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乙女ゲームの正統派ヒロイン、いいえ武闘派ヒロインです。  作者: sirosugi
学園編

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EX5 オータム学園入学式イベント (正史編」

 ゲーム冒頭とヒーローとの絡みです。

 王立オータム学園。国内で唯一の王立の学園であり、最高峰の教育機関。

 国の未来を担う貴族や大手商人の子息、またさまざまな場面でスカウトされた才能ある平民が通い、文武含め国を牽引していくための様々な教育が行われており、その生徒数は1000人、教職員や関係者を含めると1万人以上が敷地で働いているとも言われている。

 その敷地は美しく、そして広い。

「マリー大丈夫?」

「はい、大丈夫です。」

「マリーさん、このままで遅れます。頑張ってください。」

 ミサ・ソルベとお供であるマリーとラグは入学式の会場への道を急いでいた。

「ラグ、男子の受付は反対側なんだから貴方は先に。」

「ミサ様、それはできません。大丈夫です。ミサ様を送り届けてからでも間に合います。」

 制服をきっちりと着こなしたラグは、頑として離れようとはせず私に歩調を合わせてくれる。だが、それはマリーには少し早い。

 5歳のときからだ続くラグの態度にミサは溜息をつく。ラグは義姉であるミサには甘いが周りには冷たい。もう少し優しくできればモテそうなのにもったいないと常々ミサは思っているがなかなか改善される様子はない。

「こんなことなら、もう少し早くでればよかった。」

「いけません、ミサ様、そんなことをすれば有象無象が群がってくるだけです。あの恥知らずどもの相手をする必要などありません。ミサ様は堂々と入場すればいいんです。」

 思ったつぶやきにラグの厳しい言葉が届く。

 貴族の慣習として先に会場入りしてラウンジで待つというのがある。だが、周囲の勧めや真面目な性格故、ミサは時間通りに会場に向かっている。だが敷地の広さにもっと余裕を持つべきだったと後悔していた。もっともラグがそんなに慌てていないところで時間に余裕があるのはわかっている。

 そんなときだった。

「あれ、こっちは女子専用、男子はどっち?」

 会場の近くでキョロキョロしている男の子に気づいたのは。

「間に合った・・・けど。」

 きっと新入生。それを無視するのは気が引けた。

【 ラグに任せて会場へ向かう。   〇 男子生徒に声をかける。 】

「こんにちは。」

 ミサはその子に声をかけることにした。それを見て呆れながら係員に話に行ってくれたラグにはこっそり感謝する。

「え、ええっとこんにちは。」

「新入生ですか?」

「は、はい。でも迷ってしまって。」

「そうなんですか、私はミサ・ソルベ。私も新入生です。」

「え、ええっとノーマンです。平民なので苗字はありません。」

「ノーマン、確か主席入学の人ですよね、それならこちらでも受け付けしてもらえると思いますよ。」

 ミサはそう言ってノーマンの手を取り、女性用の受付へと向かう。

 受付は渋い顔をしていたが、主席入学者は入学式で挨拶をする必要があるためこちらからでも大丈夫なはずだとミサは説得し、無理を通した。おかげでノーマンは無事に入学式へと向かうことになった。


 ノーマン 入学式のあいさつより抜粋

「この素晴らしい天気のもと、栄えあるオータム学園へと入学が叶ったことうれしく思っています。私は恐れ多くも平民の出身ですが、数多くの縁と助けを受けてこの学園への入学が叶いました。それらの恩に報いるため誠心誠意、勉学に努め、この国を支えられるようになっていこうと思います。またこの学園では身分の貴賤を問わないということを事前に教えられていましたが、入学間際、私はそれを体験しました。これらの恩を大切に、ともに国を支えていけたらと思います。」


【 入学歓迎会に参加する。 〇 まっすぐゲストハウスに向かう。】

 入学式後、ミサはラグとマリーとともにゲストハウスへと向かことにした。わずかとはいえ、他の貴族や生徒に絡まれても面倒だったからだ。

 学園の生徒たちは基本的に男女別の寮生活をしている。家から通うのが難しいことや集団生活の中で社会性を身に着けることなど様々な要因があるが、学業の時間を確保するためにはこうでもしないとまずいらしい。


 平民や希望者が過ごす一般寮。貴族や上流階級が過ごす貴族寮。そして一部の特級階級の女性が暮らすゲストハウスがある。私やファルちゃん、マリアンヌ様、あと数名が暮らすゲストハウスの集まったエリアは警備も厳重で、身内であるラグや婚約者であるライオネル殿下ですら簡単にははいれない。

 これは子どもを産む女性を大切にする国の流儀に由来している。基本的に男女の寮のエリアは別々であり、プライベートな時間での交流は禁止されている。寮の質も女性寮の方が高い。

