#12『ああオモチャの事か』
―1―
グザ・エレトロンを倒したガーディマンは、イブゥを救助する為、脱線したヘビィトータスの元へ駆けつけます。
その上空にはブルーストークがホバリングしていました。
ヘビィトータスの壊れて開かない扉の所に、ブルーストークから降りたドーラの姿がありました。
ゴリラのマスクがよく似合う体格の彼は、両手で開かない扉を掴んで手前に引っ張ります。
二の腕の筋肉が一層盛り上がり、開かずの扉は降参してしまいました。
中からイブゥが出てきます。
自分の足で歩いて出てきたところを見ると、大きな怪我はしていなそうです。
『開けてくれてありがとうございます。さっきの射撃で限界を迎えたのか、システムがダウンして真っ暗になってしまいました』
「無事そうだなイブゥ。ほら、肩につかまりなさい」
イブゥは『どうも』と言ってイブゥに体重を預けました。一見すると怪我してなさそうですが、だいぶ参っている様子です。
「バサルト。イブゥを救助しました。……はい。そちらに収容します」
ブルーストークが徐々に高度を下げて、主翼が信号にぶつかるすんでのところで止まりました。
ドーラはイブゥに肩を貸したまま、人間離れした跳躍で数メートル跳ぶと、片手で機体につかまり身体を引き揚げます。
ガーディマンが様子を見ていると、バサルトから連絡が入ります。
『我々はイブゥを医務室に送る。怪獣の反応は全て消失した。ご苦労だった』
「これで終わったんですね」
辺りを見回すと、破壊された街並みや火を吹く防衛軍の兵器に、脱線してSのような形になったヘビィトータスが目につきました。
『街の被害は大きいが、シェルターからも被害報告はない。それにヨーロッパと南太平洋でも怪獣の撃破が確認された。我々の勝利だ』
ガーディマンは通信を聞きながら、空にのぼる黒煙を見つめていました。
曇り空と黒い煙に包まれた空は、とても勝利を祝福しているようには見えません。
その空に嫌な気持ちが膨れ上がってきたので、目を逸らそうとしたのですが、ある事に気付いてしまいました。
灰色の空に小さな点ができているのです。
火を見つめて目が眩んだせいかとも思いましたが、それは一向に消えずに徐々に大きくなっていきます。
「バサルトさん。空が割れてます!」
『何? まさかまだ来るのか』
ユグドラシルに向かっていたブルーストークが動きを止めると、大きくなっていく点の方へ機首を向けました。
穴はすでに十メートルを越す大きさになっていて、真上ではなく横に開いているので、まるでトンネルのようです。
そのトンネルの壁面は腐食した虹色に染まっていました。
―2―
新たな怪獣が現れる可能性はとても高そうです。
『リィサ、マサシゲ。補給完了次第、すぐに再出撃。新たな怪獣の出現に備えろ』
バサルトが指示を出す声が聞こえる中、ガーディマンは飛び上がり、巨人化していきます。
数百メートルはあろうかという空に出来たトンネル内を進んでくる者が現れました。
それは複数でもあり一体でもありました。
常人では決して考えつかない、悪魔が面白半分で作り出したような不気味で不細工な集合体です。
下半身はピーナツ状の装甲を持つグザ・エレトロンが人の腕に似た前脚と後脚の膝を擦るように動かしています。
上半身と両腕は全身から光線を放つ赤い怪獣レイ・ウラトロンです。
その頭部には、メカキョウボラスとメカメカキョウボラスが口を開けて威嚇してきます。
背中にはマトゥファーラの美しい翅があり、それを保護するようにソンブリブルの地味な翅が覆っていました。
今まで戦ってきた怪獣の特徴的なパーツが一つに固められた怪獣です。
おぞましいのは、複数の物が無理やり繋げられているのに、もともと一つの生命体のように繋ぎ目が全く見当たらないのです。
倒された怨念が融合したような怪獣は全高百メートル以上あり、翅を広げると幅は三百メートルはありそうです。
その怨念融合獣が、腐食した虹色のトンネルを通って街に現れようとしていました。
補給を終えたレッドイーグル二機が応援に駆けつけます。
バサルトが指示を出しました。
『全員、攻撃開始。あの巨大怪獣を街に転送させるな』
ガーディマンがガーディビームを、ブルーストークがリームレーザーを発射します。
