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【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第2話 《新生 最弱で最強のヒーロー 後編》 〜限界改造獣メカメカキョウボラス ムベホスアーマー 登場〜
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#8 太陽を喰らうもの

「母さん。太陽が欠けていくみたいだけど、一体あれは」


 ユウタが見ている間に、翡翠色の太陽はどんどん黒に侵食され、完全に光を失ってしまった。


  青空はまるで夜の闇に包まれたように暗くなり、見上げた人々は、一体何が起きたか分からず困惑している様子だ。


「詳しく説明するから、場所を変えましょう」


  アンヌに手を引っ張られると、一瞬にして惑星の衛星軌道上に浮かんでいた。


「ここは?」


「この星は太陽に一番近いGN(ジーヌ)1。ここに『あるもの』が落ちてきたことが全ての始まりなの」


  ユウタの隣を何かが通り過ぎる。


  それは直径数キロもある巨大な石であった。


  石は惑星の重力の綱に捕まり、引っ張られるように落ちて、大気圏に突入して燃え尽きる。


「隕石⁈ あれが衝突……はしてないよね?」


「ええ。隕石は完全に燃え尽きたけど、こっちよ」


  アンヌはユウタの手を引いて大気圏の中へ。


  もちろん二人が燃え尽きることはない。


 大気圏の中にいたのは、隕石の破片に紛れるように、小さな黒いスライムのような物体がいた。


  大きさは掌ほどで、とても大気圏を突破出来るとは思えない。


  だが、ユウタの予想に反して、黒い物体は燃え尽きることなく惑星GN1に落ちていった。


  誰にも気づかれることなく海に着水した黒いスライムは、沈みながら不気味な行動を始める。


体全体に人の唇によく似たものが現れたのだ。


「海水を飲んでる⁈」


  ユウタの言葉通り、口を大きく開けて海水を飲み始める。


  海水が減る度に黒い物体が反比例して大きくなっていく。


  アンヌが説明する。


「あの黒いスライムのような物体の行動に気付いた時には海洋生物は全て全滅。そして……」


  説明が終わる前に、蒼い海は真っ黒になっていた。


「あの黒いの全部、さっきのスライム?」


「ええ。海を吸い尽くした後は大地を侵食し始めたわ。そのスピードは恐ろしく早かったわ。大陸は次々と噛み砕かれて飲み込まれ、宇宙へ脱出できた人も、ごく僅かだった」


  惑星を脱出しようと打ち上げられた宇宙船が、伸びた触手に掴まれ、黒い地表に開いた口腔内に飲み込まれてしまった。


 黒い物体とGN1は完全に一体化。


  遂に惑星と同じ大きさまでに成長していた。


  惑星を平らげても、まだ満足していないのか(やじり)のような形に変化し移動を開始する。


  その進行方向にはGN銀河全体を照らす緑の宝玉があった。


「まさか、あいつ太陽へ?」


「その通りよ。底知れぬ食欲はこの銀河最大のエネルギーを持つ太陽を標的にしたの」


「GN星の人達は何も出来なかったの?」


「いいえ。各惑星に駐屯していたAI搭載の自衛軍の艦隊を派遣。最終防衛線を構築したわ。けれど結果は……」


  また場面が変わりユウタ達は太陽の近くへ来ていた。


  そこでは太陽を背に、文字通り背水の陣で攻撃を繰り返す宇宙艦隊の姿がある。


  数万近い艦艇は全砲門を開き、緑色の光線や、魚雷のようなものを発射し、太陽に迫る黒いスライムに攻撃を繰り返していた。


「艦隊の攻撃は外れる事なく命中。けれど全て吸収されてしまい、黒い物体の糧にしかならなかった。そして弾が尽きた艦隊もまた呑み込まれていったの」


  アンヌの説明通りに、黒いスライムは防衛線を張った宇宙艦隊を全て呑み込みながら前進を続け、ついに太陽に到達してしまう。


