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乙女ゲームの正統派ヒロイン、いいえ武闘派ヒロインです。  作者: sirosugi
11歳

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22/195

17 ミサ 11歳、企む

 ミサさんはこれでも長女で嫡子なので、ちゃんと色んな政情にも詳しかったりする。

 挨拶代わりのとの訓練を行ったあと、私たちソルベの子とファルちゃんは応接室でお茶を飲んでいた。

「ふう、今日こそは一本を取れると思ったのですが。」

「会うたびに鋭くなってくるからひやひやしたよ。」

 久しぶりのじゃれ合いのあとで、すっかりゴキゲンなファルちゃんと私。ルネとリカッソは大はしゃぎをして疲れたのかすやすやと眠っている。

「二人が楽しそうで何よりです。」

 ぐったりとしているラグもいつも通り。それでも訓練後でもへばらなくなっただけ上出来だろう。

「ところで、お義姉様。お招きいただいたのは光栄なのですが、なぜ今日を指定されたんですが。」

 ふふ、ファルちゃんも気になるよね、それぞれの領地からの道は整備され移動が楽になってきたけど、曜日を指定した場合も数日のズレはある。だからこそファルちゃんには領内で一日待ってもらって今日、この日に来てもらったのだ。

「ああ、それね、ほらファルちゃんが手紙で教えてくれたじゃない。ファムアットも中央のとのつながりを確認したいけど、なかなかうまくいってないって話。」

「ああ、それぞれの立場もあるからなかなか交流が持てない4家の関係だったはずなのに、最近はソルベとクラウン家が妙に親しいから、小うるさい連中がいるってやつですね。」

 王国に設立から、4家はお互いにバランスをとって国の平和を維持してきた。ほどほどに付き合い、特別親しくすることもない。婚姻とかもそういう問題だけじゃなく、お互いの所領へのインフラ整備や予算などの優遇も平等に分け合っていた。

 そのはずだった。

「ライオネル殿下の所為だよねー。」

 そうライオネル殿下が悪いのだ。何かとつけてラグに会うためにソルベ領に顔を出す殿下、これが一般的な家庭なら、仲のいいお友達の遊びに行く子どもで済むものなのだが、殿下は国のトップの息子であり将来の王である。それがすげなく通うとなれば周囲が無駄な勘ぐりをするとか以前に、その通り道はインフラや警備が自然と整備される。するとどうなるかと言えば、環境の良くなったソルベまでの往来が活発化し、人や物資、何より金が流れることになる。

 ファムアット家は海上での交易とそれを中央に輸送するためにも整備はされている。だが、王族、クラウンの関係者がすげなくソルベに通っていることを知ればいい気持ちはしないだろう。

「私やおじい様たちなど中心の人たちは、ソルベの人たちから事情をうかがっているのでいるし、人となりを 知っています。ですが。」

「下の方の人までは、それは分からないわよねー。」

 そして、ファムアットでも人気のあるファルちゃんとラグの婚約である。面白くない人にとってはさらに面白くない状況になっているわけだ。

「本来なら、4家の交流というのは、公務の一環とされるぐらい厳密なものなんだけど、陛下がねー。」

 明言することはできない。それこそ不敬だ。

 だから、私と両親は、一計を案じ、ファルちゃんの来訪を今日、この日、このタイミングを指名したのだ。さすがに手紙には書けない考えを説明しようと思ったタイミングで、なにやら廊下から騒がしくなる。

「し、失礼します、ミサさま、ラグ様。」「おお、ラグ、ここにいたのか、遊びに来たぞ。」

 慌ててきた侍従を押しのけて、入ってきたライオネル殿下に思わず目線の温度が下がる。

「なっミサ嬢、なぜおまえが、ここにいる。」

「はい、言質いただきました。」

 わざわざここを選び、なおかつ口止めをしていた甲斐があるというものだ。

「陛下、お戯れもほどほどにしてくださいね。」

「ど、どういうことなんですか、お義姉様。」

 ファルちゃんも驚いているが、その前に私はお手本となるべく、膝立ちになって一礼する。

「ライオネル殿下におりましてはご健勝のようで何よりです、ミサ・ソルベ、父に代わりましてご来訪を歓迎したしますわ。」

「あっライオネル殿下、お初にお目にかかります、ファムアットが長女、ファルベルト・ファムアットでございます。ご尊顔を拝謁でき、臣下として光栄であります。」 

 私の態度にファルちゃんも慌てて臣下の礼をとる。ワンテンポ遅れてラグも臣下の礼を取る。

「おお、なんだと思ったら、今日はファムアットの姫も来ていたのか、ラグからも聞いている。なるほど手紙通り、器量の良い女子だな。」

「えっ?」

 真顔で声を上げるファルちゃんを制す。一応立場があるのだ。そして特に今日はここでは猫をかぶらないとまずいのだ。

「おっと、すまん。楽にしてくれ。ファルベルト嬢はともかく、ミサにそんな態度を取られると背筋がかゆくなる。」

「ずいぶんな言い方ですね。」

 思わずため息が漏れたが、お許しも出たので私たちはソファーに座りなおす。正直今更感はあるけど、一応殿下の身分は私たちよりも上だ。ファルちゃんの手前、いつものようにぶちのめしては、さすがにまずい。

「おっと、これは失礼。気づかなかったとはいえ、女子のいる部屋に入るには無礼な態度だった。」

 おやおや殿下、今更そんな態度をとっても遅いと思いますよ。

「まあ、殿下は遊びにいらしたわけですし。我々としてはそのご意思に従いますわ。」

 遊びに来た殿下が偶然、ファムアットの令嬢と出会った。この建前が大事なのだ。


 


 

ミサのたくらみについては次回詳しく。

ざっとこの世界の権力構想の説明。

1  王  トップ 

2  公爵 人事および、財務

3  侯爵 辺境伯 防衛 軍部

4  伯爵 各部署のトップ   王太子(次期トップ)

5  王族 王族の身内

6  子爵 領土もちの貴族

7  男爵 領土なしの貴族

8  それぞれの貴族の子息は、家柄もそうだが年齢よる序列が一般的(年上は敬う慣習)

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