少し遅れてレッドイーグルαがプラズマモーターカノンを、βがホーミングレーザーを撃ち込みました。
トンネルに吸い込まれていくように入ったCEFとガーディマンの攻撃は怨念融合獣のバリアに全て防がれてしまいます。
「ハカセ。あいつを倒せる武器はないの?」
『悪いが、現状で役に立つのはない……』
「そんな……」
CEFの超兵器は攻撃を続けていますが、融合怨念獣の進軍を止められません。
何度目かの攻撃の後、リィサが呼びかけてきます。
『ガーディマン。貴方の最大の技を使う時よ』
「えっ?」
最初何の事か分かりませんでした。
怨念融合獣が紙テープを投げるように、全身から光線を放ちました。
慌てて回避した為、一度会話が途切れます。
体勢を立て直したリィサから再び通信が入ります。
『貴方が出せる一番強い技で奴を倒すの。今こそ『ミドラルビーム』を使う時よ』
その単語を聞いた途端、心臓が高鳴り全身から汗が吹き出します。
父であるヒーロー、スティール・オブ・ジャスティスが使うのと同じ技。
それはとても強力で、怨念融合獣のバリアも確実に破れるでしょう。
でもそれを以前使った時、多くの人を危険に晒してしまったのも事実なのです。
握りしめた拳が音が聞こえそうなほど震えてきます。
「僕はミドラルビームを撃ちたくありません」
『撃つのよ。あの怪獣を倒せるのは貴方だけなの』
「でも――」
『でもじゃないの!』
リィサの大きな声に周りの人間はもちろん、ガーディマンも怪獣の存在を忘れてしまいました。
『でもなんて言ってるウジウジしている間に、怪獣が街にやって来るのよ。そしたら沢山の人が死ぬのよ』
リィサは畳み掛けるように続けます。
『早く怪獣を倒すの。今なら転送空間内で街に被害は出ないわ。今が絶好のチャンスなのよ!』
「は、はい!」
サヤトに言われて、今なら周りに被害が出ない事に気づきました。
「僕ミドラルビーム撃ちます」
ガーディマンは全身にある全てのエネルギーを左腕に集中させていきます。
リィサのおかげて吹っ切れた事で、ガーディマンのエネルギーがどんどんと左腕に集まっていきました。
怨念融合獣は本能で危険を察知したのか、二つの首から赤と青の火球を放ちました。
七〇メートルのガーディマンをも呑みこむほどに大きくなっていきます。
その間にブルーストークが割って入り、全出力を使ってバリアを作りました。
ブルーストークの円形のバリアに、二色の火球が纏わり付き、破壊しようと食らいついてきます。
やがて炎の魔の手が消えてしまいますが、バリアは健在でした。
ガーディマンはその間に、エネルギーが溜まった左手と右手を火花が出るほど激しく打ち合わせます。
左拳と右拳の間からエネルギーの光球が生み出されます。
ブルーストークが射線を開ける為に場所を開けました。
ガーディマンは肘を曲げた両手を後ろに下げると、骨が折れるのも構わないほどの力を込めて前に突き出します。
怨念融合獣がガーディマンを倒す為に口からの炎だけでなく、上半身や指先から光線を一斉放射しました。
「『ミドラル……ビィィィィィィィム』」
光球から放たれたエメラルドの光線が腐食した空間に侵入します。
ガーディマンの最大エネルギーを込めた一撃が、炎も光線をも巻き込み、怨念融合獣を包み込みます。
翡翠の光は、禍々しい怨念の塊を一瞬にして緑の粒子に変えてしまうのでした。
―3―
ガーディマンは両手を力なく下げます。
短時間の間に身体の中のエネルギーを使いすぎた為に、いつもなら気にならない身体の重さがのしかかってきたのです。
怨念融合獣の姿は何処にもなく、腐食した虹色のトンネルが大きな口を開けているだけでした。
リィサから労いの言葉をかけられます。
「お疲れ様」
「ありがとうございます」
全身を包む倦怠感に呑み込まれそうになりながらも、一つの疑問が意識を繋ぎ止めていました。
「このトンネル? は閉じないんですか」
ハカセが疑問に答えます。
『どうやらかなりのエネルギーが使われたらしい。けれども少しずつ収束してる』
言われてみると、縁の部分がスローモーションのように微かな動きを見せていました。
『計算だと、一時間くらいで完全に閉じるだろうな』
「そうですか」
