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乙女ゲームの正統派ヒロイン、いいえ武闘派ヒロインです。  作者: sirosugi
ミサ 5歳 義弟編

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9 ミサちゃん 5歳 弟をかまう。

 弟ができてミサさんの暴走が徐々にはじまります。

 ラグ、最愛の弟と出会ってから、私の生活は一変した。

 私だけだった子供用の食事が二人分用意されるようになり、訓練やお勉強も一人じゃなくなった。おやつも一緒に食べることができるし、母様にように私がお話を読み聞かせることもできた。何より新しい技や動きを思いついたとき、似たような体格のラグを相手にすると、それがどれくらい使えるかわかるのだ。

「行くわよ、ラグ。」

「ひいいい。」

 振り下ろされた木刀を、私の指示通りに構えて立っていたラグは、見事に弾くこと。

「そうそう、いいよラグ、足運びも握りもそのくらいでいいの。」

「は、はい。」

 そういって真面目に構えを確認するラグの姿が微笑ましくて、私は更に速度を上げて木刀をふるう。

「それそれそれ。」

 ラグが反応できるギリギリを見極めつつ、気を抜いても木刀をはじく程度に威力を調整しながら私は、剣をふるう。正直、ラグの実力はまだそれほどではない。ただ父様が言っていたように才能はあると私は思う。剣の握り方はもともと知っていたようだし、体力も割とあると思う。何よりったった数日でこんなにも動けるようになっているだもん。

「う、うわあああ。」

 うん、ちょっと泣き虫というか声が大きすぎるのはマイナスだね。戦っている間に口を開いていたら舌を噛んじゃうかもしれないでしょ。と何度も言っているけどなかなか治らない。

「よし、交代。今度はラグが打ち込むばんよ。」

「いや、腕があがらない。」

 しまったやりすぎた。慌ててラグの様子を確認すると両腕がプルプルと震えていた。まだラグは訓練の初心者だからペース配分ができないから気をつけなさいと母様にも怒られたばかりなのに、これは反省だ。

「ごめんね、ラグ。」

 腕をほぐすようにマッサージをしながら、私はマリーに合図してタオルと飲み物を持ってきてもらう。

「うん、だいぶ筋肉がついてきたと思うけど、もう少し加減しないと。」

「ええ。」

「お嬢様、さすがに数日で筋肉はつきませんよ。」

 二人は否定するけど、ほんの少しラグはたくましくなったと思う。でもまだまだ私や兵士さんたちのようにはなれないけど。

「つ、疲れた。」

 マリーに汗を拭かれながらラグはしゃがみこんでいた。うん、モフモフが弱っている姿も可愛い。あとで髪を洗ってあげよう。

「でもその前に。」

 私もマリーから飲み物をもらって一呼吸を入れてからラグの手をつかんで引っ張り起こす。

「腕がつかれているなら、今日は走り込みをしましょう。」

「ええ。」

 鍛えて身体が温まっているときは、冷める前に限界まで動いた方が効果的だ。魔法でクールダウンさせたり、治療したりもできるけど、小さいうちはあまりしないほうがいいって習った。だからできる限り動いて、力尽きたら休む。これが強くなる第一歩。

「まって、まって。」

 いやいやとラグは暴れるが、暴れられるということはまだ元気ということだ。

「大丈夫、ちゃんと倒れる前にやめるから。」

 心配しなくていい弟よ、お姉ちゃんがすぐにラグを強くしてあげる。

「た、たすけてーー。」

「うん、ラグは私が守るよ。」

「そうじゃなーーーい。」

 元気いっぱい声を上げながら城内を走り回る。うん、一人よりも二人のほうが楽しい。


 ラグ君が城に来てからお嬢様は大変元気になりました。

 いえ、前から元気すぎるほど元気なかたでしたが、どこか周囲や大人に遠慮して、言われるままにお稽古や訓練をされているようでした。奥様から指示されたメニューをこなし、兵士や旦那様たちの言いつけを守って無理はしない。そういった聞き分けのよい子でした。

「ラグ、がんばって、もう少しよ、まだいけるわ。」

「む、むりーー。」

「大丈夫、声がでるうちはまだ無理じゃないわ。」

 ラグ君が来てから数日、それはそれは可愛がってラグ君にかまうお嬢様は、今までにない快活さを発揮します。まるで4歳の時に木刀をねだったときのようです。ええ、年相応な姿は微笑ましいです。

 ですが、私は庶民です。城下で暮らすほかの子供を見たことはあります。

(お嬢様、やりすぎですわ。」

 だからこそ思う。ミサ様のストイックさは常人のそれを軽く凌駕します。ソルベ領はそういった人も多いのでちょっと麻痺していましたが、うん、これは異常です。

「あと、30周。」

 ですが、嬉しそうにラグ君の手を引くお嬢様を見ると、私には何も言えません。実際、絶妙に加減されたトレーニングメニューは旦那様たちも感心していました。これぞソルベの姫、武に関しては天性のものなんでしょう。ラグ君はおそらく強くなるでしょ。親御さんが親御さんですし、才能もあるのでしょう。

 ただ、できることと、やりたいことは違うと思う。構い倒される猫さんや犬のように悲壮感が漂うラグ君に私はそっと合掌しました。

「ラグ君、強く生きてください。」



 

 5歳ぐらいって、女の子の方が体力がありることがありますよね。そして、ラグ君に対するミサの感情は、親愛であり、ペットに対するものに近いのかもしれない。

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