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乙女ゲームの正統派ヒロイン、いいえ武闘派ヒロインです。  作者: sirosugi
「花告げの日々」

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62 ミサ『花告げの日々』 男子寮攻略編2 近衛先輩たちががんばった。

急なバトル展開。

「さすがなだ、一年生では相手にならなかったか、さすがだな。」

「いや、木刀を失っている、最低限の役目は果たしているんだ、1年生としては素晴らしき戦果だ。」

「野郎ども、1年が意地を見せたんだ、俺たちで止めるぞ。」

「おおーーー。」

 思った以上の健闘に感動しつつ、登った先の3階。待ち構えていたのはいつもの人たちだった。

「うわ、残念。」

 予想はしていたとはいえ、いつもの暑苦しい人達が相手だというのは期待外れだ。

「ぐう、常日頃があれだから仕方ないとはいえ、ミサ嬢それは舐めすぎだぞ。」

 ヘイルズ先輩が悔しそうにうめくが先輩たちの装備も下の階と同じ大楯に訓練で使っている木刀なので面白味がない。むしろ訓練のときのようなバリエーションがない分、面白味にかけるなあ。

「とりあえず、新入生が3人で立ち向かったのに、自分たちは10人掛かりってのはどうなんですか?」

 がたいのいい先輩が3人並んで盾を構えればそれだけで廊下がみっちみっちである。それが3列と一番後ろで指揮を執っているヘイルズ先輩。出会ったときのようにいの一番に特攻してくるようなことはなくなったとはいえ、これはちょっとあれだ。

「芸がない。」

「だが、確実だぞ。武器なしで我らを突破できるかな?」

 にやりと笑う先輩たち。うんまあ目的のために手段を選ばないことや見てくれを気にしないことは評価できる。そのあたりは1階や2階にいた学生たちよりも実践的で強敵だ。

「課題ができました。」

 ならば真っ向から挑もう。そして取り出すのは1階で奪った柔らかい布だ。あるだけ拝借しておいたので木刀に巻いていた分以外もそれなりに残っていたそれを両足に巻き付け、次に両手を保護するように巻き付ける。

「うん、いい感じ。」

 グーパーグーパーして感触を確かめてから私は不敵に笑う。私が準備をしている間、それを見守っているだけだった先輩たちはそこで初めて致命的なミスに気付く。

「しまった。あれだと。」

「容赦なく、殴れますわ。」

 素手と武器の違いは間合いと耐久性にある。武器の方が当然間合いが長いし、拳は殴れば傷むし交換が効かない。手甲やグローブもいいけど木刀のほうが替えが利く。

 ただこの狭い立地なら間合いはそれほど関係ないし、この布ならそれほど手を傷めない。

「行きます。」

 しゃがんだ体勢から飛び跳ねるように近づいて先頭の1人の持っている大楯の真ん中に拳をふるう。

「へっ、うおー。」

 慌てて構えた大楯はそれだけで重量がある。だからこそ構えているときはそれなに集中力が求められる。緩急をつけて不意打ちすれば面白いくらいしびれるのだ。

「一つ。」

 盾が取りこぼされていくことに先輩たちが驚く中で華麗にターンを決めて裏拳気味の一撃。

「二つ。」

 インパクトの衝撃を盾の持ち手にひびかせる。タイミングと勢いが難しいけど柔らかい素材なのでこちらの手が痛むことはない。今度は足だ。

「三つ。」

 柔らかい盾の正面に膝をぶつける。ボフっとした柔らかい音とともに先輩は盾をおとす。

「な、なんだこれ。」

「ば、化け物だ。」

「魔法だ、魔法を使っているんだ、気をつけろ。

 失礼だな。そんなことよりも迎撃しなさいよ。

「四つ。五つ。」

 盾とともに崩れ堕ちる先輩たちの間を縫うように進みながら二列目も切り崩す。

 ちなみに魔法は使っていない。これは浸透系という技の一種だ。打撃のポイントやタイミングを意識して放つことで衝撃を相手の持ち手に伝えたり、皮膚を超えて内臓にダメージを与えたりする技の一種だ。ソルベの兵士長の中にはこれが得意で模擬戦で嫌われている人がいる。武器同士の戦いでは圧倒的に有利に持っていけるが、難易度が高く私も拳でしか再現できない。

「六つ。」

 自信は半々だったけど、2列目を終えたタイミングで割と感覚はつかめた。

「7つ。」「8つ」「9つ」

 正面からの正拳突き、えぐりこむような左フックからの反す肘にによるコンビネーション。狭い廊下で複数の相手を制圧するには十分な威力だ。

「あっやべ。」

 ただ無理をしたせいで左ひじが少し痛い。うんこれはカバーなしでは連発できない。

「くっ、やるな。だがたとえ1人でもここは通さな。ぐはー。」

「10。」

 顎を打ち抜く右ストレートでフィニッシュ。脳を揺らしただけでいい感じに無力化できるし、腕もあまり傷まないいい技だ。

「ご協力ありがとうございました。おかげで新しいスタイルが思いつけました。」

 倒れるヘイルズ先輩をすり抜けて振り返ると先輩たちは痛そうに腕を抱えて蹲っていた。うん、痺れ系が強すぎた。あれって慣れるまでは動けないんだよねー。

「お、お見ごと。」

 それでもこちらの動きを見ていたこと。そして対応しようと次を考えている姿勢はさすが先輩たちだ。きっと次は通じないだろう。

「では、先にへ行きますね。」

 再戦への期待を込め、改めて礼をする。地味に痛む左ひじは悟らせないが、先輩たちも侮れない。

「ははは、今度は負けませんよ。」

 引きつりながらも答える先輩たちは立派だったと殿下に伝えよう。 

中国拳法なボクシングスタイルの確立。

さて、次の門番は

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