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クッキング☆えんじょい   作者: 霜三矢 夜新
クッキング開始編
45/204

第10試合の前に―― みんなで作ろう 1

 今となっては少し昔扱いな有音変貌事件。ただ、料理研究部の彼女はそういう状況を経験してどうにか出来たというのは大きな自信になったと思われる。料理を作り続けるのに大切な心構えをもしかしたらずっと奏達部活メンバーは持ち続けることが出来そうと考えられるくらいに。今回の試合収録日は9月中旬の3連休のうちの1日、台風の影響で雨が降った後だからか少し気温が変動しているが快適な風が吹いている日の集合となる。


 余裕を持って『料理研究部』の全員で集まり、ケーブルテレビ局そばのファーストフード店で喉を潤している。そこで有音が全員の目を見て番組内冒頭で謝罪したいのだけどと相談を

持ちかけた。

「奏、先輩達。しつこいのはわかっています。だけどこれは私の気持ちの問題なので」

 多分言いたい事は想像出来ている3人だが、真奈が代表して続きを促す。

「前の試合で原因があって生意気な性格みたいになってしまった。それについてなのかしら」

 真奈が微妙にわかりづらくしてごまかした言い方をするが有音にお気遣い無用と言われる。彼女たちの会話を終わりまで聞いてから奏が意見を述べた。

「謝罪する事で気持ちの整理がつきそうなんだったら僕は支持するよ」

 部長の真奈も奏の意見に賛成なのか相槌を打っていた。副部長の風良も反対ではなさそうで中立の言葉を送る。

「そう決めたのなら思った事を実践するのありだと思うよ。果たしてそれを視聴者さんとかが望んでいるのかっていうのがあるけどね」


 持ってきたガラケーで時間を確認した奏がそろそろケーブルテレビ局に行くのにちょうど良い時間じゃないかと食べ終わった際のゴミを片付け始めた。ファーストフード店からケーブルテレビ局受付で許可証をもらって局内に入り、番組スタジオに4人で向かっている頃に後ろから高美がやってきて挨拶される。

「あら、こんにちは。あなた達はいつも多少の余裕を持って到着するわね。良い心がけだわ」

 奏に真奈、風良は無難に返事代わりに会釈するが有音は気まずそうだ。彼女に無遠慮な言葉をぶつけた事があるという事実、それが尾を引いていた。


「えっと……あのっ」

「どうかしたの? 包味さん」

 そう訊かれてしまってはごまかすのはやめようと思っている以上、彼女は改めて謝罪するしかない。

「大変失礼な思…………!?」

 謝罪の言葉が口に出来なかったのは高美に手を眼前まで寄せられたからだ。いわゆるちょっと待ったという感じのポーズ。驚いて一時的に言葉を失ってしまった。

「そんな口先だけなんてウザいし迷惑でしかないのよね。あっ、ごめんなさい。口にする事じゃなかったわ。でも良いわよね? 私も前に言い負かされたし。これでおあいこ」

 彼女に言われてしまった台詞にも一理ある。前のお返しをされたと思えば腹も立たない。

「大丈夫か有音? いくら何でも高美さんひどくなかったか……」

「私はそう思わないよ奏。理由はどうあれ前に挑発しちゃったんだから」


       ◇                     ◇


 いつもの『COOKING☆えんじょい』の収録スタジオ。少し早めに調料学園研究部の4名が到着する。審査員達が番組スタッフと打ちあわせをしているのは別の場所のようでまだ来ていない。想と香理が先にそこ《収録スタジオ》にいて料理の柔軟な発想を言いあっていた。


 

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