表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームの正統派ヒロイン、いいえ武闘派ヒロインです。  作者: sirosugi
学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/195

42 ミサ 1年生 校外活動の準備をする。

お買い物

 学園での勉強は座学が基本、と見せかけて割と実践的である。魔法などの技術の実習や、マナーやダンスなどのレッスン、そして実戦のための訓練などがある。

 平和と言ってもそれは国民の中の話で、都市部以外にはケモノや魔物も多い。また近隣の国から流れてくる夜盗や非行に走る残念な人というのもいる。だからこそ最低限の護身の技術は求められるし、上に立つ人間にはそれ以上の能力が求められるのだ。

「それで、校外活動というのもなんだかですよねー。」

 そうぼやくファルちゃんに、私もラグも苦笑しながらうなづく。それこそ私たちからすると何を当たりまえの話だ。

「ええっと、たしか学園の南側にある森で狩りをするんだけ?」

「そうよ、ラグ。国の南側はロムレス家の人達が外交的に国境線を引いているけど、森の中は中立。だから定期的に間引かれているから、初心者向けの魔物やケモノが多いんだって。」

「流石姉さん、詳しいんだね。」

「まあね。」

 私たち一年生は来週、初の校外学習が予定されている。学園から馬車で2日ほどの森まで行きグループごとに野営や狩りの実践を行うのだ。もっとも、ソルベの山やファムアットの海と比べれば危険な動物はおろか魔物なんてほとんどいない安全な森。ピクニックやキャンプと大差ないのではないだろうか。というのが喜々して情報を集めた結果だ。

「林業と国境線の意味で人工的に造られた森だから、生態系もそれに応じてシンプルで小さなものなんだって。クマも狼もでないらしいわ。」

 ソルベの山といえば、狼とサル、そしてクマだ。それらが長生きした結果生まれる魔物なんて存在もいて中々にスリリングでデンジャラスな場所だ。私たちですら滅多に踏み入ることが許可されない場所。そこと比べると初心者向けの訓練場なのだ。

「学園の方針も理解できますし、色々な生徒さんがいますから、活動自体は理解できるのですが。憂鬱ですわー。」

 そんなわけでファルちゃんと私は、校外活動に向けてのは興味が薄い。ぶっちゃけ面倒。

「まあまあ、二人とも、野営もできるってことだし、久しぶりに焼きマシュマロとかができると思えばいいんじゃない。たき火で焼いたお肉とかも俺は好きだよ。」

「「はい?」」

「うん、先輩たちから聞いたんだ。流石にバカ騒ぎはできないけど、荷物にそういうのを持ち込んで楽しんで交流を深めることも大事なんだって。マシュマロもおススメのお店を教えてもらって。」

「すぐ行くわよ。」「行きましょう。」

 言いかけたラグの手を私たちはつかみ、ずんずんと歩いていく。そうか、そういう楽しみ方もあったというわけだ。


 学園と王都はそれなりに近い、休日に学生が思いつきで王都の店を訪ねられるくらいだ。定期便の乗り合い馬車に乗り、ラグが先輩から聞いたという店を目指せば、そこは旅行関係の雑貨を取り扱っているお店だった。

「急な予定変更は、困るんですかお嬢様。」

「ふふ、荷物持ちは黙ってなさい。」

 若干不満げなベルカも伴い、四人で店に入る。こじんまりとした大きさの店内にはランプや折りたたみいすや背嚢などが壁に飾られ、ガラス張りのケースの中には野営用のナイフや雑貨などが丁寧に並べられていた。

「なかなかに質がいいですね。」

 物量に私たちが圧倒される中、一番に反応したのはベルカだった。私たちを追い抜いてケースの中を一つ一つ見て、嬉しそうにしている。そのまま必要そうなものを見繕ってくれるといいんだけど。

「お嬢様とラグ君ですと、背嚢は今お使いの者を、あとは調理用のナイフと食器類を買われてはいかがでしょうか?」

「うん、いい感じのをよろしく。」

「では、ピンクでフリフリな物を。」

「いや、自分で選ぶ。」

 だめだ、油断するとファンシーな物で行軍することになる。

「なんでい、お前さんたち、一年生か?」

「はい、来週に校外活動があるんです。」

 それまで黙ってカウンターに座っていた中年の店主がラグに話かける。いかにもな感じのいかついおっさんだが、笑い方は優しいおじさんだ。

「そうか、そうか。そこの別嬪さんの言ってることはたしかっぽいな。どこの貴族様か知らないけど、野営とかは慣れてんだろ。」

 そして、見る目もある。先輩たちのおススメというのは納得だ。

「で、欲しいのは調理道具でいいのか?」

「そうですね、お嬢様たちは個人ではお持ちではなかったと思います。」

「ふーん、ということは、ファムアットかソルベの方からきた貴族さんだな。自前の野営道具があるなんて、王都の坊ちゃんたちじゃありえんからな。」

 訳知り顔をと言った感じのおっちゃんに私は首をかしげる。

「王都ではもってないんですか?」

 殿下もマリアンヌ様も自前の野営道具はもっていた。一年前、ファムアットに遊びに行ったときに自慢されたのも記憶には新しい。

「ははは、大体が学園入学のときか、初の校外学習後に慌てて購入するのさ。なにせ、学園で貸し出している野営道具は頑丈だけでも重いからな。最新のとか、体格にあった道具というのありがたみを知るための学習なんだよ。まあお前さんたちには必要なさそうだけどな。」

 長年商売をしているとそういうことも分かるようになるらしい。そのまま私たちはそれぞれの体格を見て盛らないながらおっちゃんのおすすめ商品の調理用ナイフと食器などを購入することになった。

「木製じゃなくて大丈夫か、こいつは丈夫で長持ちするが、重いぞ。」

「大丈夫、鍛えてるから。」

 まあ、木製じゃなくて、合金の食器を買ったことにおっちゃんは驚いていたけど。

「そうだ、おっちゃん、マシュマロもあるんでしょ、売って。」

「おお、なかなか豪華な姉ちゃんだな。もう少し慎ましい方が持てると思うぞ。」

「余計なお世話よ。」

「そうです、お嬢様は今のままでも大変、可愛らしいのです。」

「おお、そいつは失礼した。ちょっと待っていてくれ、マシュマロは倉庫にあるんだ。」

 怖い怖いと奥に引っ込んだおっちゃんは、キレイな缶をもって戻ってきた。

「一応、聞くが、お前さんたち、これについてどこで聞いた?」

「ライ、学園の先輩です。」

 ラグの無難な答えにおっちゃんは眉をしかめるがそれ以上は言わずに缶を売ってくれた。うん、あれだお店のイメージもあるからきっと一見さんには売ってくれないんだろう。

「うちは道具の点検とか修理もやってるから、よかったらまた来てくれ。」

 実際最後はニコニコで見送ってくれた。適正価格と判断したベルカが値切らず支払ったのも大きいかもしれない。

 そんなこんなで私たちは次の店へと向かうのだった。

 

 

たき火と言えば、BBQとまではいかなくても焼きマシュマロはしたくない?

旅は準備するのが楽しいのです。まだ続くよ準備編

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