#3 判決を下す!
―1―
学校終わりの夕方。一日授業を受けていた生徒達が開放される時間。
満開に咲いた桜が散り始め、歩道を淡いピンクに染めていく。
その道を一人の少年が項垂れながら歩く。
いつもは幼く可愛らしい雰囲気の星空勇太だ。
天然パーマの柔らかな黒髪もハリがなく、大きな黒い瞳も濁って見えた。
傍らを小学生達が元気よく駆け抜けていく。
ユウタは散った桜の花びらに染まる路面に視線を落としたまま家に帰る。
マンションの七階でエレベーターを降り、廊下を歩いて家の玄関を開ける。
扉を閉め、無言で靴を脱いでいると、
『わっ。おかえり。あにぃ』
頭の中にテレパシーが聞こえてきた。
額の星のようなマークが特徴的な、三毛猫のホシニャンだ。
『何も言わないからビックリしちゃったよ』
ホシニャンがユウタの足に頭を擦り付けてくる。
「ごめん」
いつもなら出迎えてくれるホシニャンの、柔らかな毛並みに包まれた耳や頭を撫でるのが癒しになっていた。
けれども、ここ数日はそんな気分になれない。
『あっ、あにぃ。どうしちゃったの?』
兄のように慕うユウタの元気のなさに自らも悲しいと言いたそうにホシニャンのヒゲが力なく垂れていく。
玄関からそのまま自室に向かおうと、ユウタはリビングの扉を開けた。
「おかえりなさいユウタ」
母の安塗が普段より大きなアクションで息子を出迎える。
「これ見て見て。スーパーの懸賞で特賞引いてね」
アンヌは自分のオーパスを操作し、液晶からホログラムのチケットを浮かび上がらせる。
「海外旅行のチケット。何処だと思う? 何とロシアよ! これ一枚で三人とペットもOKらしいの」
一緒に旅行に行きたい人を指折り数えるアンヌ。
「だからお母さんとユウタとホシニャン。あとフワリちゃん誘って今度のゴールデンウィークにでも……」
「ふぅ〜ん」
テンションが上がるアンヌとは違い、ユウタはあまり興味なさそうな返事をして部屋に篭ってしまう。
「ちょっと、ユウタ……」
アンヌは胸の痛みを抑えるように、胸の前で拳を握りしめ、その原因の一端であるテレビに視線を向けた。
自室に入ったユウタはリュックを下に置くと、制服がシワになるのも構わずにベッドに仰向けで寝転がる。
ポケットの中のオーパスが振動した。
めんどくさそうに確認すると、サヤトからであった。
開封せずにオーパスを放り投げる。既に何通か来ているが一つも内容を見ていない。
恐らくここ一週間のうちに現れた怪獣関連の事だろう。
だが、今のユウタは、その情報に目を通そうとは思わない。
「はあ〜〜ぁあ」
一週間以上毎日のように溜息をつく。もう癖みたいなものになってしまった。
現実が辛いからユウタは目を閉じる。
せめて夢の中では楽しい出来事が起こると信じて……。
―2―
「被告人。顔を上げなさい!」
「えっ、えっ? 」
いきなりの怒鳴り声に顔を上げると、五メートルくらいの高さからこちらを見下ろす黒い服を着た人間がいる。
髪はおろか、目も鼻も口もない。
のっぺら坊だ。
「被告人。話しを聞いているのか?」
勢いはあるが、嗄れた声から老人のようだ。
「えっと、ごめんなさい。全然分かりません。そもそもここは何処なんですか?」
のっぺら坊の老人はまるで裁判長のように木槌を打つ。
「被告人は自らの罪の重さを理解していないようだ。もう一度映像を見せたまえ!」
裁判長の姿が消え、代わりに巨大な映画館のスクリーンが現れた。
画面に光が灯り映像が映し出される。
それはここ最近連日で流れている見たくもないニュース映像だった。
のっぺら坊の女性リポーターが口のない顔にマイクを向ける。
