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【ジェムストーンズ1人目 ガーディマン】〜みんなを護るため弱虫少年はヒーローになる〜  作者: 七乃ハフト
第2話 《新生 最弱で最強のヒーロー 後編》 〜限界改造獣メカメカキョウボラス ムベホスアーマー 登場〜
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#2 近づいてくる?

「失礼します」


  病室のスライドドアを開けて入って来たのは、黒のパンツスーツ姿のサヤトだった。


  お団子にまとめた艶のある黒髪も、隙のない服装も昨日見た時と変わらない。


 狐目のようなサングラスをかけた顔は、看護師など眼中にないように、ユウタの方だけをまっすぐ見ていた。


「お早う。ユウタ君」


「お、おはようございます」


  ユウタは腰だけ動く人形のようなお辞儀を返した。


  サヤトは背筋を伸ばし、パンプスのヒールで小気味良い音を奏でながらベッドに近づいてくる。


「あの、どちら様でしょう?」


  女性看護師が不審な顔をしてサヤトに声をかけた。


「今は面会時間ではないはずですが……」


  看護師が壁の方を向く。そこには時計があった。


  長針と短針は出勤ラッシュの時間を指している。


  今日は、学校休みかな。


 時計を見たユウタはそんな事を考える。


「私は軍の者です。彼と話をしたいので席を外してもらってもよろしいですか? 」


 看護師は疑っているのか、なかなか返事をしない。


 それに気づいたのか、サヤトが先手を打った。


「受付にも話しは通してあるので問題はありません。もし不審に思われるようなら確認してもらって構いません」


  サングラス越しでも分かる突き刺すような鋭い眼光に、看護師は腰が引けたように後ずさる。


「いえ。軍の方でしたらなんの問題もありません。それでは失礼します!」


  足早に看護師が部屋を出ていった。


  二人でその後ろ姿を見送っていると、サヤトがユウタの方を向いて僅かに首をかしげる。


「あの人。なんであんなに慌てていたのかしら?」


「さ、さあ」


 多分サヤトさんが怖かったんじゃないかな。


 ユウタは口に出さないことにした。




「失礼するわね」


 サングラスを外したサヤトは、手近な椅子を持って来てユウタのそばに座る。


「は、はいどうぞ」


  サヤトの体重がかかって椅子が微かに軋む。


  それから二人しかいない病室は沈黙に包まれ、外の小鳥が「何してるんだろう?」と言うように囀っていた。


  ど、どうしよう……。


  ユウタは全身から汗が噴き出してくるのがわかったが、止める術がない。


  何故なら、鋭い目つきのアメジストで、ずっと視線を注がれているからだ。


 ユウタは『ジー』という音が聞こえるほど睨まれて、どうしていいかわからず、両手をもじもじさせることしかできない。


 サヤトと目が合って慌てて下げて、またサヤトと目が合って慌てて下げるを繰り返していた。


 その内、ある事に気づく。


 あれ、近づいて来てる?


 目線を外してまた戻すを繰り返すうちに、少しずつ、段々と美しく整った顔が大きくなって来ていた。


  最初は気のせいかとも思ったが、気づいてから目線を外して戻すと、先ほどよりも迫って来ているではないか。


「サヤトさん」


「何かしら?」


  サヤトは気づかれてないと思っているのか。口調を変える事なく、距離を詰めてくる。


「近づいて来てません? 何て……」


  アメジストの瞳に光が灯ったような気がした直後、彼女は一気に距離を詰めて来た。


  ユウタは息がかかるほどの距離まで接近されて慌てて頭を後退させようとするが、


「動かないで」


「はいぃ」


  その一言で動きを止められてしまう。


  サヤトはユウタの側頭部を両手で挟み込み、顔を近づけてくる。


「絶対に動かないで」


  艶めいて柔らかそうな唇を至近距離で見て、ユウタはこんな事を思う。


  サヤトさんの唇、プルプルだ。


 そんな魅惑的な唇を見つめていると、額にヒンヤリとした柔らかくも硬い何かが当たった。

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