第10試合目 4.
その審査前に香理が使ったキャベツの余りを持ったりして手持ち無沙汰な様子を行動で表しているのをたまたま見かけた込流が野菜の状態に気づく。
「む!? 芯の方が黒ずんできていたような。見間違いじゃなければ番組制作者と審査員達の策略かもしれんタイ」
後でわかる事だが、込流の予想は的を得ていた。
温かい状態で出された香理の料理、それを手元に引き寄せて番参が食べ始める。
「加工肉の中ではハムが一番楽で使いやすい気がするといったところか。これはキャベツと一緒で正解かもしれん」
審査委員長が味見をして、味の感想が終わるまでのタイミングが何となくわかり始めた清と高美。2人も手を付けてみた。
「このタレの濃厚さが良い。これだけでキャベツをかじりたくもなるよ」
「清さんも言っていた通り、このタレがハムとキャベツの味を支配してというか?」
香理は香理で自由な発想で楽々とっていう考えがにじみ出てきているレンジを使った料理がだいぶ好印象を与えていそうだ。だからこそ彼女が安心したようにスマイルになってしまうのも何ら不思議はない。
両者の料理をまず審査に必要なだけ食べた審査員達。今の時点で勝者と敗者に伝える事を考えている番参審査委員長と、思ったままを話すつもりの清に純粋に味と発想から自分の得点を発表するつもりな高美によって審査が始まる。
「それではご注目。審査員方はすでに入力し終えました、こちら側をご覧ください」
司会者の命が電光掲示板に観客達の視線を集中させた。
もやしのレンジサラダ (真奈 50点)
清 味総合 9 独創性 8
番参 味総合 8 独創性 7
高美 味総合 9 独創性 9
26 + 24
ハムとキャベツの重ね蒸し (香理 47点)
清 味総合 7 独創性 9
番参 味総合 6 独創性 8
高美 味総合 8 独創性 9
21 + 26
得意な料理、この野菜や肉を使うのは自信がある――代わりにわずかずつでも独創性が減りつつあると自覚中の真奈と、今でもこんな食べ方があるんだよという面白いレシピを考えつきやすい香理との対戦。総合点が今までの評価より下がってしまっているその原因はこれからわかるのでお待ちいただこう。
「では敗因から先に失礼しようか。特に味の評価が厳しめになったのだが何故だかわかるかのう?」
理由がわからない香理の瞳から悔しさで涙目になっているのがわかる。先に香理が手に持っていたキャベツの状態の悪さに真奈が気づいた。
「もしかしてこのキャベツ……。傷んできてますか? 今までは番組側が新鮮な野菜と肉や魚を用意していたから」
番参審査委員長が返事代わりに相槌を打つ。
「油断を狙った訳だが、見事に引っかかってしまったのだろうな」




