番外編その2の8 (約800字)
ラチカの祖父が逮捕されたマンションを、ガーディマンとオオシタの二人は揃って見上げている。
「このマンションの五階の部屋で老人を捕らえた。警官が入った時には鍵がかかっていたそうで警備会社の人間に頼んで、鍵を開けて入ったとの事だ」
「そのあと管理人に話を聞いたんですね」
「ああ。ここだけの話だが、今日だけでこのマンションに住む子供が全員消えているんだ。十人が一日の間にだ」
「一人も見つかってないんですか?」
「ああ。付近はもちろん。屋上や、人が立ち入らない場所は徹底的に捜索したが、手がかりになりそうなものは何も見つからなかった」
オオシタは、行方不明になった子供達を見つけられないことに対する怒りを表現するように、後頭部を激しく掻き毟る。
「管理人は?」
「もちろん話を聞いた時に部屋を調べさせてもらったが、何も出ていない。そもそもマンションは俺たちで封鎖して、出入りする人間は全て調べているんだ。十人の子供をどこかに連れて行くなんて無理な話だ」
「……そうですね」
ここでまた事件解決へつながる糸が切れてしまう。
オオシタは新たなシガレットチョコを取り出すと、そのまま黙ってしまった。
ガーディマンが事件のあったマンションをもう一度見上げたその時だった。
「ん?」
「どうした?」
「屋上が一瞬光った気がして」
オオシタも一緒に屋上の方を見上げるが、何も変わったところは見当たらない。
「何にもないぞ」
「そうですね」
一瞬だったので光が反射しただけかもしれない。
ただ喉に魚の小骨が引っかかったかのように気になってしょうがない。
「オオシタ刑事。僕ちょっと見てきます」
「何⁈」
「何もなければすぐ帰ってきます。五分経っても戻って来なかったら応援を呼んできてください」
「待て!」
ガーディマンはオオシタの言葉を聞かずに飛び立った。