『ご覧ください。昨日。ガーディマンが放った光線によって街の一画は文字通り消滅してしまったのです』
のっぺら坊のリポーターがカメラから身体をどける。
代わりに映し出されたのは、何キロ四方にも及ぶ巨大なクレーターだ。
『白銀の巨人の光線は怪獣を見事に撃破しました。しかし代償は大きく街に巨大な傷痕を残したのです。
ある工事関係者の話によると、一晩経った今も被害が甚大な為、復興作業が全く進められないとの事です』
リポーターがタブレットを取り出し、カメラに液晶を見せる。
『更に、これをご覧下さい。クレーターの中心点。その下にはシェルターが存在しています。
昨日もシェルターに多数の市民が避難していました。
あろう事か、光線の爆発は地下鉄の駅を消滅させシェルターにまで後十メートル程の所まで迫っていたのです。
このシェルターには数千人もの人が避難していたという情報があります。もし爆発がシェルターに到達していたら、数千人の尊い命が犠牲に――』
「やめろ!」
ユウタの絶叫でスクリーンの音と動きが止まった。
「被告人。静粛に」
頭上から裁判長の声が聞こえてきた。
「もう嫌だ。それ以上聴きたくない……って、何これ⁉︎ 手錠?」
耳を塞ごうとして手を動かした時、両手首に銀色の輪がかけられ、鎖で繋がれていたことに気づく。
来ている服は上下オレンジのつなぎ。左の足首には鎖で繋がれた鉄球。
まるで囚人のような格好であった。
『ヒーローが落花生みたいな怪獣にボコボコにされてるぞ!』
新しい映像が流れ出す。
それは動画サイトに投稿された動画のようだった。
似合っていないのに金髪に染めた男性――またのっぺら坊――が自撮りしているようだ。
『みんな見えるか? 遂に俺は撮ったぞ。巨大ヒーローと大怪獣の戦いを生で配信していくぜ!』
視聴者のコメントも表示されていく。
『これ本物なの?』
『俺シェルターに入る寸前に見た。街で暴れてたのはあの怪獣だよ』
『ちょっと顔邪魔。戦ってるところ見えないし』
動画は終始見上げるアングルでガーディマンと黒いピーナッツのような四つ足怪獣の戦いを撮影していた。
『今、瓦礫が降ってきた。あっぶねー。おいヒーロー! 一般市民がここにいるんだ。ちゃんとやれよ!』
『こいつ何言ってんの? 自分から死地に飛び込んでるのに』
『でもスゲえ迫力あるよな!』
『確かに、ガーディマン。怪獣ぶっ飛ばせ!』
最初は懐疑的だったコメントも、中盤からガーディマンを応援するものが多かった。
『体当たりしてくる怪獣に向かってヒーローが何かポーズとってる。まさか正義の味方お約束の必殺技か⁈』
投稿者の興奮が口調から強く伝わってきた。
勿論コメントも、
『必殺技キター』
『なんて名前だ? 〇〇光線とかか?』
『何でもいいよ。怪獣を殺すところが見れれば』
ガーディマンが放った極太で緑色の光線は怪獣を包み込み一瞬にして消滅させる。
エメラルドの光が収まった時、怪獣のみならず、街に建ち並ぶ多数の建築物も消え、すり鉢状のクレーターと化していた。
『おいおい。怪獣だけじゃなく、街まで消滅させちまったよ』
コメントも辛辣な意見で埋め尽くされる。
『嘘だろ! 巨大なクレーター出来てるじゃん!』
『この辺の地下にシェルターあった筈』
『マジか! 俺の避難しているシェルターすっげえ揺れたけど』
『馬鹿。巨大なクレーター作るほどの威力だぞ。下にシェルターあったら絶対消滅してるよ』
『あーあ。正義の味方が人を殺しちゃったよ』
動画はそこで終わり、最後にタイトルが表示された。
正義の味方対怪獣の生バトル (動画再生百万突破!! ヒーローに感謝感激!)
