EX10 メイナ・ラシェードの驚愕
頼れる先輩 メイナ・ラシェードさんの正史です。
ラグ君はリタイアしてしまったルートの続きです。
魔法というのは、一部の才能ある人間によって引き起こされる奇跡。というのは過去の話。長い年月の積み重ねと研究により生み出された理論と詠唱のイメージ補助によって魔法は広く広がった。
王国に置いてその立役者といえば、ラシェード家とトリダート家だろう。物理や化学といった要素を理解し魔法に取り込んだラシェード家、詠唱やイメージを体系化し優れた魔法運用を生み出したトリダート家。それぞれの家の子息であるメイナとマイルと言えば学園始まって以来の才媛であると言われいてる。
その二人をして目の前の光景は異常なものだった。
「すばらしい、これは。まるで女神だ。
「異常ですね。」
トリダートは陶酔した顔で、メイナは怪訝そうな顔で感想を述べる前に広がっているのは、人間大の氷柱であった。向こう側が見えるほどに高い透明度に、離れていても感じる冷気。なのにそれは雪のようにはかなく花弁が散る様にはらはらと崩れていく。
「ど、どうでしょうか?」
それを作り出した人物は、その魔法のような子だった。凛としたたたずまいに輝かんばかりの容姿。ソルベの花と称されるミサ・ソルベの美しさはトリダートの言う通り、まるで女神のようであった。だが、それが生み出す魔法はあまりにはかなく残酷だ。
「瞬間的な氷漬け、それにともなって中身と一緒に崩れていく。こんな即死級の魔法が存在するとは。」
崩れていく氷の中にあったはずの椅子がその存在ごと崩れていく。
「おそらくは瞬間的に氷漬けにされたことで組織が破壊された。それとも椅子ごと氷に作り変えたということでしょうか?」
崩れとけていく破片を見てもメイナには詳しくわからない。いや、わかることを拒否しているのではないだろうか。
「すごいな、圧倒的な才能だ。これほどの氷の魔法は見たことがない。さすがソルベの魔法だ。ミサ君、君には才能がある。これはもっと伸ばすべきものだ。」
手放しで賞賛するトリダート。目が曇った彼にはこの魔法の異常さを理解できていない。いや、彼もまたわかることを拒否しているのではないだろうか?
「4家の魔法も基本的には、基礎の性質変化の応用で、それらは使い手のイメージに依存している。ミサさんは、使える魔法はこれだけという。」
ブツブツと言いながらメイナは魔法を考え整理する。そして、これが致命的なイメージのバグによるものだと結論をだす。
「きっと生まれて初めて出会った魔法が原因。一体どんな魔法を見たというの?」
メイナの興味は魔法だけだ。親しい友人もいなければ婚約者であるトリダートも学びの友と思っていた。
「ふふ、任せろ。俺がミサ君を一流の魔法使いにしてやる。」
ただ欲望に濁った眼をしているトリダートに対してその思いも薄れていく。
メイナは魔法が好きだ。その原理を調べ新たな魔法や効果を生み出すそれが喜びだ。
だからこそ。
「トリダートもおちたものね。」
魔法の指導、後輩の指導。そんな言葉で隠しながら隠しきれてないトリダートの下心に軽蔑しか生まれなかった。
正史 メイナ・ラシェード
友人がおらず婚約者であるトリダートとの関係も希薄で引きこもり気味のオタク学生、ゆえにミサの魔法について気味が悪いと思いつつその原理に興味をもつ。
→
ライオネル殿下と関係が良好なマリアンヌとの出会いによいり社交性がアップ。ミサとの出会いもあったことで後輩として可愛がっている。また周囲の女性陣の影響で婚約者であるトリダートに対しても割と図太く付き合えるようになった。