ふと井戸の水を汲み上げるように新たな疑問が浮上しました。
「これ、どこに繋がっているんでしょうか」
『何処って、敵の本拠地とか?』
冗談で言ったつまりなのがよく分かる軽い口調でしたが、ガーディマンを行動させるには十分でした。
ガーディマンはごく自然な動作で背中のアンチグラビティブースターから妖精の粉のように緑の粒子を出しながらトンネルに入ります。
『何してるの⁈』
一番最初声を出したのはリィサでした。
「僕ちょっと行ってきます」
『何言ってるの。敵の本拠地に繋がってるかもしれないのよ。危険過ぎるわ』
「だからこそ、今回の悪事の張本人を捕まえないと、また怪獣が送り込まれて来るかもしれないんです!」
ガーディマンはリィサの静止を無視して、トンネルの奥へと飛び去ってしまいました。
『待ちなさ――』
転送空間の中には電波も入れないのか、リィサの通信は途中で途切れてしまうのでした。
―4―
身体を真っ直ぐ伸ばし、両腕を上半身にピッタリとくっつけて、トンネルの中を進みます。
進んでいると、前方に星のように瞬く光が見えてきました。
そこが出口と見当をつけて飛び込みます。
眩しい光で遮ららた視界が再び映したのは、やはり腐食した虹色の空間です。
しかしトンネルと違うのは辺りを四方の壁が囲むような空間になっているのです。
壁には、まるで星座を描いたような小さな光と線が沢山瞬いています。
後ろを見ると、どうやらその光の一つから出てきたようです。
「驚いた。ここまで来るとはな」
ガーディマン以外だらもいないはずの空間に声が響き渡りました。
声と同時に現れたのは三つの頭です。
まるで今さっき引き抜かれたように赤々と濡れた頭蓋骨と脊柱の化け物でした。
脊柱の先端は空間の床にあたる部分に突き刺さって見えず、頭蓋骨の大きさは巨人化したガーディマンの何倍もの大きさがあります。
姿形はそっくりなのですが、顔にあたる部分に違いがありました。
一歩前に出た真ん中の頭蓋骨の顔には赤い三つ星が輝いています。
後ろにいる左手側の頭蓋骨は青い二つ星で、右手側の頭蓋骨は緑の一つ星になっているのです。
「どうした? 口がないのか、それとも我らの言葉を理解できる知能がないのか」
声が聞こえるたびに真ん中の赤い三つ星が口を開閉させるように瞬きます。
ガーディマンに聞こえて来る言語は、地球の言葉ではありませんが、その言語が自然と翻訳されて理解できていました。
「貴方達は一体何者ですか」
「ほう、口を開いたと思えば、我らと同じ言語を話すとは、ある程度の知能はあるらしい。なあ」
後ろの二つ星と一つ星が同意するように頭蓋骨を縦に振ります。
三つ星は続けます。
「我々の事を知りたければ、まず自分から名乗れ」
そう言う声音にはガーディマンを、というよりも自分以外の全てを下等な存在としてしか見ていない事がはっきりと伝わってきます。
「僕はガーディマン。怪獣を送り込んでいたのは貴方達なんですか?」
「おお、おおガーディマン。我々の玩具をことごとく壊してくれた地球で一番強い遊び相手」
三つ星はガーディマンの話を聞いてないようです。
「だが、我々の遊びにここまで付いてきた礼儀で名を教えてやろう」
最初に右手側の緑の一つ星が瞬き、子供のような言葉遣いで自己紹介します。
「はい。はい。僕はエスエ-ズテといいます」
次に左手側の青い二つ星が瞬きます。
「俺はエスエ-フーベだ」
エスエ-ズテと違いとても自信に満ち溢れていました。
最後に赤い三つ星が満を持した様子で名乗りあげました。
「そして私がエスエ-ユティだ。以後お見知り置きを」
三人は自分達が追い詰められているとは思っていないのか、とても余裕があります。
「貴方達が怪獣を送り込んでいたんですね」
「カイジュウ……ああ怪獣の事か。そうだ我々が送り込んでいたのだ。楽しんでくれたようで何より」
その一言はガーディマンの怒りを買うには十分でした。
「楽しむって、貴方達が怪獣を送り込んだせいで沢山の人が死んだんですよ」
「それが何か?」
エスエ-ユティの声音は怒りを冷ますのに充分すぎるほどの冷たさを孕んでいました。
「知的生命体は皆死ぬ運命にある。なるほど我々の遊戯で死んだ者もおろうが、
