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クッキング☆えんじょい   作者: 霜三矢 夜新
得意分野で勝負編
60/204

第11試合目 1

 奏達の通学している『調料学園』この時期10月は文化祭の準備や料理専門試験などで慌ただしい。北海道は本州と違ってもう寒気かんきが入ってくることがあるので冬服に衣替えしたとはいえ、防寒対策をしないといけない。風邪をひかないように気をつけるのも忘れないようにしていた。想と香理も運動会のある季節らしく、練習しないといけない時期。学生にとって一番の本分は勉強だが学校イベントに力を入れている学校も多いのではないかと思われる。


 学校イベントがあろうとなかろうと番組収録日はやって来る。テスト期間中は部活休止なので奏達は部長と副部長の2人に会うのは久しぶりだ。

「この時期は毎年力を入れやすい文化祭の準備と料理試験が近づいてきているからてんやわんやでしょ? 休める時は休まないともたないわよ」

 奏達は真奈部長からの忠告にお礼を述べた。

「どうもありがとうございます。疲れますけどやりたい事をやらせてもらえているという充足感もありますね」

「お気遣いありがたかったです。家での娯楽と上手く付き合わないといけないですね」

  いつも通りケーブルテレビ局へ向かう道のりで電車に乗っている際、今度は風良副部長が口を開いた。

「前の試合で全体的な審査基準が上がっているように感じなかったかい? そこら辺も含めて君達の意見も聞きたくてね」

 言葉に重みが感じられて奏達は神妙な気分を味わう。

「言う通りですね。でも僕は作りたいものを全力で作るだけです」

「私の料理の美味しさが進化を遂げていたとしたら真奈先輩のおかげですから。その先輩が経験した厳しい評価は私達全員に審査委員長の期待がかかっていると心しています」

 これから先、60点中55点以上など一筋縄ではいかないかもしれない。その方がやる気の高まりに良いだろうというふうに考えを改めて調料学園料理研究部メンバー達は審査員達を見返すという目標に向かって心を一つにした。


 最近ケーブルテレビ局がシステムを変えたので、受付に行った真奈部長が番組出演者用パスをまとめて見せる。建物内に入ってしまえばいくら複雑な構造をしていると噂されているテレビ局内とはいえ、いつものスタジオまでの道に進むのには支障はない。

「おはようございます」

 この挨拶は一人のものではない、まだ声変わりをしていない男の子女の子や同年代の出演者達のものでもある。その彼彼女らも前の料理評価点に思う所ところがあるのか誰の顔つきも違って見える。

「皆さん、おはようございます」

 番組収録まではまだ余裕があった。なのでそれまでは出演予定者全員で集まってこの食材にはこんな食べ方があるとか地方料理の可能性についてなど情報交換しあっている。有意義な時間も束の間、どうやら収録準備が整ったようである。


「え~……皆さんおはようございます。そろそろ始めたいと思うので準備をして下さい」

 司会者の四界(みこと)の一言でみんな本番モードに入る。審査員の3人も、すぐ審査員席まで歩いて向かい始めていた。審査員の審査が厳しくなってきたようなと誰もが感じ取っているせいか、出演者達の目には審査員達の表情が厳しくなっているような気がするように思える。その中で番参審査委員長が全員をちらっと一瞥いちべつするとスタジオ内全体に緊張感が走った。



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