第11試合目 5
審査委員長が味わった感想をつぶやく。今度は君達の番だという視線をもらった清と高美が目の前の料理を味わい出した。
「豆腐ともやし両方とも味をつける前提の食材だしね。それに合う調味料やタレを探すのも面白そう」
「スープは野菜スープみたいね。食べてみるとこのおかずとの相性が良いと思えるわ」
込流としても、今回のテーマに沿って材料を大雑把に切って万能調味料で味付け。それだけなのにというちょっとした驚きを審査員達に与えたかった。味わってもらった後の感想から考えれば目論見通りと言えそうだ。
2人の料理を審査可能な分のみ用意してもらった審査員達(最終的には出演予定者全員で今回対決した2人の料理を食す流れだから)が彼ら同士の話し合いで意見をまとめた上、
自分の席に戻って審査ボタンを押す準備を整える。
「これで審査員の皆様も得点発表出来るでしょう。それでは料理の採点をお願いします」
審査員達が味と独創性について2つの数字を入力する。2人分なので2回に分けて合計4つの数字を説明画面に沿って入力していった。順番に入力する機械なのであまり間違えない
はずである。ミスを手動修正する機能もあるので見直せば問題ないはずだ。
「ただ今集計中です。しかし、すぐに合計が出るでしょう。ここを見ていて下さいね」
司会者の命が電光掲示板を大きな身振り手振りを用いて指差した。
きゅうりの簡単白あえ(想 54点)
清 味総合 9 独創性 9
番参 味総合 8 独創性 10
高美 味総合 9 独創性 9
26 + 28
豆腐ともやしのスピードたれ炒め (込流 55点)
清 味総合 10 独創性 9
番参 味総合 9 独創性 9
高美 味総合 9 独創性 9
28 + 27
前試合の真奈と香理の料理レベルは相当なものと出演者の全員が感じていたのにあの結果。それを糧にしたからこそ今回の2人はこれだけの評価を受けたのであろう。活用するものは活用し、あまり見かけない料理を考えたりして新鮮な気分を審査員達に覚えさせる。このメインおかずだけでなく、汁物や副菜のバランスなどを工夫。それで料理全体の底上げが出来ていそうだった。
「始めて良いかな? 今回は想君の敗因についてからという事になるみたいじゃのう。差はないも同然なんじゃが、やはり冷凍あさりのむき身では味が落ちてしまうのが要因じゃ。お酒としょう油をなじませてという発想が光っていたが」
なかなかの高得点ではある。ただ残念ながら工夫しても思い通りに行かなかったんだなと想は悔しさを覚えていた。
「楽に作れるという点を重視してみたんですけどね。あさりなどの貝類は殻付きの方が味落ちしないとわかってはいたけど、冷凍のあさりのむき身を活用したかった。それが負けた理由になってしまいました」
いろいろと意識していて審査の甲斐があったというものだと番参が想を励ます。
「作って味を採点してもらわなければ解凍した冷凍あさりのむき身の使いどころも分からなかった訳だし、チャレンジ精神に拍手を送ろう」




