第6試合 有音VS込流 1
前回の収録で番組プロデューサーに聞いた通り、8月の1週目に全員の都合がついたので番組収録に集められる。これで5回以上放映された事になる『楽しく料理(仮タイトル)』実際8人ともに料理への情熱が高まったり、いろんな料理の知識を収集実践するという副産物があったようだ。
この日は夏らしく暑い日だが、この番組収録スタジオの空調は26度前後といったところだろうか。料理をする者にやりやすさも配慮されているのは全員が好印象を持った。
「この料理番組、視聴者の皆さんのおかげで前回放送から約10日後に放送決定と宣伝されていた通り無事開始できました。今は児童生徒さん達が夏休みの時期ですね、料理に挑戦してみて欲しいです」
司会の合間にさりげなく命が奏達くらいの年代の子ども達に料理をすすめていた。
その後で番組収録のために対戦相手を決定していいか、命が司会者らしく(?)奏達8人全員の待機している様子から開始してもよさそうだと自己完結する。
「では番組を開始しても問題なさそうなので始めます。今回の対戦するお2人が誰になるか気になるところですね」
電光掲示板を使用するのはいつもの事だ。スタートストップボタンを押してメインの2人が決定される。それによると有音と込流が選ばれて、肉じゃがに近い料理というアレンジ能力の試されるお題が発表された。
「なかなかに苦労しそうな思っているのでは? だが審査員の立場からすると楽しみなんだよ、期待する」
番参審査委員長にプレッシャーをかける意図はなかったと思われる。だが当然、特に今回勝負する2人の緊張が高まったのは言うまでもない。審査員達が席で準備を始め、有音と込流以外が最前列の応援席で勝負者から何かを感じ取ろうとしている。奏は運良く勝利したけど、風良副部長に勝った込流。
有音は私で勝負になるかという不安を大きく持ってしまっている。でも実力差を過大に考えすぎてしまっているのかもと有音はキッチンスタジオで思案していた。
「有音ちゃん、自分なりのベストをつくして」
真奈先輩の後押しによって覚悟を決めた有音は覚悟を決めた顔つきへと変化させていった。それをどこか関心した込流が有音に対して何かを期待しているかのような素振りを見せる。
「まだ料理技術が発展途上で成長著しい君との勝負で何かが起きる気がするタイ」
「そこまで買ってもらえて嬉しく思います。今の私が出せる力を尽くしますから」
ここでどうやら試合開始時間になったようだ。
「試合を開始していただきましょう」
有音が大きなじゃがいもを持って見ている横で、込流が数個程持っていった。当たり前か、じゃがいもは今回の料理の要だからと有音が思う。
「切り方はこう」
有音がじゃがいもを1口大に切って水にさらすと、込流も同じく皮をむいて食中毒の原因となり得る芽をけずり取って4つ割りにしている。しょうがもみじん切りにしていた。じゃがいもの切り方が有音と違ったのでどんな理由なのかと興味を持った。
「これも忘れていられない」
にんじんと玉ねぎを半分くらいずつ、にんじんは乱切りで玉ねぎをくし形に切り終えた。残り半分も材料多めになるだけだから使ってしまおうかなと有音が考えている時、込流が声をかけてくる。
「包味さん、その玉ねぎをもらおうか。構わんかのう?」
込流に余りになった野菜の一部を使わせて欲しいと頼まれた有音。特に断る理由がないので渡す。




