表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームの正統派ヒロイン、いいえ武闘派ヒロインです。  作者: sirosugi
学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/195

54 ミサ 1年生 冷蔵庫の開発に関わる。

魔法と物理学を組み合わせると冷蔵庫はわりと簡単に・・・

 ソルベの魔法といえば「氷」である。冬の厳しい寒さと雪景色を見て育ったソルベの人間は感覚で魔法を氷に性質変化できる。でもそれはソルベ固有のものでなくラグや、母様のようにソルベの地で生活をすると自然と魔法をイメージできるようになる。というのが私の認識だ。

「形や重さはイメージ次第ですね。実際に触ったことのある武器とそれに最適な動きをセットにしている感じです。」

 そういって生み出すのは素振りようの剣。透きとおった氷でありながらそれなりの密度と重さをイメージしたそれは、鉄の塊と変わらない重さがある。次に生み出すのは氷の花、ただこれは作ったそばから溶け出してしまう。

「武器とか慣れているものは簡単なんですけど、ちょっとした小物とかデザインを意識すると時間がかかるんですよ。」

 その所感に対して、聞いていた人は難しそうに首を傾げ、その後にありえないと話す。

「魔法はイメージですけど。理論や理屈、過程を理解することで、イメージが明確になります。だからこそ、ミサさんの魔法はかなり特殊な部類ですよねー。」

「便利だからいいんじゃない?」

「小難しいと嫌煙しないで詠唱をしたらいい。」

 メイナ様とローちゃん、そしてなぜかいる性悪眼鏡ことトリダード先輩だ。

 ことは私の魔法に興味をもったメイナ様と話していたことに始まる。私は氷の魔法は得意、それこそソルベでも一番だと自他ともに認められている。その代償なのか他の性質変化はほとんど使えない。そのことを相談したら、逆にどんな風に「氷」を使っているか説明を求められていると、近くにいたローちゃん、メガネ先輩も話にはいってきた。

「温度変化という意味では、風と水でも可能です。結果として水が氷るという現象は起こりますけど、ミサさんのように自由自在に氷漬けにしたり、氷の形を作るのは珍しいのは確かですね。」

「それだけの魔法に特化してしまったからこそ、ほかの基礎魔法が苦手なのかもしれないな。恐らくは感覚で魔法が使えるからこそ理論的に魔法を発動することが難しいのだろう。おまえ、初めて魔法を発動したときのことを覚えているか?」

 私も自分の魔法の特異性は理解しているつもりだったけど、魔法の大家であるお二人にはさらに不思議な物に見えるのだろう。

「たしか、母様がお手本で見せてくれた、氷魔法を真似したら、なんかできました。」

「「「ありえない。」」」

 うん、それもわりと言われてます。

「これは致命的だな。なまじ才能があった分、魔法を理論的に使えないのは確実だ。」

「氷の魔法そのものが便利すぎるから、困ることはないでしょうけど。まあそれを言うと、魔法の才能自体が貴重なんですけどねー。」

「なんかミサちゃんらしいと思うわ。」

 さんざんな言われようだが、少なくとも私はこれと付き合っていくしかないらしい。

「ねえ、こうなると逆にきになるんだけど。氷って普通はどうやって作るの?」

 そんな決意をしている間にローちゃんの興味がそこに変わる。

「ええっと、単純なのは、水を冷やして凍らせるとかですかね?」

「水で冷たい水を用意して、風や火で熱を奪うというのが一般的だな。塩なんかを混ぜると早くできる。」

「なるほど。やっぱり色々手間がかかるのよねー。そろそろ暑くなるからミサちゃんみたいに氷がたくさん作れたらいいのに。」

 ローちゃんは私を抱きしめながらそんなことを言う。

「っふふ、冷たくて気持ちいいわー。」

「私を冷房にしないで。」

 いやいやと言いながらもローちゃは愛でる気持ち強くて嫌じゃない。むしろいい香りがして心地よい。

「おい、一応男女だから、気を付けろ。」

 トリダード先輩がやんわり止めるが、気づくとメイカさんも抱き着いている。

「ううーん、たしかにこのひんやりとした抱き心地はこれからの時期に恋しくなりそうです。ミサさん、こんどお泊り会をしましょう。」

「今の話を聞いたあとだと遠慮したいんですけど、楽しそうです。」

「お前ら、のんきだな。」

 流石にトリダード先輩が抱き着いてきたらしばき倒しますよ。

「ああ、そういえば風で冷やす方法として最近面白い方法が発見されたんですよねー。」

 私の頭をなでながらメイナさまは何かを思い出したのか、手近にあった瓶をトリダード先輩に要求して、魔法で水を半分ほど入れる。

「今、瓶の中には水が半分と空気がありますよね。これを風魔法で、あっマイル様お願いします。」

「減圧でいいか?」

「はい、せっかくですから、お二人にも見せてあげましょう。」

「ふん、高等魔法だから勉強しておけ。」

 そういってトリダード先輩は偉そうに鼻を鳴らして瓶に手をかざす。すると瓶の中から風が吹き出しやがてとまる。

「今、瓶の中は空気がない真空の状態です。すると。」

 何もしていないのに、水がぼこぼこと泡立つ。それは火にくべてお湯を沸かしたときのようだ。

「触っても大丈夫ですよー。」

 言われて恐る恐る瓶を触ると、多少熱いが熱湯ほどではない。

「水というのはですね、普段は空気によって閉じ込められているです。温めると水の力が強くなって水は飛び出すことができます。お料理なんかでお湯を沸かすのはそういうことですね。」