動画投稿者の高笑いが聞こえてくるようだった。
「ワアァァァァ!」
その高笑いを振り払うようにユウタは喉が痛くなるまで叫んだ。
足元に雫が垂れる。
それは大粒の涙だった。
「僕は、僕は街を破壊する気なんか、みんなを恐怖に陥れるつもりなんて――」
スクリーンが消え、現れた裁判長が木槌を打ち鳴らす。
「判決を下す! ホシゾラユウタを終身刑に処す」
「な、何で!」
「罪状は街の破壊。そしてシェルターの避難民を消滅させた事の二つ」
「待ってください。僕はシェルターの人を殺してなんて――」
木槌の音がユウタの弁解を中断させる。
「早く罪人を牢に連れて行け!」
いきなり両腕を強く掴まれた。
「痛っ! 冷たい!」
骨が折れるような激痛に細胞が壊死するほどの冷たさ。
「痛いです。離してくだ……さい」
左右を見る。
指先まで覆う黒いボディスーツ。それは見慣れたCEFのスカウトスーツだった。
しかし二人とも顔がなく、一人は男性でもう一人は紫の髪をシニヨンに纏めた女性という事しか分からない。
ユウタは女性の方に助けを求める。
「サヤトさん。サヤトさんなんですよね。助けてください! 僕は牢屋なんて入りたくない」
のっぺら坊のCEF隊員はユウタの助けを無視して強い力で引っ張っていく。
「聞いてください! 僕はシェルターの人を殺してなんてない。何かの間違いなんです」
靴底が削れるほど強い力で引きずられ、両開きの扉の前へ連れて行かれる。
二枚の扉が手間に開くと、CEF隊員達はユウタを引っ張って真っ暗な空間の中へ引きずりこまれてしまった。
扉が閉まると、闇に包まれた視界に光が差し込む。
そこは人が三人横になって通れる廊下で、天井には等間隔の照明が並んでいる。
左右を確認しようとすると、両腕を強く引かれる。
鉄球を引きずりながら歩いて首を左右に巡らせる。
廊下に壁はなく黒い鉄格子がはめ込まれていた。
中には囚人服を着た人影が見える。よく見るとユウタも知っている人物がいた。
「あれは、怪獣仮面」
見るからに怖い怪獣のマスクを被った心優しいヒーローがいる。
「ヒーローキラーだ」
声に反応して、中にいる女子高生が睨みつけてきたので慌てて目を逸らした。
彼女はヒーローを騙る悪と戦う存在だったはずだ。
「正義星人ジャスターもいる」
地球人でありながら宇宙の平和を守るヒーローの姿もあった。
共通点は三人共ラノベや特撮のヒーロー達である。
「何で彼らが牢屋にいるんだろう……」
引っ張られながらユウタは考え、もう一つの共通点を見つけた。
「ああっ……彼らも僕と同じだ」
三人のヒーローは三人共、罪のない人の命を奪ってしまったのだ。民間人を戦いに巻き込んだり、共に戦ってきた相棒の命を。
CEF隊員が足を止めた。
立ち止まったのはある牢屋の前だ。
中は薄暗く、右側に弱々しい照明が付いている。
粗末なベッドが一つ照らされていた。
右手側の男性隊員が扉の鍵を開ける。その間に左腕を掴むサヤトに似たのっぺら坊に話しかけるも、全くの無視。
扉が手前側に開くと、背中を思いっきり押された。
「ウワッ!」
バランスを崩して埃の詰まった床に倒れこむ。
後ろから扉が閉まる音と施錠される音が、
「あっ、待って。待ってください!」
鉄格子越しに声をかけても二人のCEF隊員は反応する事なく離れていった。
「こんな所で一生過ごしたくなんてない! 出してくださぁぁい!」
ユウタの大声に反応するものは誰もいない。
しばらく助けを求めるも、誰も来ず、得られたのは喉の痛みだけ。
咳き込みながら照明に照らされたベッドに身体を預ける。
