43 ミサ 1年生 お買い物をする。
お買い物は続く。
校外学習の準備は原則一週間とされている。一週間以内に現地の情報を集めたり、必要な道具や消耗品などを用意したりする。生徒たちには最低限必要な物資が告知され希望者には貸出もされている。
この一週間というのは長いようで短い。万が一道具に不備があれば修理なり購入なりしないといけないが、見積もりから修理が一週間で終わるかと言えば微妙な時間だ。そして食料などの消耗品の手配、これ生徒の判断にゆだねられている。
保存食は長いもので一か月は持つものがあるが味はイマイチだ。生鮮食品なんてものを早めに買っても当日まで保存できるわけもない。仮に保存食だけするとしてもどうせならおいしいものを食べたい。
「嬢ちゃんたちわかってるねえ。うちの干し肉を持っていこうって言うなら今日注文するのが一番だ。出発日の前日に取りに来てくれや。」
上機嫌の肉屋のおじさんも学園から依頼を受けている。なので在庫はそれなりに作っているが、ベーコンなりハムなり干し肉なりを持っていこうと思うなら、作り立ての一番いいやつを頼みたい。
「お義姉様、1泊であの量はいささか多かったのでは?」
「グラスカウの肉の質がかなりと良かったから、普段用にも買っちゃったのよ。」
「なるほど、おいしそうな赤身でしたもんね。」
おいしいは正義だ。
また野外での活動をする場合において虫よけや日焼け止めなどの薬品の準備も大切である。しかもこれは最低限の準備の項目に入っていない。が、これは快適さと乙女としては譲れないものだ。
「ここは化粧品屋さんなのでは?」
「「それが何か問題?」」
肉屋の次は化粧品屋さんだ。薬屋でもいいけれど薬効に重点置いたものなんてものは普段から常備している。何なら現地で採取から調合だってできる。
ただ肌に合ったものや、好みの香りなどを考慮したものが欲しければこの店が一番。まあぶっちゃけ来たかっただけだど。
「あらーん、ミサちゃんとファルちゃんじゃない。お買い物?」
「あっローちゃんだやっほー。」
相変わらずピンクで可愛いろーちゃんと両手でハイタッチをしてキャーキャーと騒ぐ。ここはローちゃんがプロデュースしている化粧品屋さんなのだ。
「ローズ先輩、先日はありがとうございました。」
「あらー、ファルちゃんも相変わらずきれいな肌をしているわねー。素敵。ラグ君も・・・うんちゃんとスキンケアはしているようね、及第点よ。」
「あっありがとうございます。」
挨拶と同時に行われるローちゃんチェックも慣れたものだ。肌や髪の手入れから始まり、着こなしや立ち方、ローちゃんの厳しい身だしなみチェックを超えられないとローちゃんのサービスは受けられない。
「今日は、ああ来週のアレの準備ね、うちをえらんでくれるなんて嬉しいわー。」
ローちゃんは私たちをテーブル席に案内してくれ、おすすめ商品を並べてくれた。
「これはハーブを使ったタイプの虫よけで、こっちは薬品系ね、ハーブは癖が強いから好みで選ぶといいわ。あとは同じシリーズの肌ケア用のクリームね、好きな香りでのセミオーダもできる。あとは日焼け対策だけど、スプレータイプのこれがおすすめよ、天候に応じて適量を振りかければOK。」
どんどん並んでいく商品に私たちのテンションはどんどん上がっていく。ローちゃんのおすすめはグッズはその質の高さもそうだけど、健康や美容にもいいものばかりなのだ。肌の質や体調などに合わせてコーディネートとしてくれる。
マリアンヌ様の話では、普通は行われる超VIP待遇の接客に店内のほかのお客さんからは嫉妬と羨望の混じった視線が集まるが、私たちもローちゃんも人からの視線には慣れているので気にならない。次々試しては、感想を伝えてそれをもとに新しい化粧品をおすすめされる。小一時間ぐらいかけてそろったセットにベルカとラニーニャの分、あとはマリアンヌ様やクラスの友達へのお土産までローちゃんは持たせてくれた。
「でも野営に持っていくにはちょっと香りが強くない?」
「うん、これは普段用だよ。同じ品質で無香料なのもあるんでしょ。」
「あらあら、さすがミサちゃん、わかってるわー。」
単純な化粧品と野営用のもの。ローちゃんも分かっているので間を置かずそれらは用意してもらえた。
「ああ、やっぱりあなたたちとの話は楽しいわ。磨けば光る子ってほんとたまらない。」
一時間近くも説明してくれたというのにローちゃんはイキイキしていた。こういうのが楽しくてしょうがないといった感じだ。そういうところが可愛い人なのだ。
「ローちゃんありがとう、すごく楽しかった。」
「ふふふ、こちらこそ、3人が化粧品の感想を楽しく言ってくれるから、いい宣伝になったわー。」
楽しんでくるのよーと見送ってくれうローちゃんはまるでお母さんのようだった。
準備は大事




