12月15日:困った時は神頼み
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対「焠がる大赤翅」突撃メンバー第一陣壊滅。その情報はサードレマに激震を………走らせたわけではなかった。
「ああ、やっぱり?」
「カッツォ君分かってたの?」
「まぁね。でも俺以外の焠がる大赤翅に挑んだことあるプレイヤー達も大体予想通りだったんじゃないかな」
レイドモンスター「焠がる大赤翅」は強襲と分類こそされているものの、新大陸でもわずかながら確認されているレイド戦が成立する前に戦闘可能なレイドモンスターである(正確にはだったと言うべきだが)
とあるプレイヤーがその知り合いに漏らした「死火口湖の底にいるレイドモンスターは条件は分からないが強力な炎で英傑武器の強化段階を上げてくれる」という情報は、これまで英傑武器を入手しつつも「大いなる火に晒す」などの条件を持ち、ドラゴンのブレスを浴びせようが何の変化もなかった詳細不明の英傑武器を抱えていたプレイヤー達にとってはまさしく福音であった。
ワールドストーリーの進行によって、火口湖の水が消し飛んだことで降下に多少の手間はあるものの潜水の必要がなくなり、焠がる大赤翅の元へたどり着く難易度が低くなったことも大きい。
だが意気揚々と焠がる大赤翅に挑んだプレイヤー達を待っていたのは、装備ごと肉体を貫くレーザーをぶちかまし当然のように範囲攻撃をばら撒きどれだけ水を浴びせても何の痛痒も見せない怪物であった。
だがそれでも、挑めるならば挑む。勝てずともその行動を分析する、それはゲーマーの性というもの。
「非活性状態の時の大赤翅とは何回か戦ったし、結構戦闘パターンも割れてたんだよね。本格的に戦闘状態になった時にどれくらい変化するのかが不確定要素だったけど………あの即死ビーム以外は殆ど変わってないっぽい。第一陣に混じってた人から連絡来た」
第一発見者から情報を聞き、そしてそれを広めたのは他でもないオイカッツォである。
当然焠がる大赤翅への挑戦回数で言えばプレイヤーの中でも上位であり、挑戦者達の間で共有された最前線の情報はレイドモンスター「焠がる大赤翅」の全容を何割か明らかにしていた。
「あの蝶、結論から言うと設置技なんだよね、破壊できるタイプの」
「は?」
「このレベルの話はペンシルゴンにはまだ早かったか……」
「そう言うセリフはお酒飲めるようになってから言おうねボク、続けて?」
「要するになんていうかな……生きたダメージ判定みたいな? それこそ火の玉お化けみたいな触れたらダメージを受ける攻撃判定の塊にHPが設定されてる感じというか」
焠がる大赤翅はその本質が何であれ、モンスターとしては「でかい熱の塊」である。ならば耐熱強化装備、アイテム、アクセサリー、魔法にスキルまでフル活用してどこまで耐えられるのかを試すのは何度でも死に何度でも蘇るプレイヤーにしかできないことだ。
その結果わかったことは、
「あの蝶、実体が無いっていうか……チョップするだけで本体に手が刺さるんだよね」
尤も、刺さった手は一瞬で溶解してそのまま攻撃したプレイヤーも内側から弾け飛んだのだが。
そんな凄惨な出来事を経てオイカッツォはレイドモンスター「焠がる大赤翅」の本質がなんなのか、ある程度の推測を立てていた。
「多分、普通に殴ってどうこうするモンスターじゃないと思うんだよね」
「………それ、レイドモンスターとしてどうなの?」
「それユニークモンスターの前で同じこと言える?」
オイカッツォの指摘に、ペンシルゴンはむ、と口を噤む。知っている限りでも
強制レベル50の状態で耐久戦を乗り越えて即死技のラッシュを正面から対処しきる事を要求する機巧の屍、様々な既存状態異常とも異なるステータス変化を乗り越える必要がある巨神の蛸、複数のマルチ推奨モンスターによる大混戦を切り抜けながら飛び抜けた性能を真正面から叩き伏せねばならない黄金の龍、とユニークモンスターは「ユニークってそういう意味?」と言いたくなるようなギミックを持った者ばかりだ。
だがしかし、
「ユニークモンスターはギミック系だとしてもレイドモンスターまで完全ギミックボスってのは無いんじゃない?」
「んー、多分だけどまだ挑める状態じゃないんじゃないかな、アレ」
要するに、何か条件を達成することで初めてマトモな戦闘になる。それがオイカッツォの出した結論だった。
「このまま殴りかかったって焚き火に自分から飛び込むようなもんだよ、だからあいつを弱体化させる何かをしてからが本番なんじゃないかな……」
大人数が定められた行動から外れないように規律ある行動で攻略することを「大縄跳び」と揶揄することもあるが、それ自体がゲームとして間違っているわけではない。一人では到底敵わないような敵と相対する際に一人だけ明後日の方向を向いて踊っていても仕様がないのだから、マルチ推奨ボスとの戦闘に際して「武器を振る以前に達成すべき条件」があることはなんらおかしくはないのだ。
そしてこのゲームはシャングリラ・フロンティア。自分のコピーを倒すために音楽プレーヤーの謎を解くようなゲームである、目の前の敵だけを見て視野を狭める事は攻略から遠のく第一歩だ。
「ちなみになにか妙案があるの?」
「神頼みかな」
ペンシルゴン知ってる? とオイカッツォはにぃ、と挑発的な笑みを浮かべながらレイドモンスター「焠がる大赤翅」攻略の為の必殺たり得る策を口にする。
「雨の日に焚き火は起こせないんだよ」
雨乞いて
恋は盲目
熱視線
ちなみに身長的には
ペンシルゴン>>オイカッツォ>>サンラ子




