番外編その2の1 (約800字)
こちらの番外編2もパラレルワールドの物語で本編とは独立しています。
山手線を走るリニアモーターカーが、真冬の寒さと闇夜に包まれた希望駅に到着した。
続々と降りてくるのは、スーツを着た男性や最近の流行に沿った服を着た若者達だ。
皆厚着をしていて、ドアが開くなり破裂した風船のような勢いで降りていく。
降りる人が完全にいなくなったのを見計らって両開きのドアが閉まろうとした。
「降ります、降ります!」
閉まりかけたドアが開く。
一人の青いダウンを着た少年が転がるような勢いで降り、そのまま駅のホームに突っ伏した。
少年を吐き出した電車は、口を閉じると何事もなかったかのように動き出した。
「あぶなかったー。イテテ」
少年は起き上がると、ぶつけた鼻から血が出ていないことを確かめた。
声変わりのしていない高めの声と、可愛らしい顔立ち。
ふんわりとした黒髪から、よく女の子に間違えられる彼の名は……。
星空勇太。高校生でありながら人知れず地球を守るヒーローである。
ユウタは、転んだ時に落とした紙袋を拾って中を確かめる。
よかった。箱傷ついてないや。中は……。
ホームで両膝をついたまま袋の中を確かめていると、感情のこもっていない声を掛けられた。
「お客様。その場所に座っていると、他のお客様の迷惑になられます」
顔を上げると、駅員を務めるヒューマノイドOF-60が見下ろしている。
どうやらホームで座り込んでいるユウタを不審に思って声を掛けてきたようだ。
気づくとホームで電車を待っている人達も何事かとユウタの方を見ていた。
「すいません!」
人知れず注目を浴びていたことに気づいたユウタは、寒さとは別の理由で耳を赤くしながら、その場を離れた。