「だが、今はその空気がない。だから水は常温でも飛び出すことができる。そしてそれをさらに追い出すと。」

 解説を聞きながら、トリダード先輩の魔法でさらに瓶の中の空気が吐き出される様子をみていると、やがて、水は泡立つのをやめておとなしくなっていく。

「水が空気に逃げるさいにはかなりの熱が逃げるみたいでして、このように減圧、空気を少なくするとどんどん熱が下がって。」

 言いながらメイナさまが瓶を指ではじくと、ピシッと音を立てて水が凍った。

「すごいわ、魔法で冷やすよりかなり早いし、効率的じゃない。」

「まるで、魔法ですね。」 

 驚く私とローちゃんに、「いや魔法だよ。」とトリダード先輩が突っ込むが、それは気にしない。

「ちょっと前まではソルベの山から運び込んだ氷とか雪を魔法で保管したり、冷やしたりしていたんですけど、最近になってこの方法が発見されたんですよー。」

 これは画期的な発見だ。氷や雪がなくても氷を作ることができるなら、王都で「ジェラート」を広めることも夢ではないかもしれない。

「すごいわね、さすが学問の二大貴族ね、勉強になるわ。」

「それほどでもー。」

 素直に賞賛に値することだが、メイナ様もトリダード先輩もいつも通りだ。発見した当事者じゃなくても再現できる時点ですごいのに謙虚な人たちだ。

「ねえ、これって逆に空気の力を強めたらどうなるの?」

「はい?」「うん?」

「ああ、なるほど、空気を減らしたら水が氷るなら、逆に空気で圧縮するってことですね。」

「そうそう、香水とかも成分を凝縮したり希釈して作るから。それの応用でできないかしら?」

 ローちゃんは化粧品とか薬品の分野ではかなり造形が深い。だからこその発想だろう。

「そうなると容器の高度が問題だな、水を空気で包むというのはかなり高度な魔法だ。」

 トリダード先輩が悔しそうに眼鏡をくいくいするが、水だけを保管するのはたしかにむずかしい?

「あっだったら氷で作りましょうか?」

 物は試しと氷の魔法を発動して、瓶を作る。できる限り透明で頑丈な物。

「あっ、ミサちゃん口の部分は大きくお願いします。」

「はい。」

 そんな注文を受けつつできたのは円筒の形の氷の瓶。落としても割れないようにかなり頑丈なものにした。

「この透明度で、この硬さって、便利だなおい。」

 コンコンと瓶の方さを確認しながらトリダード先輩が呆れているが、メイナ様はさっさと水を入れてしまう。

「さあさあ、マイナさま、お願いします。」

「減圧の逆だから、加圧といったところか、少し待て。」

 やったことのないことだったらしくトリダード先輩はしばし腕を組んでイメージを固めたのか、手をかざす。

「おい、氷の硬さは維持できるか?」

「多分、とりあえずいきなり割れないようにはがんばります。」

 言われて私は氷に意識を集中して硬さを維持する。

「よし、やるぞ。」

 言葉とともに魔法による圧を感じる。かなりの力が水と瓶にかかっているのがわかる。でも金属を割るほどじゃないかな。

「圧を上げていくぞ。」

 まだ上があるらしい。私も気を引き締めて氷を維持する。

「あら、水が減っているわ。」

「パンとかを握りしめて小さくしているときみたいですねー。」

 見学している二人はのんきなものだけど、やっている私たちはヒヤヒヤものだ。多分大丈夫だけど、気をぬくと瓶が内側から割れてしまう。

「これは金属でやるべきですね。鉄なら熱も逃げるかもしれまん。」

 メイナ様は私が感じている熱にも気づいているようだった。実際氷の表面がダラダラと溶けている。氷に熱湯を注ぐとこういうことがあるけど、水は常温だったはず。

 そのまま5分ほど圧力を加えていると、やがて、水は、

「凍っているわ、瓶と一体化しているみたい。」

 もともとそういうものだったと思えるほど自然に水は氷の瓶と一緒になっていた。

「なるほど、空気の力で水を押さえつけると固めることができるんですね、たしかにねんどを焼き固める方法もあるわけですし、これは興味深いです。」

「しょ、消耗が激しい。あらかじめ冷やしておくか、違う液体でやるべきだな。」

 汗をだらだらと垂らすトリダード先輩と私はそこでハイタッチをした。うんすごい達成感だ。

「お二人ともお疲れ様です。これは、大発見です。とりあえず、もう一度いいですか?」

「えっ?」

 それは私だったのか、トリダード先輩のだったのか、驚きに目を丸くしたのは私たちだけだ。

「そうだ。前に商会で仕入れた薬品の中にすぐに蒸発しちゃう液体があったからもってくるわね。」

 新たな商品の可能性にローちゃんもノリノリでわたしたちに逃げばはなかった。

 その後、何度も実験を繰り返し、圧縮、凝縮、膨張、蒸発という理論を通して、画期的な氷製造のシステムが出来上がるのだが、その過程の苦労は機会があったら語りたいと思います。

真空状態だと、常温でも沸騰と凍結が起こるのは理科の実験。加圧による実験は冷蔵庫などを冷やすためにフロンガスとかで行われている過程をファンタジーの要素でゴリ押したものなので実現は難しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