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【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第3話 《選択 ヒーローとして進むべき道 》 〜大口怪獣トカゲラ、海藻巨人怪獣ベルント、鎌鋏バガーブ、 スーデリア星人ピーピー登場〜
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#12 カレー大盛りと超大盛り

 ユウタに声をかけたサヤトは、パンプスのヒールを鳴らしながら近づいてくる。


 紫の髪をシニヨンにまとめ、黒のパンツスーツを着こなす彼女には一部の隙も見られない。


  今日は土曜日、休み特有のゆったりとした雰囲気は彼女からはどこからも感じられなかった。

 

  そのせいだろうか、ユウタの全身が緊張で硬直する。


「遅れずに来たみたいね。ごめんなさい。昨日は夜遅くに連絡してしまって」


「いえ。僕も起きてましたから。謝ってもらうことはないです。はい」


 数秒ほどの沈黙の後、サヤトが最初に口を開く。


「そうだ。お腹すいてない?」


 尋ねられた途端、今まで落ち着いていた空腹感が復活。


 サヤトの質問に答えるようにお腹が鳴った。


 慌ててお腹を両手で抑える。顔が赤くなったユウタがちらりとサヤトの方を見ると、


  世話好きな姉のような表情をしていた。


「お腹すいているみたいね。じゃあ昼食にしましょうか」


 サヤトに促されたユウタの顔は耳まで真っ赤になっていた。




 怪獣守戦記念博物館の食堂は最大百人入ることが出来る。


 十人座れる長机が並び、注文した食事を受け取るカウンターがある。


 その奥を覗くとヒューマノイド達が調理をしていた。


  食堂は有料だが、調理しているのは全て調理プログラムがインストールされたヒューマノイド達だ。


  不適切な動画を撮ることもなく、人件費も抑えられるので、値段の割にボリュームがある。


  これ目当てに博物館に来る人もいるそうだ。


 もちろん味も保障されている事を付け足しておこう。


 サヤトとユウタがやってきた時には三分の一ほどの椅子が埋まっている。


(周りに他の人もいない所に座れたらいいな)


  空いている場所を確認しながら券売機の方へ向かった。


 まずサヤトが券売機で食べたい食事を選びボタンを押す。


  それから腕時計を券売機にかざしていた。


 自分の番になったユウタはカレー大盛りを選ぶ。


  選んだ料理のボタンを押すと、ICリーダーが発光したので自分のオーパスを近づけて食券のデータを受け取る。


 カウンター奥から料理が運ばれてきた。


「お待たせしました」


  同時に二人分運ばれてきたようだ。ユウタのカレー大盛りと、カレー()()()()だった。


(沢山食べる人いるんだ)


  そんなこと考えながらトレーを持ち上げると、


 隣の超大盛りをパンツスーツの袖を通した両手が持ち上げていた。


「あっ」


 つい小さな声を上げてしまう。


 カレー超大盛りを受け取ったのはサヤトだったのだ。


「そこにいたら後ろの人の邪魔になるわよ」


「あっ、はい」


  サヤトについていくと、ユウタが座れたらいいなと思った席に向かってくれた。


 先に座ったサヤトの対面に座るのが恥ずかしかったが、


 横に座るのも近くて緊張するし、一個ずれるのもおかしな話なので、向かい合わせに座る。


「いただきます」


「い、いただきます」


 ほぼ同時に二人はカレーにスプーンを向けた。


 サヤトは目を閉じるように食事に集中していて、話しかける雰囲気ではなかった。


 ユウタはユウタで前日からの空腹が勝り一口食べた途端、女性の前ということも忘れ、勢いよくスプーンを進める。


 半分食べたとこで気づいた。サヤトは超大盛りを三分の二平らげていた。


  サヤトの流れるような食べ方に見惚れていると、不意に目があった。


「ここの食事美味しい?」


  と、聞かれる。


「はい。とっても美味しいです! ここは小学生の頃から何度か来てるんですよ!」


「そう、良かった」


  声高のユウタに驚く事なく、サヤトは再び食事へ戻る。


 ユウタも自分の残りのカレーを平らげることに集中した。


 カレーを食べ終えても、まだどこか物足りない。


 胃の一部に隙間が空いているような気分だ。


(うーん。あっそうだ)


  ユウタはリュックの中にしまっていた物を取り出す。


  アンヌの作ってくれたランチボックスを取り出し蓋をあけた。


「可愛いサンドイッチ。自分で作ったの?」


 ユウタより先に超大盛りを平らげたサヤトは、ランチボックスの中が気になったようだ。


「えっと、母さんに作ってもらったんです」


「そう、アンヌさんが。私も料理作れたらな」


  ユウタは手作りならではの、しつこさのないサンドイッチを食べながらアンヌにこんな事を聞く。


「サヤトさんは料理しないんですか?」


「うん。料理はここ最近忙しくて作ってないわ。もし……」


 サヤトはテーブルに頬杖をついて距離を詰める。


「もし作ったら食べてくれる?」


 仄かな甘い香りがユウタの鼻をくすぐった。


「そ、それはもちろん食べてみたいです」


  ユウタの返答をいたく気に入ったようだ。


「そう、じゃあ今度機会があったらね」


  サヤトが話しかけてくれた事で、ユウタもいくばくか緊張がほぐれてきた。


  アンヌの作ってくれたサンドイッチを食べ終え、ランチボックスをしまいながら質問する。


「今日は何の用事があるんですか? 確か急ようだって」


 そこまで言うと、サヤトの顔が少し険しくなる。


「今日はね。ユウタ君の中にある力を調べさせてほしいの」

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