤトの後ろから覗いているユウタに気づいたようだ。


  恥ずかしがり屋のユウタは、リュックのストラップを掴み、反射的に会釈する。


 ジキョウは、目があったユウタにではなく、サヤトに尋ねる。


「彼女はどなたですか? サヤトさんの、妹さん?」


  訂正したのはサヤトだった。


「妹じゃないわジキョウ。可愛らしい顔してるけど、れっきとした男の子よ」


「えっ!!」


  ジキョウは、ユウタの正体を探るようにアクアマリンの瞳を細めて話しかけた。


「君は、男なのか?」


  知的な雰囲気の彼の口から出た質問とは思えず、少し間を空けて返事する。


「……はい」


「そうか、間違えてごめん……サヤトさん。何故彼はここにいるんですか? 一般人は立ち入り禁止ですよ」


「今日ガーディマンをここに招請(しょうせい)した事忘れた?」


「ええ。それなら、今さっき到着したので司令室に来るようにと連絡が……じゃあ彼が先日街を救ってくれた……」


  ジキョウがヒーローに憧れた少年のような眼差しをユウタに向ける。


「彼はホシゾラユウタ。ダンさんとアンヌさんの息子さんなのよ」


「ダン、あのスティール・オブ・ジャスティスの……」


 ユウタはつむじが見えるほど頭を下げた。


「はい。僕ガーディマンやってます! 宜しくお願いします!」


  頭を下げたまま相手の反応を待つが、何も帰ってこない。


  恐る恐る頭をあげると、しかめっ面のジキョウと視線がぶつかる。


  その眼差しは先ほどと違い、怒りと劣等感が混ざっているように見えた。


  何か悪いことしたと考える前にジキョウが視線をそらす。


「……すいませんサヤトさん。格納庫に忘れ物しました。取りに行ってくるので、隣のエレベーター使ってください」


  ジキョウは返事を待たず、エレベーターの扉を閉じてしまうと、一人で下に降りて行ってしまった。


 ユウタはもちろん、サヤトも理由が分からないようで、しばらく二人で閉じたドアを見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