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【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第3話 《選択 ヒーローとして進むべき道 》 〜大口怪獣トカゲラ、海藻巨人怪獣ベルント、鎌鋏バガーブ、 スーデリア星人ピーピー登場〜
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#1 「ウォッウォッウォッ……」

 そこは虹色の空間だった。


 しかし実際目にする虹とは違い、そこには不快感しかない。


 臓物を叩きつけたような赤。


 人々の苦悶の涙を表したような青。


 冥界に引きずり込もうとする紫。


 橙色は腐ったミカンのように黒いまだら模様が染み出し、その他三色も似たようなものだ。


 不快な七色は、まるで生き物のように不規則に色を変え、脈動している。


  空間に浮かぶのは無数の光点、それらは直線で結ばれ、まるで恒星図のようであった。


 そんな常人なら一分もいられないような薄暗い空間に、七つの星がまるで顔を合わせるように向かい合っていた。


  始まりを告げるように、赤い三つ星が瞬く。


「メカメカキョウボラスが倒されたようだな」


  その言葉を聞いた残りの六つの星が瞬きするように明滅した。


 三つ星は返事を待っていたように沈黙していたが自ら破る。


「……倒されたようだな」


  緑の一つ星が叱られた子供のような返事を返す。


「はいはい。申し訳ありません」


「全く、あれほど自信があるとぬかしていたくせに」


 一つ星が何か言う前に黄色の二つ星が口を挟む。


「ほんと、その通りだよな」


  二つ星が蹴りつけるような激しい視線を向けると、一つ星は縮こまるように謝罪を繰り返す。


  三つ星は二つ星にも厳しい視線を向けた。


「お前にも責任があるのだぞ」


「えっ? 俺にもですか?」


「当たり前だ。敗北したイレイド星人と地球人を雇ったのは誰だったか」


「すいませんでした」


  責任転嫁で逃れようとした二つ星は、拗ねたように謝ると反論もせず黙り込む。


  三つ星はしばらく睨みつけていたが、やがて満足したのか、


「……まあいい。それで次の手は考えてあるのか?」


「はいはい。兄上」


 一つ星が応えた。


「新たな怪獣は既に作成してあります。後は輸送方法なのですが……」


  二つ星が勢いよく手をあげるように口を開く。


「それなら俺に考えがあるぜ」


「言ってみろ」


「新しい転送装置は完成してる。これがあればどんな大きさの怪獣でも送り込めるぜ」


「その転送装置を地球に運ぶ手段は?」


 三つ星の質問に、二つ星が勢いよく返事する。


「既に運び屋は手配してる。もう地球に到着してる頃じゃないかな?」


「……かな?」


  不確定な物言いを指摘されて、二つ星は慌てた様子で訂正した。


「もう到着してると思われます! はい!」


「以前の奴のように、身勝手な振る舞いはしないだろうな?」


  三つ星が言っているのは、以前、共闘関係を結んでいた相手のことだ。


  しかし五年前。


  こちらを出し抜き自分達で地球を征服しようと未完成の怪獣を勝手に持ち出した為、共闘関係を一方的に破棄したのだ。


「問題ないぜ。あいつはこの仕事を成功させた報酬が目当てだからな」


「もしそいつが失敗、あるいは捕まった時の対処はしてあるのか?」


「ああ勿論。まず失敗することはありえない。何せ奴の腕は超一流だからな」


  その後は一つ星が引き継ぐ。


「設置した後の対処も既に施してあります。万が一捕まっても僕達の事が知られることはないと思います」


  二つ星と一つ星の意見を聞いて、三つ星は納得したようだ。


  向かい合う星たちの中心に映像が浮かび上がる。


 それはメカメカキョウボラスを破壊したCEFの超兵器と十字のゴーグルが特徴的な白銀の生命体だった。


「さあ。新たな遊戯(ゲーム)の始まりだ。地球人どもの駒がどれくらい抗ってくれるか高みの見物といこうではないか!」


 虹色の空間にアザラシの鳴き声のような笑い声が響き渡る。


「ウォッウォッウォッ」


 それは三つ星の笑い声であった。


「「ウォッウォッウォッ」」


 すぐさま二つ星と一つ星も同じように笑い出す。


「「「ウォッウォッウォッウォッウォッウォッ」」」


  耳を塞ぎたくなる笑い声は、腐った虹色の空間内に、いつまでもいつまでも反響し続けていた。

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