第112話 変容せよ大地 砕けよ結晶
正義の足元を中心に大地がクリスタルへと変異し始めた。地面は脈動し盛り上がり抉れ形を変えていく。そして、足元に違和感を覚えた俺は咄嗟に後ろに下がり距離を取る。その直後、俺が元々立っていた場所の真下からクリスタルの柱がまるで俺の体を穿つように聳え立った。あと数秒でも回避が遅れていたらまともに食らっていた。
「ガロウ殿、助太刀するでござ……」
佐々木は、俺に助太刀入ろうとするが、獅子舞へと変身した面太郎が行く手を阻む。
「こいつは俺の獲物だ!(佐々木は面太郎、キリエはそのまま莽朧の対処を頼む。)」
「承知。(だが拙者、あの変幻自在な戦闘スタイルを相手をするのは苦手でござるよ。莽朧殿の方がやりやすいでござる。)」
佐々木はそうサイコメトリー内で愚痴を溢しながらも、なまはげ面へと付け替え、日本刀のような鉈を振り回す面太郎の攻撃を躱しながら俺から面太郎を遠ざける。まあ、その気持ちはわかる。あの手数の多さ、変幻自在の能力がどの仮面から、いつすり替わり発動するかわからない。
「(佐々木じゃ莽朧相手だと、風のせいで手出しすらできないでしょ。)」
キリエはツッコミを入れつつ、右手の廻り撃つ黒金の盾で正面から吹き荒れるかまいたちを受け止め、左手をブラスターモードへと回転させ、風の抵抗を受けない光弾を発射し牽制する。
「(確かに、そうでござるな。莽朧殿の方は頼むでござるよ)」
キリエのツッコミに佐々木が苦笑混じりに認める。
「(それと、人数が3人減っている。既に校舎内に入られてる可能性が高い。校舎内に隠してある金庫には警備を配置してなかったんだよな?)」
「(うん。位置バレ防止のためにそうしてある。それに、場所を知ってるのはキリコちゃんだけ。)」
「(聞こえたなキリコ。お前と巴は校舎に入って侵入者を排除してくれ。)」
「(命令を承認。今度は頑張る。監視カメラ同期開始。)」
キリコの返答が簡潔に返ってくる。キリコの計算能力と監視カメラなら、侵入者の動きを予測して対処できるはずだ。巴の炎が加われば、校舎内の狭い空間でも有利に戦える。命令を伝え終えた俺はクリスタルの柱をぶち壊し、そのまま正義へと殴り掛かかろうとするが、砕けたクリスタルがそのまま弾丸のように俺へと襲いかかってくる。
「邪魔だぁぁぁ!!!!」
向かってくるクリスタルを拳で木っ端微塵に叩き割り、正義の腹へと一発入れようとするも、正義は体をわずかに傾けて避け、俺の拳が空を切る。正義はすました顔で俺の拳が届かない距離を保ちながら、地面をさらにクリスタル化させて足場を広げていく。
「ふん、獣のような力任せか。だが、そんな攻撃は予測していれば回避は可能だ。」
俺は歯を食いしばり、再び突進する。やつに近づこうと走ると、足元のクリスタルと化した地面から俺を突き上げようと柱が伸びる。追いつかれまいと走るスピードを上げるも、徐々にその距離は縮まっていき、最後には俺は背中から空中へと押し上げられた。
「ぐはっ……!まだまだ!」
「流石の耐久力だな。では、これはどう攻略する?」
そう正義が言うとクリスタルと化した地面を吸収し始めた。そして、やつの下半身はみるみると増殖し巨大化。まるでタコの足のような見た目へと変わっていく。気持ちが悪いと美しいが混合一体となって……はないか。まだギリ気持ち悪いの方が勝つ。
クリスタル化の影響で盛り上がった丘の上に着地し、正義のタコ足に殴りかかろうと接近するが、ヤツのタコ足の先がまるで拳のような形へと変わり、まるでラッシュのように打ち込んで来やがった。
「強引にでも近づいてやる!」
放たれる巨大な拳、もとい足を伝って俺は正義へと接近する。巨大化のおかげで人が走れるほどにはデカいくて助かった。
「デカくしたのが仇になったな!餓える猛者の拳!!」
闇を纏った拳のラッシュを打ち込みクリスタルの装甲を破壊していく。そして、クリスタルのその中心部に正義の姿が見えた。
「早々に嗅ぎつけるとは、流石の嗅覚だ。」
正義はそう言って巨体を回転させ、俺を振り払う。触手のようなクリスタルの足が高速で旋回し、風圧が俺の体を押し戻す。俺は爪を地面に食い込ませて耐え、跳躍してその回転の隙を突こうとするが、クリスタルの表面が鏡のように輝き、俺の姿を反射しながら新たな棘を伸ばしてくる。棘が俺の肩をかすめ、血が飛び散る。
「ぐっ……まだだ!」
