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クッキング☆えんじょい   作者: 霜三矢 夜新
得意分野で勝負編
65/204

第11試合目 6

 番参審査委員長に応援されているかのように感じた想はこれからも試す事を大切にしようと心に誓った。


『敗因』についてはどうもこれ以上のお話はないという事で良いのかなと思った司会者がそれではと勝った理由を清に尋ねる。

「メインのおかずだけの考えならばむしろ想君の方に分があったと思う。だけど汁物やサブおかずを総合し――」

 話の途中で審査結果を伝え損なってしまった。清がミスをしてしまったのは咳払いで喉の調子を確かめているので多分そのせい。一度咳払いした清がバツの悪い思いをしたっぽい、だけど彼は気を取り直して出来る限り冷静に審査を再開する。

「悪かったね。話し中に判定を中断してしまって。改めてメインのおかずのみなら想君の作った品が上かもしれない。だけど他のおかずなどを審査に総合したら込流君となった訳だ」

 もう少し伝える事があったと思い出した清が審査員席に戻る前に話を続けた。


「……サブのおかずに旬の食材をさりげなく使っていた点。もう一つは汁物の野菜に注目したんだ」

 野菜へのこだわりが人一倍ある込流がそれに気付いてもらった事が喜ぶポイントだったようで、饒舌じょうぜつになる。

「そこを押さえてくれて嬉しいのう。その野菜が何か答えて欲しいタイ」

 質問の回答を求められた清が応じた。

「メークインは良いとして、海外のじゃがいも『シンシア』を使っていそうかな。長ネギはポロネギに感じたけど」

 こだわった素材の銘柄まで当てる料理審査委員達はさすがである。気持ちが高ぶって来た込流が野菜のうんちくを語りたくなってしまったのか話をやめない。

「そうなんじゃ。おいどんは他にもフランス生まれのじゃがいもが北海道十勝地方の土に馴染んだ『十勝コガネ』も使用して。他にも食べやすい大きさにする事で食べごたえを意識したタイ」

 興奮してしまっているせいか、使わないよう気をつけているはずの方言が出てしまっている。更に何かを話したがっている込流を制して審査員の清がまとめに入った。

「番組の時間の都合とかもあるし、込流君の野菜についての知識は別の機会で聞こう。煮崩れしづらい品種で作ったからか、食べたという満足感を覚えたよ」


 以前の試合でも食材やさいを持ち込んで自分の料理をグレードアップさせた事のある込流。それが審査に良い作用、勝敗を分けた事実にこだわりは続けるべきだと再認識する。

「野菜にはその料理に合った品種、それに調理方法があるもんタイ。今回の料理だけでなく、可能な限り『一汁二菜』を続けたいからのう」

 料理は作り続けていれば、メインのおかずに合う汁物とサブおかずがおのずと思いつくものである。込流も想もそれに沿って自分で納得する組み合わせの献立が出来た。それも評価が上がった要因だと考えられる。


「お互い今回のテーマを素晴らしい料理を作り、魅せてくれたと思いました。この題材は二度目ですが、豆腐はまだまだ味付けに工夫の余地がありそうですし、いろんな食品との相性が隠れていそうですよね。これからも目新しいレシピを期待しましょう」

 司会のみことも様々な料理を食べてきているだろう。それをいったら審査員の彼らはもっと料理レシピを知っているはず。何にせよ、プロ達を満足させるまで料理の腕を磨き続けなければと番組に出演している料理の好きな素人料理人全員が思う。


 審査員達の勝因敗因を記憶に刻み込んだ料理人。流れで食事のシーンになるのであった。


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