第52話 模擬戦開始
大学生になりました。履修やら諸々で時間食いましたホンマ申し訳ない。
俺たちは運動場に集まり、準備運動を済ませて作戦の最終確認と準備を始めた。
「今回の作戦について、最終確認だが異論はないよな?」
異論は一つも出なかった。「勝つ気でやる。」クラス全体の雰囲気がそこまで達していたからだろう。約一週間と言う準備期間で作戦を練り、共に練習した俺たちの力は火野さんに届くのだろうか?いや、届かせる。火野さんという最強のハンターに認めさせる。
最終確認を終えた俺たちは円陣を作り、巴さんが掛け声を出す。
「絶対勝つぞー!」
「「おー!!!!!!」」
気合入れを済ませた俺たちは定位置に着き、開始の合図を待つ。
「制限時間は一時間。その間に私のHPを半分以上削り切る事が勝利条件だ。全員準備は……バッチリみたいだな。では―――」
緊張が走る。
「―――始め!!!」
「弾けて混ざる泡、発射!」
「アイスウォール!」
「フレイムウォール!」
開始の合図と共に火野さんの周囲に泡水さんにより白いシャボン玉が展開され、俺たち全員を囲むように冰鞠さんが生み出した氷の城壁と巴さんの炎のカーテンが形成される。
「紅蓮世界!」
火野さんの服の上から魔王のような鎧が現れ、どこからか取り出した大剣を地面に突き刺すと火野さんの周囲から波紋状に炎が広がり、まるで炎が世界そのものが俺たちへと襲い掛かる。だが、冰鞠さんと巴さんの城壁とカーテンが俺らの身を守るが、火野さんが初撃に放った全方位の炎攻撃で一瞬にして破壊された。
だが、破壊されたのは壁だけじゃない。破壊と同時に火野さんの周囲が爆発する。
「っ!?……これは粉塵爆発か!?」
火野さんの周囲を焦げついた灰色の小麦粉が煙となって囲み込む。あらかじめ、泡水さんには弾けて混ざる泡で小麦粉と火薬を原材料とした泡を作ってもらっている。これにより、火野さんの火力が高すぎる炎攻撃は封じることができる。
「行くぜ野郎ども!俺に遅れを取るんじゃねぇぞ!」
「「おう!!!」」
煙の中、ガロウ率いる切り込み部隊が先攻する。霧島は煙を少し取り込み肌の色を煙の色と同化させ擬似的な透明状態で火野さんに背後から殴り込むが。
「えっ?まじ!?」
「いい作戦だが、煙の動きで見破れるぞ。」
しかし、霧島の攻撃は片手で受け止められる。
「ハンターの仕事はクリーチャーを狩るだけではない。ZONEを悪用した犯罪者を取り締まるのも仕事の一つ、対人技能は必須技能だ。」
そう言い放つと同時に霧島を腕ごと放り出し、悠長に話しているところを奇襲しようとした、ガロウ、石田の攻撃を大剣の上に飛び乗って回避し、二人は勢いを殺すことができず、お互いにぶつかり合って横転する。
だが、いいカモフラージュができた。ガロウたちが攻めている間にシャボン玉を再展開。さらに俺も準備を始める。プシュ!っと缶を開けて一気にエナジードリンクを流し込む。頭の中に興奮剤と鎮静剤を同時に入れたかのような感覚が襲う。うん、やっぱりこれしゅごい。煙の動きで動きを読むのが容易になった気がする。これを常時できる火野さんはやっぱり化け物だ。
「キリエたちの方はどれくらい時間がかかりそう?」
「計算中……計算完了。残り75%、時間にして30分です。」
「了解。(ガロウ、そっちは腹の調子はどうだ?あと何分ぐらい稼げる?)」
「(こっちはまだ大丈夫だ。10分は余裕だが、火野先生の動き次第だな。)」
「(ガロウ君と同意見だ。まだHPには余裕がある。状況が悪化次第また連絡する。)」
「(了解。気を付けろよ)」
網玉の協力でクラス全員でのテレパシーによる会話が可能になってる。だが、混線するし、網玉というサーバーを仲介しているのでできる限り口頭で会話をするようになっているが、便利な機能だ。
「俺は餓えている……うおぉぉぉぉ!!!」
ガロウは両手、両足に闇を纏わせる。
「喰らい尽くしてやる。てめえの炎もなあ!」
ガロウは火野さんに猛攻撃を仕掛ける。殴り、蹴り、喰らい付いて行く。その一撃一撃が重く、そして鋭い。ガロウの身体能力は腹が減れば減る程により強力になっていく。ガロウは食べれば食べるほど腹が減るデメリットが付いた特別メニューを食べている。常人には死をもたらすほどに強力な飢餓状態を与える代わりに各身体能力及び、耐性を驚異的なレベルまで強化する。
「餓える猛者の拳!!!うおぉぉぉぉらぁぁぁぁ!!!!!」
激しいラッシュでガロウは正面から果敢に攻め立てる。バブにバフを重ね掛けした状態のガロウの闇を纏った拳は火野さんの魔王のような鎧の装甲を超えてダメージを与えていた。それを火野さんはガロウの猛攻を石田と霧島の相手をしながら対処していた。
「アイスゴーレムフィストォォ!!」
「スモークガントレット!!」
石田は右腕に冰鞠さんが生み出した氷の城壁の残骸をZONEで腕に纏わせ、霧島は煙を吸い込み右手に集中させ体積をを増やした両者の一撃が火野さんの両サイドから迫りくる。それらを迎え撃つように火野さんは、ガロウのラッシュの間を縫って地面に突き刺していた大剣を引き抜き。
「紅蓮斬・円」
火野さんの大剣の間合いに入っている三人が火野さんを中心とした天にまで昇る巨大な火柱に飲み込まれ、外へとはじき出される。霧島のスモークガントレッドによって停滞していた焦げ付いた煙は晴れ、火野さんは周囲の状況を一瞬にして把握する。
「なるほど、想定済みか。」
火野さんの視界の前に映っていた光景は、切り込み部隊全員を無事にキャッチし、服が少し焦げ付いていた戻さんの姿と、俺、ガマ、佐々木、東雲、巴、龍之介、アンディー、第二陣の白兵部隊だった。
「さーて、張り切りますか。」
「ワイの出番取らんどいてな」
「主役は私だからね?そこんとこちゃんと理解してんの?」
「俺ちゃん聞いてないんだけど!?」
「まあ、言ってないしな。作戦を立てる上で彼女がキーパーソンだからな。さあ、しゅごいのお見舞いしてやろうぜ!」
「しゅごいの?何でござるか?」
「すごいのってことでござるよ、東雲殿。」
星谷はエナドリでキマリ散らかしてるので、しゅごいんです。




