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乙女ゲームの正統派ヒロイン、いいえ武闘派ヒロインです。  作者: sirosugi
11歳

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16 ミサ 11歳 義妹を語る。

 義姉、小姑、いろいろ言い方はあるらしい。

 ファルベルト・ファムアット、ファムちゃんがラグの許嫁になったのは1年前、ラグが10歳になったときだ。東のファムアット家、海上交通を主とする侯爵家で、東の海で闊歩する海賊や海魔から国を守る武門と商才で繁栄を誇る海の貴族。ファルちゃんはそこの長女だがファムアット家の後継者は兄である長男が務めることとなっていて、将来はソルベ家に嫁入りすることになっている。

 つまり、私の義妹となるのだ。これが可愛くないわけがない。

「お義姉さま、ご無沙汰しております。」

 肩までで切りそろえれた黒髪に、褐色の肌、海が誓いファムアットの人間の特徴を受け継いだ特徴と動きやすそうなセーラー服が非常に似合うかわいい子である。

「ファル、久しぶり、旅路は問題なかった?」

「ええ、道の整備も進んで、かなり快適でしたわ。ふふ、ルネも元気そうで何よりですわ。」

「ふぁる、ふぁる。」

 久しぶりにあったファルちゃんがうれしいのか、ルネも満足げに手を伸ばす。ファルちゃんもニコニコしながらその手をつかんで挨拶する。

「ふふふ、また大きくなりましたね。ほんとお義姉さまにそっくりですわ。強くなりそうですわね。」

 満足げなファルちゃんだが、視点が武闘派のあれである。実際、セーラー服から見えている手足はひきしまっているし、ここまでの歩みも洗練されていた。

 姉としてはラグのほうが先に将来の相手を見つけたことに思うことがないわけじゃない。弟の相手としてふさわしいか不安になったこともある。

 でも大丈夫だ。

 なにせ、ファルちゃんはラグとタイマンをしても、渡り合えるくらいには強いから。

「ねえねえ、ふぁる、たたかう?」

「いえいえ、今日は戦いませんよ。」

「うん、今日はファルちゃんとお茶をするのよ。」

「おちゃ?」

「おかしもあるわよ。」

「きゃあああ。」

 無邪気のルネに私たちは笑いあう。うん出会ったときはなかなか緊張していたようだったけど、ファムアットも国を守る貴族であり、ファルちゃんもその教育を受けていたこと。だからこそ、私たちが腕試しとして模擬戦をするのは自然の流れだし、同じように真摯に鍛えている相手に尊敬の念を持つのは自然なことだった。

 いやいや、ファムアットの戦術というか身体裁きというのは勉強になるから楽しいのよね。

「ところで、ラグ様、どこへ行かれるのですか?」

 一通りの挨拶が済んだところで、ファルちゃんの目が怪しいかがやきを放つ。まあ私も気づいてたけどね。

「あっリカッソがトイレみたいだからな、急いでるんだ。」

「そう、マリーお願いね。」

 リカッソを頭に乗せたままどこかへ行こうとしていたラグから素早くリカッソを回収して、マリーに託す。そして、近くに置いておいた木刀をそっと拾う。

「あらあらラグったら、可愛い許嫁さんが遊びに来てくれているというのにどこへ行こうというのかしら。」

「うふふ、ラグ様、さすがに傷ついちゃいますわあ。」

 いつの間にか短めの木刀を両手に構えてファルちゃんも臨戦態勢になっている。

 ああ、あれですよ、別に仲が悪いとかじゃないよ、ただ、ファルちゃんも私と似たものを持っているという話。将来の夫婦の語らいには

「いやだ、姉さんとの訓練のあとにファルとの訓練なんて、死んでしまいます。」

「ちょうどいいハンデだと思うわよ、いい感じに削っておいたから。」

 言いながら木刀をラグに投げ渡す。

「では、ラグさま、参ります。」

「うおおおお。」

 ラグが受け取るわいなや、ファルちゃんは倒れるように沈み込んでその勢いのままにラグに突進する。そして下からすくい上げるような一撃を見舞うが、ラグはそれを弾き、その場から下がる。ファルちゃんはその様子に嬉しそうに顔をほころばせながら今度は翻弄するように左右にステップを踏みながら連撃を繰り出していく。

「ふぁるがんばれー」

 突然の蛮行ともいえるやり取りにルネも大興奮である。あれ教育に悪い?まあそれは置いておきましょう。

 これは、二人なりの親愛の表現なのだ。

 ソルベもファムアットも武門の家。だから私たちも顔合わせと同時に自分との腕試しをしたくなるものだった。

 ただ、ファルちゃんは私の勝負は、私の勝利。そして、その戦いで決定的な差を感じたのかファルちゃんは私をお義姉様と慕ってくれるようになった。

 一方でラグとはいい勝負になったのだ。なってしまったのだ。

 圧倒的な速さを持っているファルに、私との特訓によって身を守るすべだけは一人前のラグ。二人のやり取りは、決め手に欠ける千日手となった。

「ふっふふ、どんどんいきますよ。」

「ああああ、負ける、負ける。訓練倍はいやだあああああ。」

 負けたら訓練を倍にすると発破をかけているからラグも必死である。

「ほんと仲良しさんねー。」

「ファル、にい、仲良し。」

「そうだよ、ルネ。仲良しさんだよ。」

 きゃっきゃっとはしゃぐルネを抱きなおしながら私は、二人の様子を見守った。実際ラグも面倒見がいい。最初の戦いのときもファルちゃんの動きを誉めた上に、きちんとアドバイスをする。しかも毎回出会いがしらに模擬戦を仕掛けるファルちゃんのこともなんやかんや対応している。

 照れたり、戸惑ったりすることはあってもラグはラグでファルちゃんのこと大好きみたいなのよね。

 そんなわけだから、ファルちゃんもラグにはまっすぐに向かっていくし、私とも関係は良好だ。

 ふふふ、未来が楽しみでしょうがない。

 あれこれ、ラグさんがヒロインじゃないか?ラグさんを中心に人間関係が構築されつつある。

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