「僕は人を殺してなんかいない。街を破壊した事は認めるけど、誰も殺してないのに!」
「五月蝿いな。私の眠りを妨げるのは誰だ?」
突然、後ろから声を掛けられて振り向く。
自分がいる牢屋の照明が照らされていない部分。
そこに誰かいるようだ。
「私の唯一の楽しみを妨げるな」
闇に隠れて姿は見えないが、偉そうではあるが何処か諦めた口調と低い声から、中年くらいの男性のようだと見当をつける。
「貴方はここから出たくないんですか?」
ユウタは見えない人物に向かって質問した。
「出たくないかだと? 出られるものなら出たいさ。だがここに収監されたら永遠に出れないのさ」
影から衣擦れの音。寝返りを打ったのだろうか。
「私には夢があった。つまらない地球を脱出し、宇宙に出る夢が! それなのに、ヒーローを名乗る存在に邪魔されたんだ!」
ユウタはその台詞を何処かで聞いた事があった。
(確か、僕が最初に変身した時……)
「貴方は、もしかして反復讐伍……」
「ああ。よく知ってるな」
「それは僕が貴方を捕えたからです」
「どういう……お前。まさかあの白銀の金属生命体……なのか?」
闇は信じられないと言った様子で話しかけてくる。
ユウタに見えはしないが、闇から視線が突き刺さってくるのを感じた。
「そうです。僕が変身して貴方の企みを止めたんです」
「アーハハハハハッ!!」
闇が笑い出す。
「何が、可笑しいんですか?」
「そりゃそうだろう。私を捕まえた正義の味方が私と一緒の牢で永遠に朽ち果てていくんだからな!」
「僕はこんな所に一生いません! すぐ抜け出してみせます!」
ユウタは鉄格子に近寄ると、素手で何度も叩きつける。
「開けて。開けてください! 僕は何も悪い事なんてしてないんだ!」
拳から全力の体当たりに切り替え、鉄格子を破壊しようとするが、ユウタの身体は弾き飛ばされるだけ。
「出して。出してよぉ。僕は……」
「諦めろ。お前も私と同じく永遠にここにいるんだよ」
「嫌だ。僕は一生こんな所にいたくない!」
影が嘆息した。
「分かってないな」
「何がですか?」
「一生じゃない。永遠なんだ!」
影からオレンジ色の物体が飛び出し、ユウタに覆いかぶさる。
「いいか。ヒーロー。お前は罪を犯したと判決が出たんだ。永遠に身体が朽ち果ててもここにいるんだよ」
ユウタの黒い瞳が映すのは、けばけばしいオレンジの囚人服を着た人骨だった。
体毛も無く、肉は腐り落ち、眼球があった所には漆黒の闇が住み着いている。
「ヒィィ」
「アーハハハハハ。アーハハハハハッ」
ユウタの真上で髑髏が顎を鳴らして笑い続けている。
「やだ。こんな所にいたくない。嫌だ。離して。もう嫌だ。夢なら覚めてよぉぉぉ!!」
瞬間、ユウタにのしかかっていた力が消えたので、全身の筋肉を総動員して上半身を起こした。
―3―
「ワアッ……ここは僕の部屋……」
視界が見せるのは、自分のお気に入りのフィギュアが飾られた机のある自室だった。
「今の、夢か」
喉の渇きを覚えた所で、ドアがノックされて身体が驚きで跳ねた。
「ユウタ。大きな声聞こえたけど何かあったの?」
扉の外から聞こえたのはアンヌの声だ。
どうやら叫び声が部屋の外にまで届いたらしい。
「ユウタ。返事して。返事しなさい!」
アンヌの語尾が強くなる。どうやら本気で心配しているようだ。
夏でもないのに全身が汗をかいている。しかも土砂降りの雨を浴びたような量だ。
ユウタは替えの下着を用意する。その間もアンヌは声を掛け続けていた。
用意が出来て、向こうでアンヌが立っているであろう扉を開けた。
「ちょっと、返事しなさい。大丈夫なの?」
「うん」
ユウタはアンヌと目を合わせずに返事した。
