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親愛なる我が黎明へ 其の二十

「───確かにシャンフロは所詮ゲームですよ? でもね、まだ見ぬ新しい生き物を見つける「感動」を味わうツールって意味じゃ現実を超えてると思うんですよ」


「ふむ、確かに」


「ツチノコさんもそう思いますよね! いやね、今回のユニークモンスターが人型って聞いた時は不貞寝しようか思ったんですけど、蛇型モンスターを操るって話とあの見たことない金色の蛇……素材見ましたか? 灼喰の大皇蛇(ネメストロン・コブラ)、間違いなく新種ですよ」


「へぇ、確かに見たことはなかったけども」


「基本的にシャンフロの蛇型モンスターは「◯◯の大蛇」が基本形なんですけどネメストロンは「大皇蛇」……いや待て、確か「大"王"蛇」ってのがいたはず…………まさか近縁種? これは大発見なんじゃないか!? ツチノコさんもそう思いませんか!?」


「ほう、一理ある」


「なんですそのテンション?」


「ははは……」


これぞ武田氏秘伝「ハ行返答語録」。

公の場ではなく、そこまで仲良くはないが、しかし心象を悪くしたくない相手にはハ行を使えば当面を凌ぐ分に不足なしでござる、とのことだ。

じゃあ「ひ」は何なんです? と聞いたら「それは自分で見つけるでござるよ」と返された。

多分思いつかなかったんだろう、というかそもそもこれ「サ行(・・)」のパクリなんじゃ……と若干疑いつつひとまず俺は「ひ、ひぇ〜っ!」とした。今回は使わなかったが。


先程の金グコブラはSF-Zooをして未観測の新種であるらしく、ヴェットの口の回りがどんどん加速している。

何故それを俺に向けて話すのか、何故Animaliaや他のクランメンバーに話さないのか………………………今一瞬、「幻の蛇(ツチノコさん)」と呼ばれる相手だから話しかけに来ているのでは? という恐ろしい推測が脳裏を高速で走り抜けていったが見なかったことにした。

とはいえ、このヴェットというプレイヤーに蛇モンスターに対する知見には目を見張るものがあるのもまた事実。

………なんかこの流れ、エタゼロでもやったしカローシスUQでもやった気がする。シャンフロの上位層、そんなのばっかだぜ。


SF-Zoo、シャンフロにおいて自他共に認める対生物モンスターに対する深すぎる知見はあまりにも今の状況で重宝できる。

たとえ、彼らが合流及び同行することで先程まで馬の速度と、それと並べる速度で進んでいたのが人の歩みまで遅くなったとしてもだ。


じわり、と焦りの感情が心の中に湧いてくるのが自覚できる。

だが先行した奴らだって別に初心者ってわけじゃない。仲間を信じる、か………………いや普通にあっさり死んでそうなやつが何人かいるんだよな。その点に関しては信用ならねぇのが信用できる、というか。

いや、死ぬこと(・・・・)自体は問題ないんだがな。


「うーん…………」


こういう集団を率いる思考はあまり得意ではない。特に俺というユニットを単騎で動かせるという前提があるがゆえに、思考も自然そちらに寄っていくわけで。


だがらこういう時にそれ(・・)をされると非常に助かるのだ。


「前方! 人間型エネミー!」


見つけ次第殺せサーチエーンデストローイ!」


SF-Zooのメンバーが上げた声に、即座に俺が最先鋒となって突撃。

やっぱ何も考えずに目の前の敵をぶん殴るのが一番気楽でいいね! 正面から現れるものは正面から蹴り飛ばされる覚悟をしなければならない、お前はそれができていたかな毒乙女!!