我々の遊び相手に選ばれたのだ。悲しみよりも嬉しさの方が優っていよう。違うか?」
「なんて人達……」
「待てガーディマンよ。我々をお前達と同列に考えてもらっては困る。我々は神なのだ」
とても冗談を言っている雰囲気ではありませんでした。
ガーディマンの怒りの炎は消え、今は混乱が渦巻いていました。
「よく聞け。我々はこの宇宙の悪を消滅する為に生まれてきた存在なのだ」
「この宇宙の悪って、それはつまり」
「そう。君のような知的生命体だよ。君達は悪さばかりする。だから我々が滅ぼしてきた。それこそ数え切れないほど」
「そんな酷い事を」
「酷い? 何故だ。下等な存在よりも上位の我々が断罪されるいわれなどない。当然な事をしてきたまで」
「でも、悪人だからって命を奪っていい事にならない。それに全ての人が悪い人の筈がありません」
「何を言う。全ての生命体は悪になる要素を内包しているではないか」
エスエ-ユティは続けます。
「ひもじければ人から奪い、誰かを助けて善人のふりをして悪事を行い、我が身かわいさに己の犯した罪を認めようともしない。
だから我々が下等な生命体に裁きを与えているのだ。けれども!」
エスエユティは一度天を仰ぎ見てから、ガーディマンに顔を近づけました。
「けれどもある日飽きたのだよ」
「飽きた?」
「そう。裁いても裁いても悪は無くならず、我々には空虚しかなかった。そこでお前達の監視をしてある発見をした。遊戯だ。
子供だけでなく大人さえも、遊びでその日の憂さを晴らしているではないか。だから我々も試しに真似してみたのだ」
ガーディマンは何も言えず、聞きたくもないのに聞くことしかできませんでした。
「我々の玩具を送り込み、下等な存在がどんな抵抗をするか、それを楽しむ事にしたのだ。飽きたら滅ぼす。何故ならお前たちは悪なのだからな。
そして地球に玩具を送り込んでみた。そしたら中々抵抗するので面白かったぞ。まあ、途中で新しい遊び相手を見つけたから、飽きて滅びの熱を送り込んでやったのだがな」
「滅びの熱、それってあの高温化現象……」
「そうだ。もちろん逃げられないように惑星の周囲に玩具も配置しておいた。そしたら案の定お前らは不細工な宇宙船で逃げ出そうとしていたな。映像を見ていた我等はとてもとても愉快であったぞ。ウォッウォッウォッ」
赤い三つ星がアザラシのように笑い出すと、後ろの青い双子星と緑の一つ星も同じように笑いました。
「そして星を一つ滅ぼしたところで、宇宙から地球に向かう訪問者達の存在を確認した」
(僕の父さんと母さんの事を言っているのか?)
「まさかGN星人がやって来るのは予想外であった。が彼らもいずれ滅ぼす存在。
その予行演習と遊びを兼ねて、玩具を差し向けたが、いやはやとても強く我らの地球に置いておいた玩具は全て倒されてしまったではないか」
怪獣が現れなかった二〇年間は準備期間だったようです。
「そして再び我等が戻ったところでお前が現れた。お前もGN星人なのか?」
ガーディマンは、その質問には何も答えませんでした。
「まあどうでもいい。お前が打ち負かしがいのある相手なのは変わらないからな。さあ地球に戻れ。また相手してやろう。さあ早く」
長い話を聞いていたガーディマンは、我に返り首を激しく左右に振ります。
「戻りません。貴方達を地球に連れて行きます」
しばらくの沈黙の後、エスエ-ユティの星が点滅します。
「我々を連れて行く? 何故だ」
「何故って、貴方達に罪を償ってもらう為です」
またエスエ-ユティ達三体がアザラシのように吹き出します。
「下等な生命体の法律で我々を裁くというのか。そんな資格がお前達にあるものか。それに我々のしていることは正しい事だ。悪人と名指しされる謂れはないわ。さあ帰れ帰れ」
急かすように出て行くことを促してきます。
ガーディマンはどうすればいいか、誰かに尋ねたい気持ちでいっぱいでした。
しかし通信機から聞こえる音は雑音ばかりで、此方の声が届いているかどうかも分かりません。
三体の頭蓋骨の溢れ出す自信に、見えない壁に押されるようなプレッシャーを感じていたのでした。
「何を黙り込んで立ち竦んでいる。早く出て行け」
頭蓋骨達は顔の星を点滅させながら笑い続けます。
