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乙女ゲームの正統派ヒロイン、いいえ武闘派ヒロインです。  作者: sirosugi
11歳

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25/195

20 ミサ 11歳 計画を立てる。

お話の続き

「ここに至って、私たちの関係は良好ですわ。」

 すっかり場を取り仕切ったマリアンヌ様の言葉に私たちはうなづく。逆に言えば仲良しすぎるのが問題と言えば問題なのだけど、対外的にはそれはわからないのだろう。

「学園でのお付き合いを通して、よくわかりましたの、私たち4家の存在は注目されどどこかで序列を考えられているのだと。」

「なるほど、学園もおもしろそうなところですね。」

 マリアンヌ様とライオネル殿下は今年から学園へ通っている。私たちも来年から通うことになる。一度、学園のことを聞いてみたいとも思う。

「ただ、現状では、ファムアット家が少しないがしろにされていると。」

「そうですわ、ミサさん。学園にファムアットの人が少ないこともありますが、もっと少ないソルベの関係者のところに殿下が足しげく通っている。大人はだいぶわかっているようですが、学園の若者たちの中ではそういったことを気にする人も多いのです。」

 子どもなんです。とマリアンヌ様は困った顔をするが、そこにファルちゃんが質問をした。

「ですが、マリアンヌ様、もともとファムアットは中央と商業的なつながりはあっても、政治的なつながりは少ないですよ。おじい様、ファムアットの領主も気にしていないですわ。」

「それを聞けて、私がどれほど安心したか察していただきたいところですわ。ファルさん貴重な情報をありがとうございます。」

 心底ほっとした様子のマリアンヌ様に、申し訳なさそうに小さくなっているライオネル殿下。基本引きこもりのソルベの私たちにはわからないが、国の中枢を担うお二人にはそれなりに苦労というものがあるのだろう。

「というわけで、今回の交流を大事にしたいと思うと同時に、できることならファムアットの領地へ陛下とともに訪問したいところなんですの。」

「あっいいですね、それ、私たちも行きたい。」

 ファムアットはソルベにはない海があるという。ファルちゃんの話を聞いて、興味があったのだ。

「ふふ、ミサさんも一緒ならなおのこと、4家の関係をアピールできますわね。」

 そういってマリアンヌ様はぎゅっと私を抱きしめる。たった一つの年齢なのだが、12歳だという、マリアンヌ様は私よりも背が高いし、身体も大人っぽい。

「ふふふ、そうして触れ合っているとまるで姉妹のようですわ。そしてマリアンヌ様、その提案、ファムアットとしては大歓迎ですわ、当家は千客万来、客人はいつでも大歓迎です。それこそ明日にでも。」

「そうなんだ、でもそうなると、私たちはいけないかな。」

 自信満々、喜色満面なファルちゃんには悪いが、急にとなると私とラグは難しい。

「あら、なるほど、妹さまたちのことですね。」

 私の視線の先に、マリアンヌ様とファルちゃんはすぐに察してくれた。

 やや離れたところに置いてあるベットでスヤスヤと眠るルネとリカッソ。その天使のような寝姿にほっこりした気持ちになるが、同時に家族である私たちが彼女たちを置いて遠出というのも考えものだ。

「いや、むしろ父様あたりは賛成すると思うよ、姉さん。」

 そんな様子にラグが口をはさんできた。

「姉さんが二人にかまいすぎて、自分が構う暇がないって嘆いていたし。」

「二人はまだ幼いのよ、世話を焼くのは当然じゃない。」

 私は任せるマリアンヌ様から離れてルカたちのところへ近づく、今日はいつもより遊んでいたせいかお昼寝も長い。うん、この子たちを置いて遠出するのもなあ。

「移動に片道一週間、滞在も含めると学園の休暇でギリギリだな。」

 ライオネル殿下の冷静な計算に私は更に考える。移動で2週間、もしかすると一月はソルベを開けることになってしまう。楽しみではあるが、それはそれで心配なのである。

「ここは、父様と相談してね。」

「その必要はないわ。」

 ひとまず断ろうと思った矢先、部屋の中にこれまた凛とした声が響いた。

「ローズ様、ご無沙汰しております。」

「マリアンヌ様、大きくなられましたね。以前お会いしたときは、まだ赤ちゃんしたのに、時間がたつのは早いですわ。」

 さらっと挨拶をしながら現れたローズ母様はルネたちのベットに近寄りその様子を見て表情を緩める。

「子供の成長とはあっという間です、まだまだ子どもだと思っていたアナタたちが、こうして国や貴族のバランスや未来を考えている。大人ととしてはふがいない気持ちもありますが、次代が立派なことがほこらしくもありますわ。」

 これは。

「私もだいぶ体調が戻りましたし、ルネもリカッソもだいぶ落ち着いてきました。ミサ、ラグ、せっかくの提案ですし、これを機会にソルベの義務を果たしていらっしゃい。」

 そういいながら母様は二人をそっと抱き上げる。スヤスヤと眠りながらもルネとリカッソも安心したように母様にしがみつく。私たちでは一人ずつしか抱っこできないが、さすが母様である。

 というか、マリアンヌ様、すでに母様たちに話は通されていますね。

 疑いの目を向ければ、扇子で口もを隠しながらうふふと微笑まれた。くそ、私もそれを使いこなせるようになりたい。

「では、支度ができたら、ファムアットに訪問し、休暇はそちらで過ごすということでよろしいですか、殿下。」

「ああ、せっかくだ、4家で交流を深めるとしよう。ラグ、ミサ、ファルベルト、よろしく頼む。」

 果たして、殿下はどこまでしっていたのだろうか、そんな疑問も浮かんだけれど。

 私とラグは、人生で初めてソルベを出て旅をすることが決まったのであった。

 

 


人物が増えてきたので、次回のEXで、キャラ一覧を作ります。

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