「目無し」の表皮は触れても大丈夫なのはもう分かっている。強いは強いが、特定のパラメータがバグってるだけの対人戦のようなもの。

何が楽しいのか知らないが、どいつもこいつもへらへら笑いながら現れる毒乙女共。その顔を思いっきり蹴り飛ばして吹き飛ばすのは若干犯罪感もあるが、小気味の良さがあるのも事実。


「……あれ、ツチノコさんヴェットの隣にいなかった?」


「速すぎて見失う、ってガチの体験できることあるんだ……」


「冷静に考えて最大称号(レコードホルダー)二人いるクランって無茶苦茶だな……」


それは俺もたまに思う。

と、顔面を地面に擦り付けて吹っ飛んでいった毒乙女が立ち上がるさらにその背後に、大きくそして長いシルエットを確認した俺は先ほどSF-Zooのメンバーがそうしたように、声を上げる。


「蛇型モンスターがこっちに来───」


「フォーメーション鰻筌(ウナギウケ)!」


「「「応!!」」」


「…………」


一個人が最速で先制攻撃を仕掛けるよりも、一集団がノータイムでハメる(・・・)陣形を形成する方が難易度高いんじゃねーの?

スクショとデバフが乱舞する対蛇包囲網をなんとも言えない気持ちで眺めつつ、レイ氏が追いついたことで盤石の袋叩き陣形となったツーマンセルで毒乙女のタコ殴りを再開するのだった。



……


…………



「新種続きで助かるわ、ウチのメンバーのテンションも鰻登りだし」


その出会って嬉しい新種を「死にやすい」状態までデバフ漬けにして殴り倒した奴らが何か言っているが……あの数で倒したんじゃ、ロクなドロップアイテムもないだろうにSF-Zooの面々はホクホク顔で感想戦を続けていた。

だからなんでサブリーダーもリーダーも俺の方に話しかけてくるのか………いやでもさっきのSF-Zooの戦闘はかなり面白い戦い方だったな。


どのモンスターにも言えるがこの攻撃が効きやすい、この属性には耐性がある、みたいな相性差というものがある。

基本的に俺は自分にバフを盛って戦う自己強化タイプなので相手をデバフさせるタイプの戦い方というのがどういうものかいまいち理解していなかった。


そういう意味ではSF-Zooのデバフ特化の戦闘はかなり興味深かった。

そりゃあ、デバフメインの戦闘というものは極論「無い弱点を作る」に尽きるわけだが……戦術レベルの連携が出来るとデバフのリレー(・・・・・・・)なんて芸当ができるのか。

リュカオーン戦の時は………まぁなんていうか、戦っているシーンよりもボウリングのピンにされてた時の印象の方が強くてそっちしか覚えていないし。


「………少し、急いだ方がいいかもしれないわね」


「ん?」


SF-Zooの戦法を思い返していた俺だったが、ふと隣にいたAnimaliaが呟いた言葉に振り向く。

エンカウントした時にもつけていた兎耳を風に揺らしながらAnimaliaが見据えるのは正面、薄暗闇のさらにその先………


「反応は遠いけど……多い(・・)


「遠いが多い………可能性は二つか」


その兎耳のアクセサリーがどの程度の性能なのかは知らないが、人と「ゴルドゥニーネ」の混成()である「本隊」の反応を拾っているのか。

あるいは、毒乙女と大蛇による混成()が"多い"と形容できるほど来ているのか。

………両方って可能性もあるな?


「急げるか?」


「ええ。みんな! ちょっと駆け足!」


最悪の三つ目の可能性。

「本隊」が敵とカチ合っている乱戦(・・)のパターン!






ははは

ひ、ひぇ〜!

ふむ

へぇ

ほう

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― 新着の感想 ―
漫画のペースが少なくなったらなー…小説追加くるのになー…ということで我々読者は今のうちに他の小説に浮気します。「見たのか…私以外の小説を…」
そういえばゴルドニーネ倒したらワールドクエストって6ですよね? 以前にりっちゃんが ストーリー第六段階までに倒されなければ「黒」と「赤」、そして新大陸の「黒」「白」「緑」だ。 「特に白大壁がやべぇ…
除夜ゲロ2025を何卒…! [気になる点] ドロップアイテムって毒とかでドロップしなくなるのか? もしそうならサンラク的にはマイナスな気が(ビィラックへの貢物として)
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