#1 早く立って 怪獣がそっちに向かってる
身長七〇メートルのガーディマンが、同じくらいの高さのビルを巻き込んで背中から倒れていく。
ビルの壁面が内側に崩れ、窓ガラスが細かく散らばり床と共に崩壊して下に落ちる。
巻き上げられた土埃が暴風となって道路を走り、無人の電気自動車を吹き飛ばしていった。
崩壊したビルを枕のようにして倒れたガーディマンの耳に刀のように鋭い声音が届く。
『早く立って。怪獣がそっちに向かってる』
いつもは冷静なリィサ――サヤトのコードネーム――の声に焦りの色が混じっているのが分かった。
言われて、身体を起こそうとするが上手くいかず、頭しか持ち上がらない。
土埃が晴れた視界では、CEFの超兵器が、落花生に手足が生えたような怪獣に攻撃している。
バサルトとドーラ――ゲンブとアツシのコードネーム――の操る、蒼い長剣のようなブルーストークが機首からリームレーザーを放つ。
緑色のレーザーは一直線に伸びて怪獣に命中。
するが、弾かれて近くに建つビルを真ん中から切断してしまった。
蒼い長剣よりも小さい赤い鏃が二つ急降下していく。
リィサとマサシゲ――ハンゾウのコードネーム――が駆るレッドイーグルだ。
二機は機首にある四問のプラズマモータカノンを斉射。
一秒間で放たれた二百発以上のプラズマ弾が怪獣の黒い装甲に当たる。
しかし貫通はせず、青い火花を散らして弾かれたプラズマ弾は周辺のビルに無数の穴を開けるだけ。
一度上昇した二機のレッドイーグルは距離をとってから道路を四つ脚で進む怪獣をロックオン。
後部から飛び出す八つのプラズマホーミングレーザー。
二機合わせて合計十六の青いレーザーがまるで踊るように動いて怪獣に全弾命中。
だが、先程と変わらず全て弾かれ、周辺の道路を爆炎に包むだけだった。
CEFが時間稼ぎをしてくれている間に、ガーディマンはダメージから回復し、立ち上がろうと全身に力を入れる。
身体を起こそうと、道路に手形がつくほど強く左手をつく。
一緒にバスを潰してしまったが、今はそれを気にしている余裕もない。
関節が錆びついてしまったようにぎこちなく起き上がると、
CEFの一斉攻撃を物ともせずに、怪獣が後ろ足の膝を擦るようにに動かして体当たりしてきた。
高さ約五〇メートル全長約七〇メートルの怪獣が、立ち上がって動きの取れないガーディマンの胸板に直撃。
吹き飛ばされたガーディマンは受け身も取れずに背中から何度も転がってビルを破壊。
まるでボーリングの球のようにビルを数棟破壊したガーディマンは、落ちてくるビルの上階を眺めながら、つい弱音を漏らしてしまう。
「一昨日の怪獣より強すぎるよぉ」
ガーディマンの視界が落ちてきたビルによって塞がれた。




