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【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第2話 《新生 最弱で最強のヒーロー 後編》 〜限界改造獣メカメカキョウボラス ムベホスアーマー 登場〜
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#19 夢は、壊さないほうがいいよね

 三機の飛行機の爆音が止んで、街に静寂が訪れる。


  聞こえるのは、怪獣の頭部で踊るように燃える炎だけだ。


  ユウタが立ち尽くす怪獣を見上げていると、右手を引かれた。


  見ると、先ほど助けた男の子だ。後ろには父親もいる。


  二人とも砂埃で汚れているが、怪我はしていないようだ。


  よかった。


  子供を下ろした父親が口を開く。


「ありがとう。君のお陰で助かったよ」


「お礼なんていいんですよ。それより早くここから離れましょう」


  男の子がユウタに近づいてきて、眩しい笑顔を向けた。


「ありがとう。くろいガーディマン!」


「ああ、いや違……」


 否定しようとしたら、男の子の後ろにいた父親が僅かに首を横に振ったのが見えた。


  夢は、壊さない方がいいよね。


  ユウタはしゃがみむと、男の子と目線を合わせる。


「どういたしまして。ここはまだ危ないよ。お父さんと一緒に逃げるんだ。出来るよね?」


「うん! ぼくできるよ!」


「いい子だ。じゃあお父さんと一緒に避難しようね」


  男の子は父親の方に戻って手を握る。


「本当にありがとう……ヒーロー」


  父子は手を繋いで病院の方へ避難していった。


 去り際にこんな会話が聞こえてくる。


「パパ。ガーディマンだよ。ガーディマン」


「ん。そうだったな。ごめんごめん」


 それが聞こえた時、灰色のナノメタルのマスクの下でユウタは口元が緩んで、微笑ましい気持ちになっていた。




 ユウタは怪獣の周りで倒壊したビルの瓦礫の近くを歩いていた。


  もし誰かが挟まっていたら助けて、南の病院に避難させるつもりだ。


  ユウタは立ったまま動かない怪獣を見上げる。


  頭失ったんだから、もう動かないよね? あれ? 今まで頭無くて動いた怪獣いたっけ?


  今まで観てきた特撮やアニメの怪獣を思い出す。


  多分、いなかった……。


 自分の記憶を信じることにする。


 瓦礫が微かに動いたのが目に留まった。


  バランスを崩した瓦礫が滑っただけにも思えたが、よく見ると下から押し上げられているように見えた。


「誰か下にいるんじゃ!」


  駆け寄ろうとすると、フタを開けるように瓦礫が動いた。


  現れたのは全身、灰色の砂埃にまみれた細身の中年男性だ。


  三〇代後半から四〇代くらいの男性は、自分よりも大きな瓦礫を押しのけると這いずって出てくる。


「大丈夫ですか?」


  ユウタの呼びかけを無視しているのか、それとも聞こえてないのか、男性は唾を飛ばさん勢いで感情を露わにする。


「くそ。くそ。こんな筈では……こんな筈ではないのに!」


  自力で脱出した男性は砂埃を払い落とそうともせずに立ち上がると、立ち尽くす怪獣を仰ぎ見た。


「何て事だ。メカメカキョウボラスを倒せる兵器が存在するなんて、私は知らないぞ!」


  この人何言ってるんだ?


  ユウタが近くによると、黒い髪が掛かった顔を、どこかで見たことがあるような気がした。


 訝しげている間も、男性は上を向いたまま自分を責めるように叫んでいた。


「折角の計画が……世界の源(ヴェルトオヴァール)を手に入れて、今度こそ私は宇宙に行ける筈だったのに……」


  中年男性はその場に両膝をつくと、自分の頭を掻き毟る。


  両手を動かすことによって、身体にまとわりついていた砂埃が落ちていき、露わになった銅色が光を反射した。


「ここは危険です。避難しましょう」


  ユウタの呼びかけがやっと聞こえたのか、中年男性が動きを止めて勢いよく首を動かす。


 睨みつけられながらも、ユウタは声をかけながら近づき病院を指差す。


「避難しましょう。向こうにある病院なら安全ですから――」


「黙れ!」


中年男性の振り上げた左手がユウタの胸部を直撃。


「ウアッ!」


ユウタは後ろから引っ張られたように吹き飛び、背中から道路にぶつかり砂埃が舞った。


「今の力、何?」


上半身を起こすと、こちらを向いて立つ男性の全身が見えてきた。


細い小枝のような両手足には、銅の鉄パイプのような物の装着されていて、上半身には野球のホームベースによく似たブロンズのプロテクターを装着している。


プロテクターからは、発光するオレンジ色のケーブルが両手足のパイプに繋がっていた。


今にも折れそうな体躯に、外に出たことのなさそうな白い肌。


ユウタは思い出した。防衛軍の新兵器展示祭りのイベントにいた人物の事を。


「あなたはシルバーバックを開発したハンプクシュウゴ……」


「……邪魔だ」


「えっ?」


「私の夢を邪魔するなぁ!!」


シュウゴの掌からケーブルと同色で一回り太いケーブルが伸びてくる。


まるで鞭のようにしならせ、ユウタの上半身に巻きつけてきた。


動きを封じられたユウタは為すすべもなく振り回されて、近くのビルの壁面に投げ飛ばされてしまった。

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