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ZONE無しでもハンターになれますか?→可もなく不可もなし!  作者: 葉分
サバイバルフォレスト

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110/125

第110話 拠点襲撃は穏便に

 ミッション開始から1時間が経とうとしている。星谷たちが赤旗入手のために動き出した後、拠点を任された俺たちは、1日目の班に分かれてできることを行っていた。拠点補強、周辺警備、狩北に拠点の場所が割れている以上、いつ襲撃に来るかわからねえ。俺、キリエ、佐々木、巴の四人は、いつでも戦闘できるように待機しているが、万全の状態で待ち構えない限り、俺たちに勝機は無い。


 正門近くの校舎の壁に背を預け、俺は周囲に目を配る。木々が密集した樹海の向こうから、いつ敵の影が現れるかわからない。空気は湿気を帯び、かすかな風が葉ずれの音を運んでくる。俺の鼻は、そんな中でも微かな異変を嗅ぎ取ろうと集中していた。


「三上、未来視で襲撃のタイミングがわかると星谷が言ってたが、本当にわかるのか?」


 俺が三上に声をかけると、三上は正門を見つめながら、右目を閉じて集中している様子で答えた。


「だからこうして右目を閉じてずっと正門の方を見てるんだよ。遊斗の贋作昇華(リアリティ)で作ったマネキンと双葉さんの二重を行く者(ドッペルゲンガー)軍団に、夢原の紡ぐ鋼の糸(コンストレッド)で作ったワイヤートラップもあるしで、そう簡単にはここまでこれない。入口も正門だけに絞ったし、来るならここからだろうからね。」


 確かに、三上の言う通りだ。マネキンたちは遊斗の指示で、まるで本物の人間のように動き回っているし、双葉のドッペルゲンガーはその数を増やして警戒網を広げている。夢原の糸は見えないほど細く張り巡らされ、侵入者を絡め取るはずだ。だが、それでも油断はできない。狩北の連中は、俺の経験から言っても、一筋縄じゃいかない。


「まあ、そうだが。相手は狩北。とりわけ優秀なZONE持ちが多い。気休め程度にはなるだろうが、生半可な罠はすぐに突破される。連中は礼儀こそ正しいやつが多いが、何が何でも勝利をもぎ取ろうとする。南高のやつらより厄介な連中だ。」


 俺の言葉に、三上は少し顔をしかめたが、すぐに視線を正門に戻した。キリエが隣で腕を組んで、静かにうなずく。


「この二年間、他校相手に単独で相手をできていたガロウ殿が言うのなら、間違いないのでござるな。ガロウ殿が共に戦ってくれるのは、実に心強いでござるよ。」


「……頼りにしてくれることは嬉しいが、昔のことをほじくり返すのは止してくれ。あの頃は餓え荒れてたんだ。満足に食事もとれねえ、金もねえ。あるのは餓えだけだった。それで、お前らに迷惑をかけたんだ。迷惑かけた分の仕事はする。」


 俺が三上たちと話す傍ら、巴とキリエが話をしていた。


「ガロウ君。星谷君が来てからというものの、牙が抜かれたというか、内向的になったよね。昔の荒れ具合が嘘みたいじゃない?」


「まあ、そうね。別人とまでは行かないけど、性格は穏やかになった気がするわ。ガロウの事情を知ろうともしなかった自分が、今思うと愚かでしょうがない。星谷が入学してから随分と色々変わった。」


「それもそうね。冰鞠ちゃんとかも最近になって話すようになったし、星谷が来たからクラスが纏まりつつあるような気がするし……ところで、キリエちゃん。その星谷君とはどこまで行ったのかな〜?」


「ちょっ!?……あははは!!やめてくすぐったい!!」


「なんかオソロのネックレスつけちゃってさー気になりすぎるってー!」


「向こうは何やってんだ。」


「踏み込んではいけないでござるよ。」


 軽い談笑をしていると、正門を見ていた三上が驚いたように口を開いた。三上の声が急に緊張を帯び、周囲の空気が一瞬で引き締まる。


「見えた!……人数は7人、あと10分もしないうちにここに来る。」


「たったの7人!?これで私たちの拠点にカチコミしようとしてるの!?まさか、神楽坂もいたりしないわよね!?」


「いや、現状見える範囲だと神楽坂の姿は見えない。でも、カチコミメンバーを見るに戦う気満々というより、必要最低限のメンバーって感じかな。戦闘よりも、何か別のことをしようとしてるのかもしれない。念のため、正面以外にも警備を配置した方がいい。今の未来視でほとんどのストックは使っちゃったし、奇襲された時の為にも、網玉さんのサイコメトリーで思考共有をした方がいい。」