「そうはいっても、学園内には逢引きやらナンパやら、不埒ものが多いです。ミサ様、きをつけてくださいね。」

「分かってるわよ、ラグ。」

「まあ何かあれば、始末しますが。」

「ラグ君、物騒なことはやめようね。」

 3人で話しているが、ラグも寮は別である。だからこそ周囲への警戒が厳しい。

「ラグの過保護にも困ったものね。大丈夫よ、女子エリア、それもゲストハウス付近の警備は厳重だから。それよりラグも男子寮へ行きなさい。」

「いやです、ゲストハウスまではお送りします。きちんと許可も取っています。」

 頑な態度にミサは再び、ため息をつく。そのまま歩いていると男子エリアと女子エリアの境界に差し掛かる。

「貴様、平民とはいえ、無礼だぞ。」

「え、ええっと。すみません。」

「なんだ、そのへらへらした態度は、俺をだれだと思っている。」

 ゲストハウスへの帰り道、男子寮と女子寮の境界あたりで二人の学生が言い争っている場面に遭遇してしまった。

「お嬢様、」

【 〇 声かけて止める。 トラブルを避けてゲストハウスへむかう。】

「ラグ、ごめんね。」

 偉そうに鼻を鳴らしながら声を荒げる学生と、困ったようにへらへらしている学生。いかにも貴族と平民といったやりとりだ。

「ちょっと言い方はあるのではないですか。」

 ミサはうんざりするほど見てきたその様子に口を挟まずにはいられなかった。

「だれ、おやミサさんじゃないですか、ごきげんよう。」

「コリンズさん、ごきげんよう。」

「またまた、どうぞ私のことは家名ではなく、ポムと名前でお呼びください、これからは同じ学び屋で過ごすわけなんですから。」

 ニヤニヤと見返してくるポムの顔に嫌悪感を感じながらミサは睨み返す。

「ならだ、そちらの彼も同じ学生なのでは、本校では先ほどのような発言はあまりよろしくありませんよ。」

「ははは、学校の風潮ですか。たしかに理想的ですな。でも悪魔でそれは理想です。貴族と平民では教養の下地が違うんですから。」

「ならば、その優れた下地があるのに結果が出せない貴族こそ、己を恥じ入るべきですわ。」

 ポムの成績をミサは知らない。入学時に発表されるSとAクラスの生徒以外は基本的に名前までは発表されていない。ということはポムは一般的かそれ以下の成績だったということだ。

「ぐっ、まあいいでしょ。こちらの学生が女子エリアへ行こうとしたのを注意しようとしただけなのですが、あれならばそちらの彼に案内を頼んでも?」

 ポムはミサの後ろに控えているラグを見てそういった。明らかに侮蔑の混じった視線に、ミサの機嫌はさらに悪くなる。

「そうですね、ミサ様。僭越ながらお二人は私のほうで案内させていただきます。ミサ様達は先にゲストハウスへと向かってください。」

 言い返そうとするミサを制してラグが間に入ってポムともう一人の学生を見る。よく見れば入学式で迷っていた主席の学生だった。

「あなた今朝も思いましたけど、事前に道なり地図をきちんと確認することをお勧めします。少なくとも入学式の会場への案内も、寮の場所も案内がきちんとあります。」

 辛辣な言葉と共にラグ指さす先には、「男子の立ち入りを禁ずる」という看板もあれば地図もあった。

「あれ、あははは。」

「笑ってごまかすことでは、ありませんよ。このまま警備員に引き渡してもいいんですよ。」

「すっすいません。」

「ラグ、言い過ぎよ。」

「・・・失礼しました。ミサ様。」

 ルールもあるし、案内もあるのでノーマンの方にも課題はある。だが、どうにも過敏な言い方になっているラグのことも、傲慢な言い回しを使うポムのこともミサは好きになれなかった。

「じゃあ、ラグお二人をご案内して。」

「あっ、家、私はもう少し、ミサさんとお話を。」

「ポム様、ノーマン様、ご案内いたします。」

 なにやら未練のあった様子のポムも呆然としているノーマンもラグはまとめて案内してしまう。相手が嫌がない程度に腕をひっぱたり押したりして動かしている。あいかわらず器用で頼りになる。

「ラグ君の過保護にも困ったものですねー。」

「そうね、学園でお友達が出来たら少しは丸くなると思うんだけど。」

 ばたばたと去っていく3人を見ながらミサはまたしてもため息をつくのであった。

 


 

変更点 主席入学の生徒(方向音痴) ⇒ ミサやラグの成績が高すぎて一般学生レベル

    傲慢な貴族 ポム・コリンズ ⇒ ミサに行動を認められつつも服のセンスの無さを指摘され改心

   御付きのマリーとラグ     ⇒ ラグの自立と双子の関係で個性的で活動的な二人に

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