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【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第2話 《新生 最弱で最強のヒーロー 後編》 〜限界改造獣メカメカキョウボラス ムベホスアーマー 登場〜
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#4 母と再会

「母さんに会えるんですか?」


  サヤトは頷いた。


「ええ。すでにアンヌさんとは先に会ったわ。私がここに来たのも、ユウタ君を連れて来るためだったの」


 サヤトが「動けそう?」と聞いて来たので、改めて身体の調子を確かめてみる。


  包帯が巻かれた両指は、しっかりと固定されているが、力を込めても痛みはない。


  両足にも痺れなどもなく、問題なく立ち上がることができそうだ。


「大丈夫そうです」


 ユウタの返事を聞いたサヤトは、立ち上がると場所を開けるように椅子をどかした。

 

「じゃあ立ってみて」


  言われた通りにベッドから降り、サヤトが用意してくれた病院用のサンダルに両足を通す。


  サンダルは、自動的にユウタの足のサイズを計測し、ジャストフィットする。


  立ち上がると、補助をしてくれるようにサヤトが傍に立った。


  仄かな甘い香りが、鼻をくすぐって顔が熱くなってしまう。


「気持ち悪いとかはない?」


顔が赤くなっていない事を祈りつつ返事をした。


「は、はい。いつも通りの体調だと思います」


「そう。じゃあ行きましょう。アンヌさんは上の階の個室にいるわ」


  サヤトは、ユウタの変化に気づく事なく、いつの間に取り出したのか、手に持っていたサングラスをかけて先導する。


  いつも通りの体調と答えておきながら、実は立ち上がった途端、ものすごい空腹が襲って来ていた。


  しかし「お腹が空きました」など、それこそ恥ずかしくて言えるわけもなく、我慢してサヤトの後をついていく。


 病室を出て廊下を歩いていると、他の入院患者のいる部屋のテレビがついているのか、ニュースの音が漏れ聞こえてきた。


『昨夜起きた防衛軍新兵器の暴走により、死者五〇人。負傷者は二二〇人を超えました。防衛軍と警察は開発者のハンプクシュウゴ容疑者を捜索中で……」


  病室を通り過ぎようとしたが、その後に続くニュースを聞いて身体が固まった。


「視聴者から投稿された動画をご覧ください。この動画には、暴れる兵器を撃破した緑の巨人のようなものが映っています。これが本物か合成なのかは分からず……」


  緑の巨人。それって僕のことかな?


  自分が変身した姿が映っていると思った途端、周りの視線が肌に突き刺さるような錯覚に陥った。


「何してるのユウタ君。こっちよ」


  サヤトの声でユウタの金縛りが解ける。


「は、はい!」


  ユウタはニュースの音声から逃げるように小走りでその場を離れた。




  歩いていると、前を歩くサヤトがポケットから何かを取り出し、ユウタに手渡す。


「このメガネ。潰れてしまっているけどユウタ君のかしら? 」


「あっ、そうです」


  サヤトから渡されたメガネケースには、父の形見である銀色のメガネが、雑巾を絞ったように捻れた形で入っていた。


  記憶が曖昧だけど、このメガネのおかげで変身できたのかな?


「それとこれ。ユウタ君の携帯端末(オーパス)よね。近くに落ちていたそうよ」


「ありがとうございます」


  手渡されたオーパスを見ると、以前使っていたものとは細部が異なっていて、一瞬違うと言いそうになる。


  ボディはくすんだ灰色で、触ると金属のようなひんやりとした重厚感を感じる。


  けれど、以前より軽くなったような気がしていた。


  更に、裏を見ると結晶鋼人ガーディマンのイラストが消えてしまっている。

 

  指紋でロックを解除し、中を見てやっと自分のオーパスだと確信することができた。


 あの時にボディが傷ついたのかな? それにしても以前より頑丈そうな気がする。あれ?


  オーパスの液晶を指で操作していると、見慣れないアプリを見つける。


 メタリクイッブ? 何だろこれ?


  開くと『キーワードを入力してください』と表示されるが、ユウタには心当たりがなかった。


「どうかしたの?」


  液晶から目を離すと、少し離れたところに、サヤトが立ち止まってこちらを見ていた。


  見慣れないアプリに気を取られて、足が止まっていたらしい。


「何でもないです」


  アプリの事は後でもう一度考えようっと。


 歩き出そうとすると、近くの病室から、女の子の泣く声が聞こえてくる。


「ねえママ。ミーちゃんに会いたい」


「駄目です。今日はここにお泊まりすることになっているのよ。ミーちゃんには明日会えるから」


  どうやら母娘の会話のようだ。


  ミーちゃんってペットの事かな? ……そうだ!


  母娘の会話からユウタは家で待っているであろう家族のことを思い出した。


「サヤトさん。病院(ここ)で電話できる場所ありますか?」


「ええ。確か一階にあったわよ」


「すいません。ちょっと家に電話してきます。すぐ戻ってきますから!」


 ユウタは通話可能スペースを見つけ、すぐさま家にあるカメラに電波を飛ばした。




 用を終えたユウタが階段を上ると、サヤトが踊り場の手すりに身をもたれて待っていた。


「用は終わった?」


「はい」


  サヤトと共に階段を上っていくと、段々と足が重くなっていく。


 まるで両足に鉄球が括り付けられたみたいだった。


  だから、階段を降りてきた三〇代から四〇代くらいの、シワひとつない漆黒のスーツを着た男性の視線に気づかなかった。


  灰色の髪と顎髭を蓄え、右目には満月のようなフレームのサングラスを掛けていても分かる、大きな縦一文字の傷が走っている。


  僅かに首をユウタの方に向けると、次にサヤトに向けた。


  二人は誰にも気づかれないほど小さく頷いて、そのまますれ違っていった。


 階段を登り終え、廊下を歩くサヤトが部屋の前で立ち止まる。


  「着いたわ。ここよ」


  サヤトは部屋の扉をノック。


 続いて、扉越しからでもハッキリと分かる、凛とした優しさ溢れる声が聞こえてくる。


「どうぞ」


 声を聞いた途端、ユウタの心臓が破裂しそうなほど脈打った。

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