俺は痛みを堪え、闇を纏った拳を再び叩き込む。拳が触手の根元を抉り、クリスタルの破片が雨のように降り注ぐ。装甲のひびが広がり、正義の表情がわずかに歪む。だが、やつは動じず、触手の先端を鋭い槍状に変形させて反撃。槍が俺の腹を狙って突き刺さってくる。
「甘え!!」
俺は体を捻り、槍をかわして触手に飛び乗り、闇の爪で表面を切り裂きながら正義の本体へ迫る。熱い闇の力が拳に集中し、次のラッシュを準備する。やつの中心部が近づく中、正義の声が低く響く。
「やはり、巨体では分が悪いか……少々荒っぽい手を使わせてもらう。」
次の瞬間、やつはクリスタル化を解除し、クリスタルの操作を解除した。操作を受けなくなったクリスタルは崩壊を始める。俺は引き換えし、その場を離れようとするが、上から落ちてきたクリスタルに押しつぶされ、地面へと叩きつけられる。
「ちっ……乱暴なことしやがる。」
クリスタルを押し除けて立ち上がると、目の前には正義が立っていた。やつは再び周囲をクリスタル化させ始める。俺は獣の嗅覚と勘を頼りに、クリスタルの奇襲を予測しながら再び接近を試みる。しかし、やつは今度は先の崩壊でバラバラとなったクリスタルを組み上げ、鳥のような飛行物体をいくつも作り、俺へと嗾けてきた。
「獣の力は認めるが、知恵無き獣では俺には勝てない。」
鳥は素早く、攻撃を当てられる気がしない。対処してもいいが面倒だ……あの手が使えるか。
「そうかよ。なら、もっと本能が赴くままに戦ってやるよ。」
俺は瞬間影移動を使い、近くの木陰へと瞬間移動する。次はクリスタルの影、飛行する鳥の影と次々と瞬間移動する。正義は目で、鳥で俺を姿を追うも、俺は徐々に瞬間移動の間隔を狭め、そしてやつらが完全に俺のことを追えなくなった次の瞬間に、正義の影へと移動する。
「間合いに入ったぜ。」
振り返りざまに俺はやつの腹に拳を食らわせる。クリスタルの装甲がひび割れ、衝撃が正義の体を震わせる。
「ぐっ……!」
だが、やつは腹に拳が入る直前に腹部分のクリスタルの装甲を分厚くし威力を最大限抑え込むが、クリスタル化していても、衝撃は通るようだ。俺は連続で拳を叩き込み、正義を後退らせる。拳がクリスタルに当たるたび、甲高い音が響き、破片が飛び散る。
「しぶといぞ……!」
正義の目が細まる。俺の攻撃が効き始めている。だが、やつの執拗とも言えるクリスタルの攻撃で俺の息も上がってきた。汗が額から滴り落ち、視界がわずかにぼやける。そして、正義はそれを察知したように、クリスタルを波状に変形させて俺を押し返す。地面がうねり、俺の足を絡め取ろうとする。俺は跳躍して避け、上空から拳を振り下ろす。
「くたばりやがれぇぇぇ!!!」
「これで終いだ。獣は獣らしく、檻に入っていろ!」
さっきの鳥どもが俺の周囲を取り囲む。そして、俺を包み込むようにしてそれは空中で球を作って、俺を閉じ込めた。脱出をしようとクリスタルの檻を殴り破壊すれども、破壊した箇所から徐々により強固になって再生していく。
「力任せでは、その檻から出られんよ。破壊した箇所から、より強固になって檻は再生する。無駄な体力を消耗したくはないだろう。」
「なら、一度に全てぶち壊すだけだ!」
深呼吸をし、息を整える。右腕に力を込める。
「黒条流・一式「破壊」!」
撃ち込んだ拳は、クリスタルの檻全体にひびを入れた。完全な破壊であれば、再生を始める檻だが、ひびを入れる程度であれば再生を始めねえ。そして、このまま変身してやつをぶっ潰す!体内の闇が沸騰するように膨れ上がる。
「ウォォォォォン!!!!」
闇が俺の身体を覆う。闇は徐々に身体を形成し、毛並みが漆黒の鎧のような光沢を帯びる。飢餓状態とも言えるような感覚が俺の心を支配する。爪が伸び、牙が鋭くなり、体が巨大化していく。フェンリルの姿が完成し、完全に砕けた檻の中で咆哮を上げる。そして、その咆哮は、檻とならずに俺の周囲を旋回するクリスタルの鳥どもを破壊していく。
「おいおい、とうとうガロウがオオカミ状態になりやがった。どうするよ正義隊長さんよお。俺達だけの戦力じゃ、こいつを倒すのには無理があるぞ。こっちは衛守のやろうで手一杯だし、面太郎も佐々木の相手をしてるで、加勢はできねえぞ。」
莽朧の声が聞こえる。やつはまだキリエと戦っているようだ。正義の表情がわずかに歪む。
「俺様達の目標はあくまでも狩高の旗の入手。無理に勝とうと思わなくていい。今頃、幸運児が旗を入手しているだろう。やつが帰って来た時点で俺様たちの任務は終わる。それまで耐えろ。」
終章がぁぁぁぁぁぁ




