番外編その2の2 (約800字)
「はぁ〜〜」
溜息を吐くと、まるで幸運が逃げていくように、白い息が夜の空に向かって登っていく。
今日は十二月二四日。クリスマスイブだ。
子供達がプレゼントを待ちわび、親達はどうやって夢を壊さないように、プレゼントを置くか頭をひねる。
恋人達は雪を溶かすほどの熱を帯び、それを見た独り身達が肩を落とす。そんな日である。
今年のユウタは独りぼっちのクリスマスイブであった。
いつもなら、家族でささやかなパーティーを催すのだが、今年はみんな予定が重なってしまったのだ。
ユウタは携帯端末を取り出し時間を確認すると午後五時を過ぎていた。
まだ誰も帰ってきてないだろうなー。
母はボランティアに出掛け、飼猫も他の猫たちに会いにいくと言って――ホシニャンとユウタはテレパシーで意思疎通ができる――家には誰もいない。
隣に住む幼馴染の姉妹。妹も友達と遊びに行ってしまい、姉は防衛軍の仕事が忙しく、ほとんど帰ってくることはない。
毎年パーティーなんてやらなくてもいいのに。
そう思っていたが、いざ無くなると、心の周りだけ吹雪いているかのように冷えていく。
カップルだろうか、手を繋いで歩く人達とすれ違う。
周囲を彩るイルミネーションが祝福するかのように彼等、彼女らを輝かせていた。
ユウタは一人で歩いているのが、自分だけのような気がして足早に家に向かう。
羨ましくなんかないもん。僕にはコレがあるからね!
ユウタが手に持つ紙袋の中には、フクロウの如く悪を逃さないアメコミヒーロー『オウルマン』の愛機オウルビークルのプラモが入っている。
今日は家に誰もいないから、プラモ作ってゲームしてお菓子食べて夜更かししてやろう!……はぁ〜〜。
なんとなく負け惜しみを言っているような気がして、心の中でもため息をついてしまうのだった。




