第10試合の前に――みんなで作ろう 9 ※
「衣だけでも食べる感触が楽しめる~。あっさりした味の魚がこの衣の影響か旨みが凝縮されているかのようで」
麦茶を飲んだ想だけでなく、奏と真奈もちゃんとせんべいを活かしつつ魚の旨みが楽しめる一品に感嘆したのだった。
一方こちらは清がささっと作ろうとしている絵本に出てきそうなホットケーキを作っている料理台である。
フライパンいっぱいのホットケーキ生地に、全体的に火が通ったタイミングを見極めて清がひっくり返すと焼き色がちょうど良い感じである。彼が大皿を用意してタイミングを体が覚えているまま大皿にのせると最高に美味しそうに出来上がったのであった。
「うん。予定通りうまく形も崩さずに作れたかな」
作り終えた頃に有音がやってきて軽くおじぎをする。大きなホットケーキをケーキナイフで六等分して食べてみたいなと寄ってきた香理と風良を手招きして呼んだ。
「ぜひ食べてみてください。味自体は普段のホットケーキと変わらないと思いますけどね」
絵本の童話などでこんな大きいのを食べれるとか羨ましいと思ったのがこのような巨大ホットケーキ、バターやはちみつにブルーベリージャムなどが好みで使用出来るよう用意されている。
「わ~っ、私にとっては食べられるかなー? という大きさだ。でもいざとなると食べるなんてもったいないなんて考えも出ちゃうもんだなあ」
香理なんかはそれを前にして、何年か前に夢見ていた光景だからか幼さの残る無邪気な笑みで自然と嬉しさを表情いっぱいに表している。
「おっ、こいつはいい。食べた時の腹持ちというか満腹感を味わえるところが特にな」
一口食べては食べている感に少し体を震わせたりつい『く~っ』とか満足しているのを声に出したりしていた。そんな2人の飾らない評価に清が有音に向かって目配せして親指を立てる。彼女も大きな大きなホットケーキをほおばって、美味しい事を知らせるよう笑顔で親指を立て返した。
また別の位置にいる(丸テーブルの右側にいるのが有音達で中央付近にいるのが奏達。つまりは空いている左側に高美達がいることになる)彼女達が奏と想で作ったスパゲティを気にして味見しに来たのである。
「粉末ミルクパウダーとうめえ棒を細かく砕いたソースがどれだけなめらかになっているのか気になっちゃって」
消毒用ウエットティッシュで手を拭いた高美がソースを指につけてひとなめした。
「意外と粉っぽさもなくて上々の味かも」
今回の話では仕事量が減っていた命も食事前にすべき事を終わらせ、何の気兼ねなくスパゲティをすすっていく。
「同じようなパスタソースばかりで食べているからマンネリ化してきた。そんな方には一度でもお試しをと宣伝したくなっちゃいます」
司会者の命はそれだけでなく、高美の作った『ポテチとキノコのお皿』も手元に持ってこれるようすぐそばの机の上に置いている。




