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乙女ゲームの正統派ヒロイン、いいえ武闘派ヒロインです。  作者: sirosugi
学園編

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EX9 ラグ・ソルベ バットエンド

 モブ(アマンゾ)視点で描かれる正史版バットエンド

 傭兵稼業をしていると時々とんでもない光景に遭遇することがある。

「な、なんだこれ?」

 救援の狼煙を見て慌てて駆け付けた先にあったのは氷で覆われた森だった。夏も近いというのに真冬のように冷たく分厚い氷で囲まれた木々と地面、ウルフたち。白く不透明な氷で囲まれた森は最初から氷でできたようにも見えたがところどころで露出している地面やウルフたちの頭でなんとか現実であると認識できた。本来ならばこの森にいるはずがないウルフたちの存在などどうでもいいと思うほど幻想的で恐ろしい光景だった。思い出すだけでも身震いするほどだ。

 そして、そんな地獄のような光景の中心で、1人の女の子が蹲っていた。生命を感じない光景の中でその子だけが泣き叫んでいた。

「ラグ、ラグ、お願い目を覚まして。」

 女の子の前には顔を真っ青にした男が眠っていた。恐る恐る近づけば女の子は血だまりの中にいた。

「ラグ、ラグ、ねえ、冗談だよね、起きてよ、起きてよ。」

 がくがくと女の子は男をゆするが、その腹は何か鋭いもので引き裂かれたのか鎧はズタズタになり血が流れ切っていた。

「お、おい大丈夫か?」

 傭兵稼業をしていれば死体に遭遇したことは何度もある。それこそ死にかけの人間やバラバラに引き裂かれた死体をみたこともある。ただ、この異様な光景を前にそんな俺の声は震えていた。

 そいつは死んでいるぞ。そう言えたらどんなに楽だったろう。ただ泣き叫ぶ女の子にそう声をかけることはなかなかできなかった。そして誤魔化すように視線を泳がせれば倒れているのは男だけじゃなかった。片腕がもげた盾持ちの男に、顔の半分がかじられた女の子。おそらくは3人ともウルフにやられたんだろう、なかなかにえげつないやられ方をしているが、魔物と遭遇した子どもの命運なんてそんなものだ。

「いや、まて。じゃあこれはなんだ?」

 ウルフがこの森に現れるなんて、今までなかった。少なくとも俺が校外学習の護衛を引き受けるようになってからウサギとカエルぐらいしかいない。それは貴族さんたちが子供の安全のために威信をかけて間引いているからだ。

 まあ、そういうイレギュラーは起こる。だからこそ俺たち護衛がいるわけなんだしな。

 たが、この氷の森はなんだ?

 分厚い氷に囲まれた森、そしてウルフたち。おいおいよく見ればウルフのうちの何頭は損傷がない。まるで生きたままいきなり氷漬けにあったような・・・。

「あっ、助けて、助けてください。」

 呆然と考えていたら女の子と目があった。女の子はすがる様に叫び俺を読んだ。

「な、なにがあった?」

 もう手遅れと分かっていてもまずは女の子の前にいた男を見る。腹にウルフの牙か爪の一撃を受けたのか、明らかに手遅れだ。

「う、ウルフが。どうして、ここは安全だって。」

「すまねえ、俺にもわからん。」

 実際意味が分からない。ただ、

「嬢ちゃん、こいつはもう駄目だ。そっとしておいてやんな。」

 がくがくと男をゆする女の子の手を俺はそっとはがす。死体を前にこういうパニックを起こす奴はいる。子どもだからしょうがない。

「そ、そんな。」

「あれだろ、こいつは嬢ちゃんを守ったんだ。今は休みな。」

 ほかの二人と見比べてもこの男の顔はどこか穏やかだった。この女の子を安心させたかったのか、それとも安全を確保できたと思っていたからか、俺にはわからない。

「や、やだ。」

「いいから落ち着け。なっ。」

 それでもなおすがりつこうとする女の子を俺はそっと抱え上げる。どういう理由でこんな光景になったかわからないけど、この男は女の子がここにいることは望まないだろう。

「おーーい、大丈夫かーなにが った?」

 気づけば、狼煙を見たほかの大人も近づいてきていた。

ーーがんばったな、少なくとも嬢ちゃんは助かったぞーー。

 心の中でねぎらいの言葉を男にかけ俺は声のする方に歩き出す。女の子は羽のように軽い、抵抗もない。

「ごめん、ごめんねラグ。」

 涙を流しながらも、その目は冷静に現実を受けれいていた。この子もなんだかんだ強い子だ。きっと立ち直れるぞ、坊主。

 名のなることもなく傭兵は、ミサを先生に預けたのち、戻って3人の生徒の死体を回収して、遺族へと届けた。そして、その出来事を報告をしたあとは、彼の日常に戻っていた。傭兵として魔物や犯罪者と戦う日々。

 後年になり、酒の肴に語るその話は、ホラ話と言われることになるが、男は追求しなかった。勇敢な少年に守られた女の子のその後に興味をもつこともなければ。氷に包まれた森に興味をもつこともなかった。

 時々出会うとんでもない光景。男にとってはその一つに過ぎなかった。


(◇◆▽視点)

ーーそう、悲しくも美しい一つの愛のカタチ。献身と忠義、そして愛情をもって愛しき女性を守ったラグ・ソルベが歩むはずだった一つの話。ーー

ーーあるいは、友人の死という試練を乗り越えてミサ・ソルベがより美しく成長するための試練だったはず・・・ーーー

 


 

ラグ君の好感度が一定値に達していない、あるいはミサの能力値が一定値以下の場合はラグ君が死亡して離脱するという鬼畜仕様。

現時点での改変点

メイカ・ラス ファス・ファースト ウルフの襲撃により死亡 →生存

ラグ・ソルベ ウルフの襲撃からミサをかばい死亡または負傷 →生存 五体満足

ミサ・ソルベ 対象を氷漬けにする魔法特化で戦いを嫌う令嬢 →近接特化の武闘派令嬢


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