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12月20日:花に導かれ一意専心

神の試練P殿堂入り記念

七つの最強種……ユニークモンスターの悉くに関わるサンラク。

自発のユニークに焦がれながらも、様々なコンテンツに手広く関わるオイカッツォ。


アーサー・ペンシルゴンというプレイヤーがあの日(・・・)から今日に至るまで。

ペンシルゴンこそが最も「専攻」していたと言っていい。


ユニークモンスター「墓守のウェザエモン」、そのEXシナリオに関連する特定キャラクターからの好感度を最大まで稼いだことで獲得したアイテム「遠き祈りの花飾り」。

膂力を上げるわけでもなければ、凄まじい魔法を使う触媒になるわけでもない。その花飾りは、ある人物(NPC)に関連するオブジェクトに対するナビゲーターとして機能する。

その人物とは「遠き日のセツナ」………ひいては、その大本たる天津気刹那(セツナ・アマツキ)。このゲームの世界観において神代最高の天才にして”魔法”の基本法則を確立した最重要キャラクターである。


本来の目的(・・・・・)からは外れた、ペンシルゴン本人からすると「期待外れ」な成果。

それこそが、王認勇士アルブレヒトと相対するペンシルゴンが装備する規格外簡易強化部位装甲【春嵐】。

規格外武装を生身で扱うための、腕のみで成立する戦術機とでも言うべき”防具”である。



墓守のウェザエモンを撃破したことで参加プレイヤー三名の共有報酬として与えられた規格外戦術機。それらは対応する規格外特殊強化装甲を纏うことを前提として運用される。

だがそれはあくまでも「戦術機」………朱雀、青龍、白虎、玄武を扱う場合の話だ。ペンシルゴンが着目したのは戦術機、特殊強化装甲と共にインベントリアの中に納められていた”規格外武装”の方であった。


規格外武装……正確には「強化装甲用武装」。それは特殊強化装甲の装備を前提条件に要求する武装である。

おおよそゲームカテゴリが変わる程の変化を齎す特殊強化装甲、ひいては戦術機ではあるが当然ながら全てにおいて生身を凌駕するわけではない。

その中でも特にデメリットと呼んで差し支えないものの中に「特殊強化装甲を装備している最中はスキル、魔法が使用できない」というものがある。


生身よりも遥かに優れた「身体」になれる代償、と考えれば安いものと考えるプレイヤーもいるだろう。そしてそれが間違っているわけではない。

だが、このシャングリラ・フロンティアにおいては生身の人間とは上限を見れば地を天より落とし、光の如く走り、龍の息吹を防ぎきることすら可能とする。そんな生身を捨てて戦術機を運用することが果たして全てにおいて生身を越えているのか。


となれば自然な流れで「折衷案」が欲しくなるのが人の欲望というもの。

特殊強化装甲を装備した状態ではスキル、魔法が使えない。ではそこからスタートしてどこまで譲歩できるのか。ペンシルゴンの答えは「武装だけ使えれば他は別にどうでもいい」であった。


遠き日のセツナが遺した花飾りの示す先。あるいは(・・・・)とそれらを調べていく中で見つかるのはセツナ・アマツキの情報ばかり。だがそれでもその情報が完全に役に立たないわけではない。

「規格外」戦術機はその独自性(ユニークさ)に目が行きがちであり、その独自の強さをして「規格外」と称されている………訳ではない。正規規格の量産型との互換性を持たず、そもそも動力源からして専用のリアクターを用いなければ動かす事すらできない。それ故の規格”外”。独自性に比例した運用難易度は本来であれば(・・・・・・)「眺める事しかできない」期間はもっと長い筈だった。


───戦術機との合体機能はいらない。それはもっとロボの操作に秀でた者に託せばよい。


───戦術機との情報共有もいらない。それはNPCとも完璧に動きを合わせられる者に任せればよい。


───顔を守る頭殻(ヘルム)など不要。髪が乱れる。


強化装甲のメリットを一つ一つ取り除き、本当に欲しいものだけを残す。リヴァイアサン内部に遺された「忘れられた区画」までの道を花飾りは示し、そうして彼女は見つけ出したのだ。


規格外の規格を定めた者がかつて勤めた場所。

その大半が物理(・・・・・・・)的に失われて(・・・・・・)こそいるが、しかしプロトタイプのデータは残されていたその場所。

「勇魚」曰く、かつて科学の最先端であった場所。天を(ひと)しく統べる究極の一を生み出す”前”の段階で使われていた初期の研究室。


「……【春嵐】起動」


所詮はリヴァイアサン内部での行動権を稼げば来訪可能な程度の場所。規格外戦術機の設計は出来ず、無論神代最強の甲冑など設計図すら描けない。されど、その源流にして始まりの一滴が落ちた場所。出来ることは確かにある。


「戦術限定(・・)駆動。腕部補強、及び特殊武装接続。」


量産品とは異なるオーダーメイドを1から作る。

その時にまず何を作るだろうか。正解は……


「プロト・エーテルリアクター発動!!」


仮初め(できそこない)心臓(リアクター)が鼓動を始め、人の身に余る先触れ(ハービンジャー)に息を吹き込む。


「王認勇士相手ともなれば、これくらいの下駄を履かなきゃやってられないからね」


「立ち塞がるならば……斬る!」


剣と魔法の物語における最強のNPCを相手に、神代の残滓を振り抜き女は嗤った。


「女連れで? 良いご身分だね」

・規格外簡易強化部位装甲【春嵐】

肘から先を覆う籠手のような機装の腕。

限界まで戦術機としての機能を削ぎ落して限りなく機装(デバイス)にまで近くなった戦術機。

手を使うスキル………要するに武器に作用するようなものや徒手空拳用のスキルが使えない代わりにそれ以外の例えば目や足に作用するスキルは使用が可能になっている。

超ダウングレードした規格外プロト・エーテルリアクターが内蔵されており、時間的制約こそあるものの「ほぼ生身で戦術武装を行使する」という無茶を実現した。

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― 新着の感想 ―
最後の台詞が最高に悪役しててスキ。
頭殻(ヘルム)を『不要』と断じた理由が「髪が乱れる」…鉛筆らしいなぁ〜
[良い点] アニメ2話目で次が待ちきれず漫画を読み、更に続きが気になりすぎてここに辿り着きようやく追いつきました。とても面白い!めっちゃ好き!! [気になる点] 瞬刻視界のような周りがスローモーション…
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