吐き気のするような気味の悪い空間に、何度も何度も強く言われて、マスクの下では涙が溢れそうになっていました。
「出て行きません!」
勇気を振り絞る為に大声を出しました。
怯んだのか、三体の頭蓋骨の笑い声が止まります。
自分の胸の内を明かすように、胸に手を当てました。
「僕がここに来たのは貴方達の悪い事を止める為です。地球に連れて今までしてきた事を償ってもらいます。さあ行きましょう」
絶対連れて行くぞと意気込み、大きな頭骨を掴もうと近づくと……。
「神に触れようとするな愚か者が!」
鼓膜が割れんばかりの声に耳を押さえて後退ります。
「下等生物の住む世界で生きていけるか。離れろ離れろ! 早く出ていけと言っている!」
まるで子供が駄々をこねるようにエスエ-ユティは大きな頭を左右に振りました。
その様子に軽く恐怖を覚えます。
「じっとしてないで、早く後ろの光から出ていけ。さもないとお前のいない間に地球人を皆殺しにしてやるぞ」
押し潰されそうな迫力に押されながらも、どうしたらいいか必死に考えます。
周りの状況や相手の言葉を反芻します。
(周りの光は違う星と繋がっている。住む世界で生きていけるか、後ろから出ていけ……)
ガーディマンは誰にも相談できない中、自分なりの解決策を生み出して実行に移しました。
―5―
「『ガーディビーム』」
十字のゴーグルにエメラルドの光が集まり、眩い光が真っ直ぐ飛び出します。
攻撃された事に驚く三体の頭蓋骨の間を通り、背後の壁に命中します。
「神を殺そうとするとは無駄な事を、しかも外しているではないか」
罵られても無視して、撃ち続けているガーディビームを左にずらして行きます。
狙いは外れておらず、しっかりと狙ったところに命中していたのです。
ガーディマンの狙いにエスエ-ユティが気がついたようです。
「貴様、まさか星々との繋がりを絶っているのか」
ガーディマンは無言で、壁に光る星への出入り口を破壊して行きます。
エスエ-ユティ達三兄弟が何度も辞めるように言い、その度に心臓が跳ね上がりますが、我慢して光線を放ち続けました。
円を描くように一周して、地球への出入り口以外の光を全て破壊しました。
唯一残った地球へ繋がる光も他の光が消えたせいか、弱々しくなって今にも消え入りそうです。
「貴様、一体何がしたいんだ」
「貴方達が外に出れないというなら、ここに閉じ込めます。そうすれば二度と悪い事なんて出来なくなるはずです」
ガーディマンは地球へ戻ろうと、光の中へ足をかけます。
「こんな事をしてただで済むと思うな」
「貴方達は神だから死ぬ事なんてないでしょう。ここで自分がした事を少しでも考えてみてください!」
そう言い残して光の中へ飛び込みます。
エスエ-ユティが恨み言を放つ光をガーディビームで消滅させてから、一度も振り向かずに地球へ戻っていくのでした。
―6―
地球と三体の頭骨の居場所を繋ぐトンネルがどんどんと小さくなっていきます。
入り口ではリィサ達がガーディマンの帰りを待っていました。
もう人一人も通れないほど小さくなってしまいました。
「あれは」
リィサが何かに気づきます。
閉じて行く入り口から、緑色の小さな光が飛び出したのです。
レッドイーグルαを屋上に着陸させると、緑の光が気づいたのか、方向を変えて近づいてきます。
スーツのズーム機能を使うと、まるで一寸法師のように小さくなったガーディマンの姿が見えました。
「こっちよ」
声に反応するように降りてきたガーディマンは、元の身長に戻ると同時に変身が解除されました。
落ちてきたユウタを、マスクを解除したサヤトがしっかりと受け止めます。
「ユウタ君。しっかりして、何があったの?」
疲労困憊の様子でユウタは中であった出来事を話しました。
「もう怪獣はやってきません。でも僕のやった事は正しい事だったんでしょうか?」
リィサの腕の中で、ユウタは自らの行為が正しかったのか問いかけます。
彼を安心させる為に迷わずこう答えました。
「貴方のやった事は正しいわ。胸を張っていい事なのよ」
「……ありがとうございます。サヤトさん」
ユウタは疲れたのか、リィサの腕の中で寝息を立ててしまいます。
いつの間にか曇り空は消え去り、暖かな日の光が二人を包み込んでいました。