「承知。伝えておくでござる。」


「旗はもう隠し終えたか?」


「キリコちゃんがパスワード式の金庫作ってた。確かパスワードは10の10乗通りだったかな?」


「100億通りか。まあ、金庫ごと盗まれない限り心配はいらねえか。」


「ガロウ計算早ッ!?」


 キリコの金庫は、彼女の精密な計算で作られたものだ。パスワードの複雑さから、短時間で解くのは不可能だろう。俺は正門の方を睨む。時間はあと少し。狩北の連中が来る。


 やがて、樹海の向こうから影が現れたのは三上が話していた通り、7人の狩北生徒だった。俺達4人は、正門の前に待機して、やつらの動きを見張る。


「ここか……狩高の拠点は。」


 狩北の先頭に立つクリスタルのような青緑色のツンツン頭の男が口を開くと、遊斗のマネキンと双葉の二重を行く者(ドッペルゲンガー)が動き出す。マネキンたちはアクロバティックな動きで翻弄し狩北を包囲し、密集されたワイヤートラップ地帯へと追い込む。そして、ワイヤートラップが作動する。


「食らうんだーよ!半径20m贋作昇華(リアリティ)レーザー砲!」


「え、花京院!?」


 キリエのツッコミよりも早く、ワイヤーが遊斗の贋作昇華(リアリティ)によって本物へと近づいたおもちゃのレーザー銃の引き金を引く。コミカルな発射音と発光と共にレーザーが、狩北を取り囲むように発射される。しかし、狩北側は一切の動揺を見せることなく、ツンツン男以外はその場でしゃがみ込む。そして、そいつはレーザーが当たる寸前に体をクリスタルのような結晶へと変え、そこに当たったレーザーはまるで反射されたかのように発射元へと跳ね返り、おもちゃのレーザー銃諸共ワイヤートラップを破壊した。


「この程度か、口ほどにもない。」


 そう呟くツンツン男を今度はマネキンたちが襲い掛かろうとするも、突如として狩北を中心とした巨大な竜巻が吹き荒れ、辺りの木々をなぎ倒しながらマネキンたちを渦へと飲み込んでいく。そして、マネキンたちが一掃されると、台風の目の中にいる緑のメッシュが入った、やや長めの黒髪を持ち、目の下には隈のようなものがある男子が指を鳴らすと同時に竜巻が治まり、ツンツン男に話しかける。


「いくら集まっても、吹き飛ばされちゃ意味ねえわな。向こうは随分とこっちを警戒してらしいが、どうすんだ正義(まさよし)隊長さんよお?」


「構わん。このまま拠点に赴く。莽朧(もろう)面太郎(めんたろう)。露払いは貴様らに任せるぞ。」


 正義はそう答えた後に、指を鳴らした黒髪の男と橙色のウェーブがかかった髪に道化のような仮面を付けた男子に視線を送ると、莽朧は「へいへい。」と答え、面太郎は、コクリと頭を動かした。


 そして、マネキンたちと罠を軽々と突破した狩北は、正門へと近づいて来る。


「(どうする?全員で行く?)」


「(あの7人のうちの3人は非戦闘員。拙者はそれでも構わないでござるよ。)」


「(すまん、誰が誰でどんなZONE持ってたか覚えてねぇ。)」


「(えーっと、ネイビーのストレートヘアにヘッドホンを首にぶら下げた女子は佐藤静香(さとうしずか)ちゃん。ZONEが清聴せし聖域(サイレントゾーン)で周囲の音を消せる能力。髪色が白黒ツートンカラーのショートカットの男子が天童転弥(てんどうてんや)君で、ZONEが詳しくは知らないけど転送系の能力だったはず。)」


「(刈り上げの茶髪とそばかすに眼鏡、全体的に地味な服装をした男子が福田幸運児(ふくだこううんじ)。ZONEはわかんない。ホワイトボードに水性ペンを持った、テカテカオールバックに眼鏡とスーツを着た男子が捲舌叙(まくりじたのべる)。こっちもZONEに関しては不明ね。)」


「(さっきレーザーを跳ね返したのが水晶正義(すいしょうまさよし)殿。ZONE(ぞーん)は自身の体をクリスタルに変え、またそれを操る操作と肉体系両方の性質を持っていたでござる。竜巻を起こしたのが早風莽朧(はやかぜもろう)殿。風を操る旋風を統べる者(ウィンドマスター)というZONE(ぞーん)と前に名乗っておった。仮面を付けているのが溝口面太郎(みぞぐちめんたろう)、ZONEは付けた仮面によって効果が変わる異能系ZONE(ぞーん)でござるよ。)」