「そんな汗かいて。本当に大丈夫――」
「大丈夫だよ!」
ユウタの叫びにアンヌは一歩後ろに下がる。
視線を下げているので足しか見えないが、今のアンヌの顔はきっと悲しみと驚きの顔料で塗り固められているだろう。
「……お風呂入ってくる」
そんな顔を見たく無くて、目を合わせないまま浴室へ向かうのであった。
―4―
お風呂に入って身体はサッパリしたが、心にこびりついたものまでは取れない。
用意された夕飯も食べずに、部屋着に着替えると何もする気が起きずにベッドに寝転がる。
「はぁ〜〜あ」
天井を見上げながら、何百回目の溜息。
オーパスにはサヤトからメールが新たに届いていたが、開かずに放置していた。
そのオーパスが振動する。一回、二回。どうやら着信のようだ。
(誰だろう。まあ出なくていいか。留守電になるし)
振動が止む。数秒後、再び着信。
ユウタは無視。
振動が収まるも、すぐに新たな着信を告げる。
「誰だよ。うるさいなぁ……」
電話を掛けてきたのはサヤトであった。
留守電になると一度切り、再度掛けてくる。
我慢比べに負けたのはユウタの方だった。
電源を切って無視するという手もあったが、怒られるのが怖くて出来なかった。
しかたなく、ベッドの上で起き上がり電話に出る。
「もしもし」
オーパスから聞こえてくるのは、刀のような鋭い声。
『もしもしユウタ君。夜遅くにごめんなさい』
「何か用ですか」
『ええ。メール送っても返事がないから。少し、心配になって』
「メールは見てます」
本当は一度も開けていない。
『うそ』
「嘘じゃ、ないです」
『メール見た時は、いつも返事返してくれたじゃない』
それは本当の事だった。図星を突かれて何も返せなくなってしまう。
「ごめんなさい。これから見ます」
『……ユウタ君。もしかして報道の事気にしてるの』
その一言でユウタの心臓に鋭い針が刺さったような痛みに襲われ胸を抑える。
『もう一週間以上経つのよ。気にしなくても大丈夫』
「でも、まだニュースや動画とかじゃ僕が街を破壊した映像がたくさん溢れてます。それに僕がシェルターの人を危険に晒したのは事実……」
『それがどうしたの』
「えっ、どうしたのって」
『侵略者や怪獣は私達の事なんて何とも思っていない。そんな敵と戦っているのよ。いつかは犠牲が出てしまうわ。それが遅いか早いかの違いよ』
「そんなのおかしいです。僕はヒーローになったんです。ヒーローはみんなの命を守る存在なんですよ!」
サヤトが溜息をついたのがハッキリとわかった。
『それは物語の見過ぎよ。架空のお話だから出来ることなの。現実にはそんな事、神でもない限り不可能なのよ』
ユウタが強く握りしめるせいでオーパスが震える。
「そんな風に考えていたんですか」
『ユウタ君?』
只ならぬ気配にサヤトも気づいたようだ。
「ひどいや。そんな風に考えてたなんて。結局僕の事も、そういう風に見てたんだ。子供のごっこ遊びみたいに思ってたんだ!」
『何言ってるの。貴方の活躍をそんな風に思った事なんて――』
「もう電話しないでください」
心臓を凍りつかせるような声が自分の喉から出てきた。
ユウタはサヤトの返事を待たずに電話を切ると、番号を着信拒否にし電源も切ってその辺に投げてしまう。
オーパスが音を立てて落ち、一瞬壊れたかと不安になるが、それも無視してベッドに突っ伏す。
そしてある決意を固める。
(もう、ヒーロー辞めよう)
と、心の中で誓っても晴れるどころか、どんどん曇っていくばかり。
その夜見た夢の内容は覚えていないが、とても恐ろしい思いをして飛び起きるのだった。




