第11試合目 4.
「それだけじゃないんです。番組で用意している汁物に別鍋で手を加えようと考えているんですよ」
冷凍のあさりのむき身を使うつもりのようでバットを用意する想。冷凍のあさりのむき身は扱いが難しいが活用しようと思っているようだった。お酒としょう油を入れたバットにむき身を入れてなじませていく(ちなみにむき身を流水解凍で解凍済みである)
「あさりの味噌汁が今回の一品に合うと思ったんですね。見ている私としては魚介の香りで口の中によだれがたまってきちゃいそうですよ」
一方、大きめの小皿に更に一品ということで『豚肉とキノコのたれ炒め』を作るつもりの込流。彼が命を呼んだ。
「司会者さん、制限時間終わりそうなんですが、わしの作った追加の一品について教えようと思うんだがのう」
作り方を短い言葉で伝えてくれるみたいだということで命が込流にマイクを向ける。
「キノコの下部分は切るのが基本タイ。豚こまを炒めて赤さが少なくなった所で手でキノコを分けて強火で一気に! 味付けは焼肉のタレと白すりごまが良いと思うタイ」
2人ともメインの品以外にある物で工夫したり、簡単なもう一品を作ったりして制限時間をほぼ使い切る。わずかに余った時間で盛り付けの見栄えを意識したりしていた。
「余裕を持ってやりたい事が出来たように見受けられました。審査員の皆さんの元へ持っていくのはどちらが早いでしょう」
今回作った料理には番組が用意したどっちの汁物(味噌汁かスープ)がいいだろうと込流が考えている間に、想が番組スタッフ達と一緒に運んでいった。想がたまたま高美の席に汁物をこぼさないよう置く。他の審査員の方達には番組スタッフが。込流は込流で保温性の優れた審査待ち料理テーブルに置いて待ちの構えだ。
「今回も今回で美味しそうじゃな。どれ、食べてみなくては始まらないからの」
きゅうりと豆腐メイン、それだけの料理。味付けもシンプルなこれは軽そうな食感で楽しみだと番参審査委員長は期待していた。
「豆腐の滑らかさときゅうりの塩気がマッチしておるのう。これにあさりの味噌汁とは考えたものだ」
清と高美が後に続く。
「テーマに沿っているこのおかず、テーマを活かしていると感じさせることに注目」
「最終審査で言うことが減っちゃうので短く。このおかずは汁物が欲しくなるから汁物に工夫って的を得ているわ」
まずは料理に手をつける程度での採点からというのは大体いつもの流れである。しかし、この段階で辛口評価なんて聞いた覚えはないとはいえ想はドキドキしていた。
想の料理をある程度食したので、今度は番組スタッフ達の手で込流の作った品の番になる。ご飯と温かい野菜スープ、それとメインの審査豆腐のおかず。それを全部お盆に乗せてあるので番参審査委員長から味わう。
「なるほどな。値段としても安い食材同士の組み合わせに香味野菜か。それがタレと絡んでおる。良い味だ」