「(俺達の拠点にカチコミを入れるには戦闘系のZONEが少なすぎる。連中は拠点を襲撃して旗を盗みに来るものだと思っていたが、何か他に目的があるのか?探りを入れてみるか?)」


「(向こうがその気かどうか確かめるためにも、ここは一旦拙者らが出るでござる。巴殿、準備の方はよろしいでござるか?)」


「(任せて、火加減ばっちりよ。)」


「(承知。)」


 サイコメトリー内会議を終え、佐々木は刀を抜き担き、巴は両手に炎を纏わせ、威嚇するようにゆっくりと二人は狩北の方へと歩いて行く。そしてある程度距離が近づいたところで佐々木が狩北を静止させるように声を荒げる。


「そこから動く出ないぞ狩北。そこより先に動くのならば、其方らの首を斬り落とす。」


「まあ待て。俺様たちは戦いに来たのではない。交渉をしに来たのだ。」


「交渉か、笑止。其方ら狩北は、総合的な戦力においては三校の中で最も高い。その狩北が何故(なにゆえ)、拙者ら狩高に交渉を求める?返答次第では、首を斬り落とす。」


「端的に話そう。貴様らの旗を頂く代わりに、サバイバルフォレストで今後一切の干渉をしない。それが交渉の内容だ。」


「……(と言ってるが、どうするでござるか?)」


「(当たり前でしょ。こんなこっちにデメリットしかない交渉なんて、受けるもんですか。やっちゃいましょ!)」


「……やはり、其方らの首を焼き斬り落とす。」


 佐々木の刀身に炎が灯る。そして、佐々木は炎が纏った刀をそのままに、居合切りのような姿勢を取る。あの姿勢に構え方……どこか見覚えがあるような。


「模倣剣「炎描く居合軌道(りめいんばーんらいど)」!」


 そうだ!星谷の炎描く居合軌道(リメインバーンライド)だ。だが、星谷と決定的に違うのは範囲の広さと速さ。星谷のやつは片手剣だからそこまで範囲はないが、佐々木の刀身の長さは星谷のやつの倍近くある。そして、圧倒的な居合の速さ。星谷の炎描く居合軌道(リメインバーンライド)より数段早い。おそらく再現するにあたって模倣剣「居合一閃」と「飛翔斬」を使ってんのか?


 放たれた燃える飛ぶ斬撃は凄まじい速度で正義へと迫る。


「これが狩高の迎撃か。中々面白いことする。面太郎。」


「……」


 面太郎はまるで変面ショーのように素早く仮面をひょっとこ面へと切り替え、狩北の先頭に立つ。佐々木の放った炎描く居合軌道(りめいんばーんらいど)は面太郎にぶつかった瞬間、簡単に打ち消された。そして、さらに獅子舞の仮面を被った面太郎は、獅子のような俊敏な動きで佐々木へと襲いかかる。


「くっ……獅子は専門外でござる。」


 佐々木の刀に獅子が噛みつき離さない。


「佐々木君!」


 巴が咄嗟に佐々木を援護しようと火炎弾を飛ばすが、急な突風により軌道が逸れ、地面へと着弾する。そして、空中に浮遊する莽朧が、まるで大鎌のような形に圧縮された空気放ち、巴を静止させる。


「おっと、手出しはさせないぜ?まあ、こっちの話も聞けって。俺たちはお前らに現状敵意は湧いてねえ。お互い、ここは穏便に行こうぜ?なあ?」


 莽朧の言葉に、俺たちは動きを止める。


「莽朧の話す通りだ。俺様たちは交渉しに来た。敵意はない。」


「(ガロウ、話だけでも聞く?)」


「(ああ。だが、内容がアレな以上受ける気はない。現状向こうは俺たちの人数を把握していない。交渉は今この場にいるメンバーと、追加でキリコを加える。残りは校舎内で待機だ。)わかった。詳しい内容を聞こう。」


 こっちが了承した態度を示すと、捲舌叙(まくりじたのべる)が前に出てくる。


「では、お互いが納得できる良き交渉をしましょう。」

首斬りbot佐々木


描きたいの書いてたら4600字行ってた

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ひょっとこ防御系まじ? うわなんか名前が話す系の能力者すぎる…交渉怖…
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