EX10 ラグ・ソルベの歪んだ思慕 (正史)
ゲーム本編 つまりミサが武闘派じゃなかった場合のお話
森での事件以来、ミサ様は変わってしまった。
「ラグ、こっちよ。」
私のことを先導して歩くようになったし、少しでも私があゆみを遅くすると怯えたように近づいてきて額に手を当てて熱を測ったり、身体をまさぐってケガがないかを確認してくる。
「うん、大丈夫ね、でも無理をしちゃだめよ。」
「おおげさですよ、お嬢様。」
苦笑しつつ私はニンマリと緩みそうになる頬に力を籠める。ミサ様には他意はなく純粋に私のことを心配しての行動だ。まるで出会ってばかりのころのようだ。
「なら、いいけど。」
だが心配そうに私を見上げる瞳にどこか違った色を感じてしまう。そう男として見られている。年頃になり姉弟のようなスキンシップは自然と減り、私は従僕としてミサ様はソルベの姫としてふるまうことになり、自然と適切な距離になっていた。
「じゃあ、行こう。今日は魔法の特訓だから。」
そう聞いてチクリととげが刺さる。ミサ様が魔法への忌避感を克服してその才能を伸ばそうと努力するようになったことは喜ばしい。ミサ様がただ美しいだけと侮っていた有象無象どもは驚き恐怖する顔は見ものだった。同時にそれはミサ様とトリダードの糞野郎との時間が増えてしまうということになる。最近ますます美しさに磨きがかかり、魔法の才能を開花していくミサ様の魅力に魅了された愚か者は多い。
だが、私のようにミサ様の近くにいることを許されているのは私だけだ。幼いころからミサ様とともにあり、ミサ様を守るためなら文字通り命を投げ出すことすら厭わない己の在り方が誇らしい。
ミサ様を守るのは私だけでいい。
「どうしたの、ラグ。」
「いいえ、少し考え事をしていました。」
再び心配そうにこちらを見上げるミサ様から香る花の匂い。抱きしめたくなるような気持ちをぐっとこらえる。まだその時じゃない。
今回、私は死ぬところだった。ウルフの出現のさい有象無象の生徒を盾にするだけでは足らずミサ様が魔法を発動してくださらなかったら私はこの場にいないだろう。うん、それも良かった。そうすればミサ様の中に私は一生残っていただろう。それもいい。きっと一生かけて私を思い、涙を流してくれただろう。
それでも私は生き残った。ギリギリで発動したミサ様の奇跡の魔法はあのウルフたちを氷漬けにして私のことを守ってくれた。そう、これは運命だ。あのとき、あの夜に感じたミサ様を守るという私の使命。それを守れと世界が言っているのだ。
「心配しなくても、もう私はどこにも行きませんよ。ミサ様。」
隣に並び歩くミサ様に顔を近づけてそっという。
「何があろうとも、貴方のそばにいて、貴方を守ります。これまでも、そしてこれからも。」
「もう、そういうのはファルベルトさんに言ってあげなよ。」
顔を真っ赤にしてそういうミサ様。ああ優しい。無様に気絶したあの役立たずのことすら心配するとは。
この人が欲しい。この人に笑って欲しい。私にだけ。
この人の愛が欲しい。この人に愛を捧げたい。
こんなにも焦がれる気持ち。だがそれを伝えるのはまだだ。ミサ様が私を信頼し、依存し、いるのが当たり前になったとき、すべてを告げよう。
父の名を知っているか?父はソルベの兵としてミサ様の生活を守るために死んだと言ったら、この人はどれほど私に罪悪感を感じて、愛してくれるのだろうか。
大丈夫です。貴方はそのまま美しく、気高くいてだされば。
掛かる火の粉は私が追い払いましょう。
憂いは私が払いましょう。
だから・・・
正史版のラグ君がアレになってきた。
正史ラグ・ソルベ 崇拝から執着からなり、父の死というカードを切ってミサの罪悪感に漬け込む。
改変ラグ・ソルベ 実父の生い立ちを知り、ミサとともに死を乗り越えたからこそ、実父の人生にあこがれている。




