第6試合 有音VS込流 3
有音の料理、味見が終わって審査員達が採点の準備を開始する。その前にこの後は込流の料理審査だった。番組スタッフが審査待ち料理テーブルから審査員達の座席まで料理を運んでいく。
「ではこちらもいただきます。合いびき肉の味、じゃがいもの味ともにケンカせずに食べ終わってもまた口に入れたくなるのう」
それから清と高美の評価――
「腹持ちしそうなこのじゃがいもくらいの大きさの方がダシの味と合いびき肉の調和を楽しめるかもね」
「今回の対決の趣旨な肉じゃがに近い料理を意識したんでしょうけど玉ねぎも効いていたわ」
まずは食べた感想が伝えられる。それだと対戦者達が望まない結果が出る可能性はあった。だがしかし、電光掲示板で発表された評価に審査員達が勝因と敗因を伝えてくれているので理解や納得しやすいのではないだろうか。
豚肉とじゃがいもの炒め煮 (有音 54点)
清 味総合 10 独創性 9
高美 味総合 9 独創性 8
番参 味総合 10 独創性 8
29 + 25
そぼろ肉じゃが (込流 54点)
清 味総合 8 独創性 10
高美 味総合 9 独創性 10
番参 味総合 8 独創性 9
25 + 29
今回はこの番組が開始して始めての事が起こった。こういう得点評価の出し方なのでいつでも可能性はあった事。とはいえ、『引き分け』判定に観客一同騒然となった。
「こうした場合は審査委員長の私が最終決断させてもらうことになるとご承知おき願います。納得ゆく解答をするのを前提に……な」
一度アゴに手を置いて、利き手側の髭を整えた番参理事長が口を開いた。どうやら思案の末勝者を決定したようだ。
「勝者はっ! 豚肉とじゃがいもの炒め煮を作った包味有音君である」
「なっ……!!」
自分の作った料理にこの料理大会で重要な独創性を意識した事から勝利するだろうと予測していた込流が文句の一つでも言いたそうだ。だが、それを番参審査委員長が遮った。
「言ったはずだよ? 納得の解答を話すつもりだと。ではどういう考えでこの評価結果が出たか告げようではないか」
番参審査委員長が一度咳払いをして――
「今回の題材の趣旨として肉じゃがに近いというのがあったであろう? 有音君の料理はしらたきと肉を牛肉にする、ほんの少しの違い、また少し味付けの変化でこの家庭的な味も総合して肉じゃがと言ってしまっても否定しづらいくらいの出来栄えな料理であった」
そう言われては込流も言葉が出なかった。見た目を最終基準に重要視されたのなら認めるしかない。
込流がこれから努力する、今後の糧にしてくれる、それを期待した高美が声をかけた。
「間違いなく運も左右したわね。でもこれで独創性の重要さだけでなく、見た目も評価しようとしているのは伝わったわよね?」
悔しさを胸に秘めた込流に有音が近づいて話しかける。
「こんな結果になるなんて思いませんでしたね。私、これだけ評価されていいんでしょうか?」
「もちろんさ、包味君。審査員の方達はプロだからのう。実力以上かもしれない力を出せばそれに準じた結果が出る、そういうもんじゃろ」
どこか腑に落ちた表情の込流がキッチンスタジオを後にした。
文字数などの関係のため、見直して前話の一部をこちらへ
紛らわしいと思った方、申し訳ありませんでした。