  そして、太陽は皆既日食のように影に覆われてしまった。


  皆既日食と決定的に違うのは、その闇が晴れる事は永遠に来ないという事だ。


「こうして、GN銀河は太陽を失ってしまった」


  太陽の恵みを失い、永遠の闇に包まれた惑星は氷点下の世界となり、全ての生物達もまた氷の彫像と化していく。


「人々が諦めて死を待つ中、一部の人たちが立ち上がり必死に生き延びる術を探したの」


  ある惑星では地下に都市を作って逃げ延び、またある惑星では、外宇宙船に搭載されていた試験段階のワープ装置を使って脱出していく。


「けれど、地下へ逃げた人達は、強烈な冷気に耐えきれなかった。そしてワープした人達は現在も連絡がつかず行方不明のまま」


  ユウタとアンヌの見ている前で、GN銀河は完全に光を失ってしまう。


  そんな中、漆黒に包まれた銀河に、マッチの炎のような小さい希望の光が灯った。


「母さん。あの光は何」


「地下でも宇宙船でもないもう一つの生き延びる手段が創り出されたの。それが人工太陽」


「……人工太陽、そんなすごいのを作ったの?」


  ユウタはスケールの大きいことばかり続くので、さっきから質問ばかりになってしまっていた。


「外宇宙船の動力炉を転用して、地表が凍りつく前に何とか完成したの。お陰でお母さんの故郷でもあるGN28を含めて、少数の惑星の人々が生き残ったわ。けれど、同時に大きな代償も背負うことになってしまった」


  人工太陽が目も絡むほどの強力な緑の光を地表に浴びせると、惑星全体で変化が訪れる。


  植物も動物もエメラルドグリーンの結晶になって砕け散っていくではないか。


「一体何が起きたの。みんなクリスタルみたいになって砕けていくけど」


「人工太陽には太陽の代わりになるために強いエネルギーが必要だった。それがリームエネルギー」


  人工太陽から降り注ぐ光が、植物や動物の体内に蓄積、遂には内部から結晶化して崩壊していく。


「これ惑星全土で起きたなら、GN星の人達も」


「ええ。人々の体内にもリームエネルギーは蓄積していたわ。見つかった治療法は一つだけ……身体を作り変える事」


「作り、変える」


「一度結晶化した身体は、進行を止めることは出来なかったの。だからそれに適応する為にナノメタルで作り上げた皮膚を纏うようになったのよ」


  GN28星の人々は全てリームエネルギーの結晶体となり、その上から金属が生き物のように纏わり付いていく。


  ユウタはその姿をどこかで見たことがあるような気がした。


「でもリームエネルギーだっけ? それは身体に毒じゃないの」


「リームエネルギーは元々太陽から降り注ぐエネルギーなの。GN銀河ではそれを発見して全てのエネルギーを賄っていたわ。もちろん太陽系の太陽にもあるのよ」


「地球にも降り注いでいるってこと」


「ええ。地球の人達で知っているのは極一部で、ほとんどの人達には知らされてないわ」


 二人が話している間にGN28は完全な機械化惑星と変化していた。


「リームエネルギーを取り込んだGN星人は人型生命体としては規格外の力を手に入れたわ。極寒や極暑の地域は勿論。深海の水圧にも耐え、宇宙空間でも活動可能」


  絶望的な状況から一転、進化したGN星人達は自らの銀河から飛び出していく。


「みんなどこに行くの?」


「ギャラクツクスの行方を追って、銀河中に散ったの」


「それで、見つかったの?」


  アンヌの表情を見れば、成否は分かっているが、それでも聞かずにはいられない。


「いいえ。何百万年もの間探し続けたけれど、遂には見つからなかった。そのまま長い時が過ぎ、お母さんとお父さんが地球を救った時、それは突然現れたの」


  二人の眼前に、今度は美しい地球が広がった。

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